お騒がせプチ事件簿
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学校に近付くにつれ、同じ制服を着た生徒が増えてきた。
そんないつもの風景を横目に歩いていると、背後から聞き慣れた声がした。
「●●ちゃん、おはよう!」
振り返ると、そこには朝の予知通りの人物がいた。
「おはよう、出久君。ふふ、やっぱり会えたね」
私の個性は今日も絶好調。
だけど、彼の顔を間近で見た瞬間、弾んでいた心に少しだけ影が差した。
「……出久君、また傷が増えたね。それ、昨日まではなかったでしょう?」
制服の袖から覗く手首や首筋、頬にまで。
そこには新しく作られた痛々しい擦り傷がいくつもできていた。
「あはは、そうなんだよ。ちょっと、特訓に熱が入っちゃって」
出久君は困ったように、でもどこか誇らしげにポリポリと頬を掻いた。
中学まで無個性だった彼が、遅れを取り戻そうと必死に足掻いていることを私は知っている。
その傷の1つ1つが、彼の努力の賜物なのだ。
「あんまり無理しすぎちゃ駄目だよ?」
「うん、ありがとう。でも、もっと頑張らないと、みんなに追いつけないから!」
話していると、時間はあっという間に過ぎていく。
昇降口で靴を履き替えると、私たちはそれぞれの教室へと向かう。
学科が違う私たちは、ここで一旦お別れだ。
「じゃあ、またね!」
「うん、●●ちゃんも勉強頑張って!」
手をブンブンと振る彼を見送りながら、私は自分の教室へと足を向けた。
ーーーー
午後の授業。
お昼にランチラッシュの美味しい定食を堪能した後の体には、睡魔という名の強敵が襲いかかってくる。
それに加え、窓から差し込む暖かい日差しが、さらに思考を鈍らせる。
駄目だ……瞼が重い……。
先生の話し声が、子守唄のように感じる。
このままではノートが謎のミミズ文字で埋め尽くされてしまう。
私は奥の手を使うことにした。
今日の晩ご飯当てクイズ。
これが、意外と眠気を紛らわすことができる。
私はそっと目を閉じ、意識を数時間後の我が家へと飛ばす。
アロマを発動させ、未来の食卓から漂ってくるはずの匂いを吸い込んだ。
「スー……、……えっ?」
思わず、小さな声が漏れた。
鼻腔を通り抜けたのは、食欲をそそる美味しそうな香りではなかった。
お母さんがおかずを焦がしたワケじゃない。
クサヤや納豆のような、強烈なニオイを持つ食材の類でもない。
だけど、私はこのニオイを嗅いだことがある。
鉄が錆びたような、本能が拒絶する、嫌な嫌な……血のニオイだ。
つまり、私の身近な人が血を流すことを暗示している。
……もしかして、出久君の身に何か?!
一度感じてしまった恐怖に、眠気は一瞬で吹き飛んだ。
終業のチャイムが鳴り響くと同時に、私は席を立ち、彼がいるヒーロー科の教室へと走り出した。
「出久君!」
勢いよく扉を開けると、そこには友達と笑い合っている彼の姿があった。
その平和な光景に一瞬だけ安堵したけれど、鼻の奥に残るあの鉄のニオイが、私を突き動かす。
「……●●ちゃん?どうしたの、そんなに息を切らして」
驚いて駆け寄ってくる出久君。
私は周りに聞こえないよう、震える声で彼の耳元に囁いた。
「……血のニオイがしたの。今日の夕方、誰かが……ううん、出久君が酷い怪我をするかもしれない」
私の個性を理解している彼は、その瞬間に表情を強張らせた。
ヒーロー志望らしい、鋭く真剣な眼差し。
「……分かった。危ないから、今日は一緒に帰ろう。残りの授業が終わったら、校門で待ってて」
「うん……」
教室に戻っても、教科書の文字は一切頭に入ってこなかった。
窓の外を眺めながら、私はただ、あの嫌な予感が外れてくれることだけを祈っていた。
そんないつもの風景を横目に歩いていると、背後から聞き慣れた声がした。
「●●ちゃん、おはよう!」
振り返ると、そこには朝の予知通りの人物がいた。
「おはよう、出久君。ふふ、やっぱり会えたね」
私の個性は今日も絶好調。
だけど、彼の顔を間近で見た瞬間、弾んでいた心に少しだけ影が差した。
「……出久君、また傷が増えたね。それ、昨日まではなかったでしょう?」
制服の袖から覗く手首や首筋、頬にまで。
そこには新しく作られた痛々しい擦り傷がいくつもできていた。
「あはは、そうなんだよ。ちょっと、特訓に熱が入っちゃって」
出久君は困ったように、でもどこか誇らしげにポリポリと頬を掻いた。
中学まで無個性だった彼が、遅れを取り戻そうと必死に足掻いていることを私は知っている。
その傷の1つ1つが、彼の努力の賜物なのだ。
「あんまり無理しすぎちゃ駄目だよ?」
「うん、ありがとう。でも、もっと頑張らないと、みんなに追いつけないから!」
話していると、時間はあっという間に過ぎていく。
昇降口で靴を履き替えると、私たちはそれぞれの教室へと向かう。
学科が違う私たちは、ここで一旦お別れだ。
「じゃあ、またね!」
「うん、●●ちゃんも勉強頑張って!」
手をブンブンと振る彼を見送りながら、私は自分の教室へと足を向けた。
ーーーー
午後の授業。
お昼にランチラッシュの美味しい定食を堪能した後の体には、睡魔という名の強敵が襲いかかってくる。
それに加え、窓から差し込む暖かい日差しが、さらに思考を鈍らせる。
駄目だ……瞼が重い……。
先生の話し声が、子守唄のように感じる。
このままではノートが謎のミミズ文字で埋め尽くされてしまう。
私は奥の手を使うことにした。
今日の晩ご飯当てクイズ。
これが、意外と眠気を紛らわすことができる。
私はそっと目を閉じ、意識を数時間後の我が家へと飛ばす。
アロマを発動させ、未来の食卓から漂ってくるはずの匂いを吸い込んだ。
「スー……、……えっ?」
思わず、小さな声が漏れた。
鼻腔を通り抜けたのは、食欲をそそる美味しそうな香りではなかった。
お母さんがおかずを焦がしたワケじゃない。
クサヤや納豆のような、強烈なニオイを持つ食材の類でもない。
だけど、私はこのニオイを嗅いだことがある。
鉄が錆びたような、本能が拒絶する、嫌な嫌な……血のニオイだ。
つまり、私の身近な人が血を流すことを暗示している。
……もしかして、出久君の身に何か?!
一度感じてしまった恐怖に、眠気は一瞬で吹き飛んだ。
終業のチャイムが鳴り響くと同時に、私は席を立ち、彼がいるヒーロー科の教室へと走り出した。
「出久君!」
勢いよく扉を開けると、そこには友達と笑い合っている彼の姿があった。
その平和な光景に一瞬だけ安堵したけれど、鼻の奥に残るあの鉄のニオイが、私を突き動かす。
「……●●ちゃん?どうしたの、そんなに息を切らして」
驚いて駆け寄ってくる出久君。
私は周りに聞こえないよう、震える声で彼の耳元に囁いた。
「……血のニオイがしたの。今日の夕方、誰かが……ううん、出久君が酷い怪我をするかもしれない」
私の個性を理解している彼は、その瞬間に表情を強張らせた。
ヒーロー志望らしい、鋭く真剣な眼差し。
「……分かった。危ないから、今日は一緒に帰ろう。残りの授業が終わったら、校門で待ってて」
「うん……」
教室に戻っても、教科書の文字は一切頭に入ってこなかった。
窓の外を眺めながら、私はただ、あの嫌な予感が外れてくれることだけを祈っていた。
