好きな人ほどいじめたい
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夕闇が迫る警察署のベンチ。
事情聴取を待つ間、隣に座る出久君が静かに口を開いた。
「●●ちゃん。……あの時、犯人の様子が急におかしくなったのって……」
隠し通すこともできたはず。
だけど、彼のあの真っ直ぐな告白を聞いた後では、もう自分を偽ることに耐えられなかった。
「……うん。私の個性」
「そうだったんだ!●●ちゃんにも個性が現れたんだね!よかった、本当によかった……!」
手放しで喜ぶその笑顔が、今の私には一番痛い。
「……もう現れてから、10年は経つよ」
「えっ……」
私は、自分の掌を見つめながら、全て吐き出すように語り始めた。
「私の個性、触れている相手をネガティブにするの。……覚えてる? 昔、私がアナタの手を握って、何度も何度も励ましていたこと」
「……うん、もちろん」
「あれ……元はと言えば、私が出久君をネガティブにさせていたの。私の個性で、アナタを追い込んでいただけなのよ」
出久君の顔から、表情が消える。
それでも、私は止まらなかった。
彼に嫌われたいのか。
それとも、全てを知った上で受け止めてほしいのか。
自分でも分からないまま、言葉が溢れ出す。
「それなのに……出久君はいつも“ありがとう”なんて笑って。本当におかしくって、バカみたいだと思ってた」
「本心……じゃなかったの?」
「本心だったよ。出久君の落ち込む姿が見たかった。心を折りたかった。私の言葉1つで一喜一憂している姿を見るのが、何よりの充足感だったから」
最低の告白。
だけど、彼は視線を逸らさず、じっと私の話を聞いている。
「……でも、他の女の子のことで落ち込んでる出久君は、見てて全然面白くなかった」
「それってつまり……好きな子を、いじめたくなるってこと?」
心臓が跳ねた。
“好き”
それが、私の歪んだ執着の正体だったというの?
「違う!嫌い!大嫌いよ……!」
叫んで、顔を覆った。
認めれば、自分のしてきたことの醜さに耐えられなくなる。
一層嫌われた方が、軽蔑された方が、どれだけ楽だっただろう。
「それでも、僕は●●ちゃんが好きだ」
顔を上げると、そこにいたのは、悲しむ顔でも、怒れる顔でもない。
全てを受け入れた、穏やかな瞳があった。
「こんな私を……まだ、好きだって言うの?バカじゃないの……」
「●●ちゃんに好きだって知ってもらえるなら、僕はバカでいい」
そう言って、出久君は私の肩をそっと抱きしめた。
伝わってくるのは、あの日の夕焼けの下と同じ、温かくて速い鼓動。
ネガティブの元凶である私の指先を、彼は大きな手で包み込む。
その体温があまりに心地よくて、私の目からは静かに涙が溢れた。
「……バカ……本当の、バカ……っ……ぅっ……」
泣きじゃくる私の背中を、彼は優しく、何度も撫で続けてくれた。
かつて私が彼にしたように。
だけど、そこにはもう、歪んだ感情は存在しなかった。
ーーFinーー
事情聴取を待つ間、隣に座る出久君が静かに口を開いた。
「●●ちゃん。……あの時、犯人の様子が急におかしくなったのって……」
隠し通すこともできたはず。
だけど、彼のあの真っ直ぐな告白を聞いた後では、もう自分を偽ることに耐えられなかった。
「……うん。私の個性」
「そうだったんだ!●●ちゃんにも個性が現れたんだね!よかった、本当によかった……!」
手放しで喜ぶその笑顔が、今の私には一番痛い。
「……もう現れてから、10年は経つよ」
「えっ……」
私は、自分の掌を見つめながら、全て吐き出すように語り始めた。
「私の個性、触れている相手をネガティブにするの。……覚えてる? 昔、私がアナタの手を握って、何度も何度も励ましていたこと」
「……うん、もちろん」
「あれ……元はと言えば、私が出久君をネガティブにさせていたの。私の個性で、アナタを追い込んでいただけなのよ」
出久君の顔から、表情が消える。
それでも、私は止まらなかった。
彼に嫌われたいのか。
それとも、全てを知った上で受け止めてほしいのか。
自分でも分からないまま、言葉が溢れ出す。
「それなのに……出久君はいつも“ありがとう”なんて笑って。本当におかしくって、バカみたいだと思ってた」
「本心……じゃなかったの?」
「本心だったよ。出久君の落ち込む姿が見たかった。心を折りたかった。私の言葉1つで一喜一憂している姿を見るのが、何よりの充足感だったから」
最低の告白。
だけど、彼は視線を逸らさず、じっと私の話を聞いている。
「……でも、他の女の子のことで落ち込んでる出久君は、見てて全然面白くなかった」
「それってつまり……好きな子を、いじめたくなるってこと?」
心臓が跳ねた。
“好き”
それが、私の歪んだ執着の正体だったというの?
「違う!嫌い!大嫌いよ……!」
叫んで、顔を覆った。
認めれば、自分のしてきたことの醜さに耐えられなくなる。
一層嫌われた方が、軽蔑された方が、どれだけ楽だっただろう。
「それでも、僕は●●ちゃんが好きだ」
顔を上げると、そこにいたのは、悲しむ顔でも、怒れる顔でもない。
全てを受け入れた、穏やかな瞳があった。
「こんな私を……まだ、好きだって言うの?バカじゃないの……」
「●●ちゃんに好きだって知ってもらえるなら、僕はバカでいい」
そう言って、出久君は私の肩をそっと抱きしめた。
伝わってくるのは、あの日の夕焼けの下と同じ、温かくて速い鼓動。
ネガティブの元凶である私の指先を、彼は大きな手で包み込む。
その体温があまりに心地よくて、私の目からは静かに涙が溢れた。
「……バカ……本当の、バカ……っ……ぅっ……」
泣きじゃくる私の背中を、彼は優しく、何度も撫で続けてくれた。
かつて私が彼にしたように。
だけど、そこにはもう、歪んだ感情は存在しなかった。
ーーFinーー
