お騒がせプチ事件簿
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「まだ、そんなに遠くへは行っていないはずなんだけど……」
猫が消えた茂みを凝視しながら、私たちは歩みを早める。
夕暮れ時の影が長く伸び、視界が少しずつ悪くなっていく中、出久君が急に大声を上げた。
「●●ちゃん、見て。これ!」
彼が指差した先には、湿って泥濘 んだ地面に、小さな獣の足跡がくっきりと刻まれていた。
「きっと、さっきの猫の足跡だよ」
「それじゃあ、この足跡を追っていけば……」
出久君は私の目を見て、力強く無言で頷いた。
その瞳には、どんな小さな痕跡も見逃さないという、ヒーロー候補生らしい力強さがあった。
足跡を辿った先は、雄英高校が保有する演習用の森へと続いていた。
緩やかな斜面はやがて険しい勾配へと変わり、生い茂る木々が空を覆い隠す。
ヒーロー科の彼にとっては慣れた道かもしれないけれど、普通科の私には、一歩進むだけで息が切れるような険しい道のりだった。
だけど、泣き言は言っていられない、そう意気込んだ次の瞬間。
「ひゃっ……!」
浮き出た蔦に足を取られ、身体が大きく傾く。
斜面に滑り落ちそうになった私の手首を、瞬時に大きな掌が掴んだ。
「危ない!」
「……あ、ありがとう、出久君」
「大丈夫?●●ちゃん、無理してないかな」
「う、うん、大丈夫。まだ行けるよ」
額には汗がにじみ、靴は泥だらけ。
髪だって木の枝に引っかかってボサボサだ。
それでも、私は止まれなかった。
だけど、残酷にも唯一の手がかりは唐突に途絶えた。
古びた洞窟の入り口を前にして、猫の足裏に付いた泥が完全に落ちきってしまったのだ。
「……あ」
立ち尽くす私に、出久君がいたわるような声をかける。
「ねえ、●●ちゃん。……やっぱり、今日は一旦戻ろう?暗くなると危ないし、また明日明るくなってから……」
「でも……だって……今見つけないと、もう二度と会えない気がして……」
震える声で言葉を絞り出す私に、出久君は少しだけ不思議そうに首を傾げた。
「そんなに、大切な物なの?」
「うん……」
出久君は、もう忘れているかもしれないけれど、あれは、ただのキーホルダーじゃない。
10年近く前。
泣きじゃくっていた私に「元気を出して」と、アナタがくれたオールマイトのキーホルダー。
当時、出久君にとっても宝物だったはずなのに、アナタは寂しそうに笑って私に譲ってくれた。
その優しい顔が、今でも鮮明に思い浮かぶ。
だけど、私のわがままで、出久君をこれ以上危険なことに巻き込むのはよくない。
“諦める”
その言葉が、喉の奥まで出かかった。
「……だったら、必ず見つけなきゃね!」
顔を上げると、出久君が太陽のような眩しい笑顔で私を見ていた。
彼にとっては、理由なんてどうでもいいのかもしれない。
困っている誰かがいて、その人の大切を守りたい。
ただそれだけで、彼は動ける人なのだ。
出久君の、こう言うところが好きだ。
「行こうか」
「……うん!」
差し出された、傷だらけで、でも何よりも頼もしいその手を、私はギュッと握り返した。
猫が消えた茂みを凝視しながら、私たちは歩みを早める。
夕暮れ時の影が長く伸び、視界が少しずつ悪くなっていく中、出久君が急に大声を上げた。
「●●ちゃん、見て。これ!」
彼が指差した先には、湿って
「きっと、さっきの猫の足跡だよ」
「それじゃあ、この足跡を追っていけば……」
出久君は私の目を見て、力強く無言で頷いた。
その瞳には、どんな小さな痕跡も見逃さないという、ヒーロー候補生らしい力強さがあった。
足跡を辿った先は、雄英高校が保有する演習用の森へと続いていた。
緩やかな斜面はやがて険しい勾配へと変わり、生い茂る木々が空を覆い隠す。
ヒーロー科の彼にとっては慣れた道かもしれないけれど、普通科の私には、一歩進むだけで息が切れるような険しい道のりだった。
だけど、泣き言は言っていられない、そう意気込んだ次の瞬間。
「ひゃっ……!」
浮き出た蔦に足を取られ、身体が大きく傾く。
斜面に滑り落ちそうになった私の手首を、瞬時に大きな掌が掴んだ。
「危ない!」
「……あ、ありがとう、出久君」
「大丈夫?●●ちゃん、無理してないかな」
「う、うん、大丈夫。まだ行けるよ」
額には汗がにじみ、靴は泥だらけ。
髪だって木の枝に引っかかってボサボサだ。
それでも、私は止まれなかった。
だけど、残酷にも唯一の手がかりは唐突に途絶えた。
古びた洞窟の入り口を前にして、猫の足裏に付いた泥が完全に落ちきってしまったのだ。
「……あ」
立ち尽くす私に、出久君がいたわるような声をかける。
「ねえ、●●ちゃん。……やっぱり、今日は一旦戻ろう?暗くなると危ないし、また明日明るくなってから……」
「でも……だって……今見つけないと、もう二度と会えない気がして……」
震える声で言葉を絞り出す私に、出久君は少しだけ不思議そうに首を傾げた。
「そんなに、大切な物なの?」
「うん……」
出久君は、もう忘れているかもしれないけれど、あれは、ただのキーホルダーじゃない。
10年近く前。
泣きじゃくっていた私に「元気を出して」と、アナタがくれたオールマイトのキーホルダー。
当時、出久君にとっても宝物だったはずなのに、アナタは寂しそうに笑って私に譲ってくれた。
その優しい顔が、今でも鮮明に思い浮かぶ。
だけど、私のわがままで、出久君をこれ以上危険なことに巻き込むのはよくない。
“諦める”
その言葉が、喉の奥まで出かかった。
「……だったら、必ず見つけなきゃね!」
顔を上げると、出久君が太陽のような眩しい笑顔で私を見ていた。
彼にとっては、理由なんてどうでもいいのかもしれない。
困っている誰かがいて、その人の大切を守りたい。
ただそれだけで、彼は動ける人なのだ。
出久君の、こう言うところが好きだ。
「行こうか」
「……うん!」
差し出された、傷だらけで、でも何よりも頼もしいその手を、私はギュッと握り返した。
