諦める決断
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死を覚悟したあの一瞬が、まるで遠い昔の出来事のように感じられた。
身体の節々が痛む。
だけど、視界に映る自分の腕には、カッターで刻んだ自傷の痕以外に新しい傷は見当たらない。
「……生きてる」
弾丸は私を逸れたのだ。
安堵で胸を撫で下ろすと同時に、守りたかった少年の行方を探す。
視線の先、母親の腕の中で泣きじゃくる男の子の姿が見えた。
ヴィランは駆けつけたヒーローによって組み伏せられ、騒乱は収束へと向かったようだ。
「良かった……」
膝の力が抜け、その場に座り込みそうになった。
だけど、側にいるはずの彼がいない。
「……出久君?」
振り返ると、彼は少し離れた場所でうつ伏せに倒れていた。
脳裏をよぎる、背中を押された感覚。
あの一瞬、彼は自分を犠牲にして私を弾丸の軌道から突き飛ばしたのだ。
「出久君!出久君、起きてよ!」
動かない肩を何度も揺さぶる。
「ねえ!出久君はヒーローになるんでしょ!こんなところで寝ている場合じゃないでしょ!」
叫びは喉の奥で震え、やがて止まらない涙となって溢れ出した。
「っ……ぐすっ……うぇ……出久、君……ひっく……」
私、まだ何も言えていない。
無個性の出久君への醜い嫉妬も、本当はアナタのことが好きで、だからこそ隣を歩きたかったという願いも。
「置いて……いかないでよ……っ……!」
拭っても、拭っても、手の甲が涙と鼻水で汚れ、視界が滲む。
「うっ……っ……ひっく」
目を擦りすぎてヒリヒリと痛むけれど、そんな痛みなんて、どうでもいい。
腕の切り傷よりも心が痛かった。
その時、地面から微かな声が聞こえた。
「う、……んっ」
「出久君!?」
ゆっくりと頭を上げた彼は、派手な鼻血と擦り傷だらけの顔で、どこか呆然としていた。
「気を失ってたみたい……、●●ちゃん、大丈夫だった?」
自分もボロボロのくせに、開口一番に私の心配をする彼。
そのあまりの彼らしさに、恐怖と後悔が爆発した。
「大丈夫だったじゃないよ!心配したんだから!」
「ごめん……」
考えるより先に、私は彼に飛びつき、その身体を力いっぱい抱きしめた。
「ちょっ、●●ちゃん!鼻血付いちゃうよ!」
「いいよ、気にしない! 」
腕の中に伝わる、生きた人間の確かな鼓動。
鼻血で汚れようが、人目に触れようが、今はただ、この温もりを離したくなかった。
「●●ちゃん……」
戸惑いながらも、出久君も私の背中に腕を回してポンポンと擦ってくれた。
彼の顔は私からは見えないけれど、おそらく真赤にさせているだろう。
身体の節々が痛む。
だけど、視界に映る自分の腕には、カッターで刻んだ自傷の痕以外に新しい傷は見当たらない。
「……生きてる」
弾丸は私を逸れたのだ。
安堵で胸を撫で下ろすと同時に、守りたかった少年の行方を探す。
視線の先、母親の腕の中で泣きじゃくる男の子の姿が見えた。
ヴィランは駆けつけたヒーローによって組み伏せられ、騒乱は収束へと向かったようだ。
「良かった……」
膝の力が抜け、その場に座り込みそうになった。
だけど、側にいるはずの彼がいない。
「……出久君?」
振り返ると、彼は少し離れた場所でうつ伏せに倒れていた。
脳裏をよぎる、背中を押された感覚。
あの一瞬、彼は自分を犠牲にして私を弾丸の軌道から突き飛ばしたのだ。
「出久君!出久君、起きてよ!」
動かない肩を何度も揺さぶる。
「ねえ!出久君はヒーローになるんでしょ!こんなところで寝ている場合じゃないでしょ!」
叫びは喉の奥で震え、やがて止まらない涙となって溢れ出した。
「っ……ぐすっ……うぇ……出久、君……ひっく……」
私、まだ何も言えていない。
無個性の出久君への醜い嫉妬も、本当はアナタのことが好きで、だからこそ隣を歩きたかったという願いも。
「置いて……いかないでよ……っ……!」
拭っても、拭っても、手の甲が涙と鼻水で汚れ、視界が滲む。
「うっ……っ……ひっく」
目を擦りすぎてヒリヒリと痛むけれど、そんな痛みなんて、どうでもいい。
腕の切り傷よりも心が痛かった。
その時、地面から微かな声が聞こえた。
「う、……んっ」
「出久君!?」
ゆっくりと頭を上げた彼は、派手な鼻血と擦り傷だらけの顔で、どこか呆然としていた。
「気を失ってたみたい……、●●ちゃん、大丈夫だった?」
自分もボロボロのくせに、開口一番に私の心配をする彼。
そのあまりの彼らしさに、恐怖と後悔が爆発した。
「大丈夫だったじゃないよ!心配したんだから!」
「ごめん……」
考えるより先に、私は彼に飛びつき、その身体を力いっぱい抱きしめた。
「ちょっ、●●ちゃん!鼻血付いちゃうよ!」
「いいよ、気にしない! 」
腕の中に伝わる、生きた人間の確かな鼓動。
鼻血で汚れようが、人目に触れようが、今はただ、この温もりを離したくなかった。
「●●ちゃん……」
戸惑いながらも、出久君も私の背中に腕を回してポンポンと擦ってくれた。
彼の顔は私からは見えないけれど、おそらく真赤にさせているだろう。
