1/3の本音
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数年後。
再会の場所は、駅の近くにある、お洒落なイタリアンレストランだった。
成人式を終えたばかりの若者たちが放つ、高揚感と少しの酒の匂い。
賑やかな同窓会の雰囲気が、会場の扉を開けた瞬間に私を包み込んだ。
「あ、●●ちゃん!こっちこっち!」
人だかりの向こうから、幹事の女の子が手招きしている。
「ごめんね、遅くなって。……道に迷っちゃって」
照れ隠しに笑いながら、私は懐かしい顔ぶれを見渡した。
みんな少しずつ大人びているけれど、笑い声や仕草はあの頃のままだ。
そんな光景にどこか安堵していると、不意に横から手が伸びてきた。
「はい、飲み物のメニュー。……取りあえず、何か飲むでしょ?」
「ありが……っ」
差し出されたメニュー表を受け取ろうとして、私は息を呑んだ。
思考が止まる。
そこには見違えるほど体が引き締まり、自信に満ちあふれた徹がいた。
整った顔立ち、大人びた雰囲気はあるけれど、私に向けられた屈託のない笑顔は、あの日見送った時のままだった。
「徹、久しぶり。……向こうでは、元気にやってる?」
意識すると、急に声が上ずりそうになる。
私は慌てて視線をメニューに落とし、何でもない風を装って尋ねた。
「うん。毎日、必死だよ。言葉も文化も違うし。……でも、すごくやり甲斐を感じてる」
それを皮切りに、徹はアルゼンチンの話、バレーの話、向こうでの苦労話を語り始めた。
楽しそうに、誇らしげに語る彼の声。
だけど、今の私の耳には、それ以上に自分の鼓動がうるさく響いていた。
隣に並ぶ、わずか数センチの距離。
かつてはこの距離を保つことに必死だった。
だけど、海を越えて離れ離れになったあの数年間が、私に教えてくれた。
失うことよりも恐ろしいのは、伝えないまま終わることなのだと。
「ねえ、徹」
話の途中で、私は彼の名前を呼んだ。
言葉を遮られた徹が、不思議そうにこちらを覗き込む。
「何、●●ちゃん?」
その真っ直ぐな瞳に、今度は目を逸らさず、私の視線をぶつけた。
「……あの頃、言えなかったことがあるの」
今度は逃げない。
もう、臆病な私じゃない。
「聞いてくれる?」
心の奥底にずっと仕舞い込んでいた“1/3の本音”を。
私はゆっくりと息を吸い込み、数年越しの想いを、その唇に乗せた。
ーーFinーー
再会の場所は、駅の近くにある、お洒落なイタリアンレストランだった。
成人式を終えたばかりの若者たちが放つ、高揚感と少しの酒の匂い。
賑やかな同窓会の雰囲気が、会場の扉を開けた瞬間に私を包み込んだ。
「あ、●●ちゃん!こっちこっち!」
人だかりの向こうから、幹事の女の子が手招きしている。
「ごめんね、遅くなって。……道に迷っちゃって」
照れ隠しに笑いながら、私は懐かしい顔ぶれを見渡した。
みんな少しずつ大人びているけれど、笑い声や仕草はあの頃のままだ。
そんな光景にどこか安堵していると、不意に横から手が伸びてきた。
「はい、飲み物のメニュー。……取りあえず、何か飲むでしょ?」
「ありが……っ」
差し出されたメニュー表を受け取ろうとして、私は息を呑んだ。
思考が止まる。
そこには見違えるほど体が引き締まり、自信に満ちあふれた徹がいた。
整った顔立ち、大人びた雰囲気はあるけれど、私に向けられた屈託のない笑顔は、あの日見送った時のままだった。
「徹、久しぶり。……向こうでは、元気にやってる?」
意識すると、急に声が上ずりそうになる。
私は慌てて視線をメニューに落とし、何でもない風を装って尋ねた。
「うん。毎日、必死だよ。言葉も文化も違うし。……でも、すごくやり甲斐を感じてる」
それを皮切りに、徹はアルゼンチンの話、バレーの話、向こうでの苦労話を語り始めた。
楽しそうに、誇らしげに語る彼の声。
だけど、今の私の耳には、それ以上に自分の鼓動がうるさく響いていた。
隣に並ぶ、わずか数センチの距離。
かつてはこの距離を保つことに必死だった。
だけど、海を越えて離れ離れになったあの数年間が、私に教えてくれた。
失うことよりも恐ろしいのは、伝えないまま終わることなのだと。
「ねえ、徹」
話の途中で、私は彼の名前を呼んだ。
言葉を遮られた徹が、不思議そうにこちらを覗き込む。
「何、●●ちゃん?」
その真っ直ぐな瞳に、今度は目を逸らさず、私の視線をぶつけた。
「……あの頃、言えなかったことがあるの」
今度は逃げない。
もう、臆病な私じゃない。
「聞いてくれる?」
心の奥底にずっと仕舞い込んでいた“1/3の本音”を。
私はゆっくりと息を吸い込み、数年越しの想いを、その唇に乗せた。
ーーFinーー
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