好きな人ほどいじめたい
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朝、私は出久君の隣を歩きながら登校していた。
「いつの間にか出久君に個性が現れていたなんて、知らなかったよ」
清々しい天気とは裏腹に、嫌味を含ませる。
幼馴染みなのに、入学するまで知らせてもらえなかった重大な事実に戸惑いが隠せない。
「●●ちゃんが昔から励ましてくれたお陰だよ!だから●●ちゃんも、きっと個性が現れるよ!」
そんな嫌味にも気が付かず、出久君は満面の笑みを浮かべる。
無邪気な信頼。
偽りのない善意。
それが何よりも私を苛立たせることに、彼は知らない。
「……ありがとう」
口角だけを上げた私の横で、出久君はブツブツと私の個性を推測し始めた。
「●●ちゃんに個性が現れたらどうなるかなー。ご両親の個性って電極のマイナスを発生させる個性と、物を反発させる個性だったよね?そうなると……」
「……」
楽しそうに話す出久君の考察を、私は黙って聞き流す。
だって、アナタが今考えていることは、全て無駄なんだから。
出久君は知らない。
私に個性が現れていることを。
答えは既に出ている。
触れている相手を『ネガティブ』にする個性。
それは出久君みたいに、最近現れたものではない。
もっと昔。
一番古い記憶、出久君と手を繋いで帰ったあの頃には既に現れていた。
泣き虫なクセに、いつも頑張る出久君を見ていると、無性にイライラした。
だから、私は追い討ちをかけるように毎回励ます振りをして手を握って、何度もネガティブにした。
それなのに、落ち込んだ後は必ず元気になって、私に笑いかけるのだ。
「ありがとう」って。
……バカじゃないの。
あなたを絶望させている張本人に向かって、なんて顔をして笑うの。
「電極のプラスとか……反発ときたら抵抗?……いや、でも……」
独り言を続ける彼を見つめる。
その横顔に、またあの絶望を見てみたくなった。
私が一瞬触れるだけで、その笑顔を濁らせることができる。
幼馴染みの私がこんなに歪んだ欲望を抱いていると知ったら、君はどんな顔をするだろう。
悲しむかな、怒るかな、それとも泣いてくれる?
淡い期待に胸を躍らせた、その時だった。
「あ、麗日さんだ!」
視線の先には、校門をくぐる1人の女子生徒。
出久君の声が、一段高く弾んだ。
「じゃあ、僕行くね」
さっきまで私のことを考えていたクセに。
私の個性を、あんなに熱心に考察していたクセに。
こうも、あっさりと背中を向けるんだ。
「待って」
無意識だった。
彼女の元へ行かせたくなくて、咄嗟に出久君の手を掴んだ。
「何?●●ちゃん」
「えっと、……その」
不思議そうに首を傾げる彼。
引き止めたはいいけれど、言葉が出てこない。
だけど、指先から伝わる懐かしい彼の体温が、私の本能を呼び覚ます。
私だけを見て、絶望して、堕ちてよ……。
指先に力を込め、個性を流し込む。
「……あ。そうだよね。僕なんかが麗日さんに話しかけようなんて、おこがましいよね。止めてくれてありがとう、●●ちゃん」
期待していた言葉とは、違った。
私はハッとして手を離した。
「でも、今日は日直で職員室に寄らないとだから。もう行くね。●●ちゃんも、授業頑張ってね!」
「あ、うん……」
走り去る背中を、ただ眺めることしかできなかった。
教室に入り、自分の席に座っても、指先に残る感触が消えない。
……あんなのが見たかったんじゃない。
他の女の子のことで落ち込んで欲しかったワケじゃない。
私のことで頭いっぱいにさせて、彼をめちゃくちゃにしたかったのに。
ネガティブの内容までコントロールできない私の個性は、どこまでも中途半端だ。
ふと、自分の掌を見つめる。
さっき触れた出久君の手は、記憶にあるよりもずっと大きくて、逞しかった。
訓練でついたであろう無数の小さな傷。
きっと、強くなるために努力してきたのだろう。
なんで、あんなにも頑張れるんだろう……。
出久君が努力をして輝けば輝くほど、自分の陰湿さが嫌になってくる。
「……最低だ、私」
ねえ、出久君。
アナタを無個性のまま、私の手の届く範囲に閉じ込めておけたら、どんなに幸せだっただろう。
「いつの間にか出久君に個性が現れていたなんて、知らなかったよ」
清々しい天気とは裏腹に、嫌味を含ませる。
幼馴染みなのに、入学するまで知らせてもらえなかった重大な事実に戸惑いが隠せない。
「●●ちゃんが昔から励ましてくれたお陰だよ!だから●●ちゃんも、きっと個性が現れるよ!」
そんな嫌味にも気が付かず、出久君は満面の笑みを浮かべる。
無邪気な信頼。
偽りのない善意。
それが何よりも私を苛立たせることに、彼は知らない。
「……ありがとう」
口角だけを上げた私の横で、出久君はブツブツと私の個性を推測し始めた。
「●●ちゃんに個性が現れたらどうなるかなー。ご両親の個性って電極のマイナスを発生させる個性と、物を反発させる個性だったよね?そうなると……」
「……」
楽しそうに話す出久君の考察を、私は黙って聞き流す。
だって、アナタが今考えていることは、全て無駄なんだから。
出久君は知らない。
私に個性が現れていることを。
答えは既に出ている。
触れている相手を『ネガティブ』にする個性。
それは出久君みたいに、最近現れたものではない。
もっと昔。
一番古い記憶、出久君と手を繋いで帰ったあの頃には既に現れていた。
泣き虫なクセに、いつも頑張る出久君を見ていると、無性にイライラした。
だから、私は追い討ちをかけるように毎回励ます振りをして手を握って、何度もネガティブにした。
それなのに、落ち込んだ後は必ず元気になって、私に笑いかけるのだ。
「ありがとう」って。
……バカじゃないの。
あなたを絶望させている張本人に向かって、なんて顔をして笑うの。
「電極のプラスとか……反発ときたら抵抗?……いや、でも……」
独り言を続ける彼を見つめる。
その横顔に、またあの絶望を見てみたくなった。
私が一瞬触れるだけで、その笑顔を濁らせることができる。
幼馴染みの私がこんなに歪んだ欲望を抱いていると知ったら、君はどんな顔をするだろう。
悲しむかな、怒るかな、それとも泣いてくれる?
淡い期待に胸を躍らせた、その時だった。
「あ、麗日さんだ!」
視線の先には、校門をくぐる1人の女子生徒。
出久君の声が、一段高く弾んだ。
「じゃあ、僕行くね」
さっきまで私のことを考えていたクセに。
私の個性を、あんなに熱心に考察していたクセに。
こうも、あっさりと背中を向けるんだ。
「待って」
無意識だった。
彼女の元へ行かせたくなくて、咄嗟に出久君の手を掴んだ。
「何?●●ちゃん」
「えっと、……その」
不思議そうに首を傾げる彼。
引き止めたはいいけれど、言葉が出てこない。
だけど、指先から伝わる懐かしい彼の体温が、私の本能を呼び覚ます。
私だけを見て、絶望して、堕ちてよ……。
指先に力を込め、個性を流し込む。
「……あ。そうだよね。僕なんかが麗日さんに話しかけようなんて、おこがましいよね。止めてくれてありがとう、●●ちゃん」
期待していた言葉とは、違った。
私はハッとして手を離した。
「でも、今日は日直で職員室に寄らないとだから。もう行くね。●●ちゃんも、授業頑張ってね!」
「あ、うん……」
走り去る背中を、ただ眺めることしかできなかった。
教室に入り、自分の席に座っても、指先に残る感触が消えない。
……あんなのが見たかったんじゃない。
他の女の子のことで落ち込んで欲しかったワケじゃない。
私のことで頭いっぱいにさせて、彼をめちゃくちゃにしたかったのに。
ネガティブの内容までコントロールできない私の個性は、どこまでも中途半端だ。
ふと、自分の掌を見つめる。
さっき触れた出久君の手は、記憶にあるよりもずっと大きくて、逞しかった。
訓練でついたであろう無数の小さな傷。
きっと、強くなるために努力してきたのだろう。
なんで、あんなにも頑張れるんだろう……。
出久君が努力をして輝けば輝くほど、自分の陰湿さが嫌になってくる。
「……最低だ、私」
ねえ、出久君。
アナタを無個性のまま、私の手の届く範囲に閉じ込めておけたら、どんなに幸せだっただろう。
