諦める決断
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抱擁をしている私たちに、1つの大きな影が被さった。
「ん゛ん!!」
重苦しい咳払いが、私たちを現実世界へと引き戻す。
見上げると、そこには駆けつけたプロヒーローが、呆れたような、それでいてどこか感心したような複雑な面持ちで立っていた。
「そこの2人。……勇敢なのは認めるが、流石に無茶が過ぎる。感心できないね」
ヒーローの言葉に、私たちは弾かれたように離れた。
「すみません……」
「説教は後だ。まずはその傷をどうにかしてきなさい」
声を揃えて謝る私たちに、ヒーローは救急車を指差した。
救急車の中は、消毒液の匂いで満ちていた。
「僕はただの擦り傷なので、彼女を診てください」
出久君は鼻血を袖で拭いながら、自分のことより優先して私を救急隊員の前に押し出した。
「それじゃあキミ、腕を診せて」
隊員が私の腕を露わにした瞬間、その場に妙な沈黙が流れた。
「……おや?あのヴィランの個性って銃だよな。この傷って……」
「こ、これは……」
隠し通せるはずもなく、私は消え入るような声で、自分の個性のこと、そしてヴィランを止めるために自ら腕を切り裂いたことを説明した。
説明が終わる頃には、救急隊員たちの表情は感心から絶句へと変わっていた。
「キミたち、全く……命がいくつあっても足りないぞ」
大人たちの真っ当な叱責が、胸にチクリと刺さる。
ーーーー
病院に運ばれ、処置室で5針縫った。
麻酔の感覚が切れるにつれ、鈍い痛みが腕を支配していく。
お医者さんに「自傷でこれだけ深く切れるのは、ある種才能だが、二度とやらないように」と釘を刺され、私は力なく頷くしかなかった。
待合室のベンチ。
両親の迎えを待つ間、隣に座る出久君と、ぽつりぽつりと話し始めた。
「●●ちゃんの個性、理解しているつもりだったけれど、まさかあんな使い方があったとは……」
「まだまだ個性の観察力が足りていないね」
少しでも空気を明るくしたくて冗談めかして笑ってみせたけれど、出久君は笑わなかった。
「笑い事じゃないよ」
低く震える声で怒られてしまった。
「ごめん……」
「僕、●●ちゃんとヒーローを目指すのを喜んだことがあったけど、今回のを見て怖くなった」
「出久君?」
「自ら自身の身体を傷付けながら戦う様を考えたら、耐えられない。それで、もし●●ちゃんが死んじゃったら……」
「……」
「●●ちゃんの痛みを僕が代われるなら良かったのに」
その言葉は、どんな甘い愛の言葉よりも重く、優しく私に響いた。
「そんなに都合よくいかないよ」
何度考えたことか。
超回復、あるいは無痛の個性。
そんな力を併せ持っていれば、この『シンクロ』も、もっとまともに使いこなせただろうに。
「……じゃあ、せめて。●●ちゃんの痛みを、僕にも分けて」
出久君が、真っ直ぐに私を見た。
「そんなことしても……!」
「分かってる。それで痛みが消えるワケじゃなくても、一緒に耐えることならできるから」
ああ、やっぱりこの人は……。
「そんなお願いをするなんて、出久君ってびっくりするほど自分を可愛がらないよね」
呆れたように言ったけれど、私の胸の中は満たされていた。
「ん゛ん!!」
重苦しい咳払いが、私たちを現実世界へと引き戻す。
見上げると、そこには駆けつけたプロヒーローが、呆れたような、それでいてどこか感心したような複雑な面持ちで立っていた。
「そこの2人。……勇敢なのは認めるが、流石に無茶が過ぎる。感心できないね」
ヒーローの言葉に、私たちは弾かれたように離れた。
「すみません……」
「説教は後だ。まずはその傷をどうにかしてきなさい」
声を揃えて謝る私たちに、ヒーローは救急車を指差した。
救急車の中は、消毒液の匂いで満ちていた。
「僕はただの擦り傷なので、彼女を診てください」
出久君は鼻血を袖で拭いながら、自分のことより優先して私を救急隊員の前に押し出した。
「それじゃあキミ、腕を診せて」
隊員が私の腕を露わにした瞬間、その場に妙な沈黙が流れた。
「……おや?あのヴィランの個性って銃だよな。この傷って……」
「こ、これは……」
隠し通せるはずもなく、私は消え入るような声で、自分の個性のこと、そしてヴィランを止めるために自ら腕を切り裂いたことを説明した。
説明が終わる頃には、救急隊員たちの表情は感心から絶句へと変わっていた。
「キミたち、全く……命がいくつあっても足りないぞ」
大人たちの真っ当な叱責が、胸にチクリと刺さる。
ーーーー
病院に運ばれ、処置室で5針縫った。
麻酔の感覚が切れるにつれ、鈍い痛みが腕を支配していく。
お医者さんに「自傷でこれだけ深く切れるのは、ある種才能だが、二度とやらないように」と釘を刺され、私は力なく頷くしかなかった。
待合室のベンチ。
両親の迎えを待つ間、隣に座る出久君と、ぽつりぽつりと話し始めた。
「●●ちゃんの個性、理解しているつもりだったけれど、まさかあんな使い方があったとは……」
「まだまだ個性の観察力が足りていないね」
少しでも空気を明るくしたくて冗談めかして笑ってみせたけれど、出久君は笑わなかった。
「笑い事じゃないよ」
低く震える声で怒られてしまった。
「ごめん……」
「僕、●●ちゃんとヒーローを目指すのを喜んだことがあったけど、今回のを見て怖くなった」
「出久君?」
「自ら自身の身体を傷付けながら戦う様を考えたら、耐えられない。それで、もし●●ちゃんが死んじゃったら……」
「……」
「●●ちゃんの痛みを僕が代われるなら良かったのに」
その言葉は、どんな甘い愛の言葉よりも重く、優しく私に響いた。
「そんなに都合よくいかないよ」
何度考えたことか。
超回復、あるいは無痛の個性。
そんな力を併せ持っていれば、この『シンクロ』も、もっとまともに使いこなせただろうに。
「……じゃあ、せめて。●●ちゃんの痛みを、僕にも分けて」
出久君が、真っ直ぐに私を見た。
「そんなことしても……!」
「分かってる。それで痛みが消えるワケじゃなくても、一緒に耐えることならできるから」
ああ、やっぱりこの人は……。
「そんなお願いをするなんて、出久君ってびっくりするほど自分を可愛がらないよね」
呆れたように言ったけれど、私の胸の中は満たされていた。
