諦める決断
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時が経ち、私は中学3年生となった。
進路を迫られるとき。
それなのに、私の手元にある進路希望調査票は、何度も書き直した跡があるわけでもなく、ただ真っ白なまま。
今の私なら、自分の個性が理解できる。
予想通り、両親の個性を受け継いだ。
個性『シンクロ』。
受けた痛みを相手にも移す個性。
ただし、物理的な痛みでなければ、移すことはできない。
その力を理解すればするほど、かつての夢は砂のように指の間からこぼれ落ちていった。
物理的な痛みを共有するだけの力。
確かにヒーロー向きではない個性だ。
だけど、なぜ未だ無個性の出久君がヒーローを目指せて、私は目指せないの?
納得がいかなかった。
ーーーー
ある日、今日も出久君のヒーローのうんちくを聞きながら帰宅していた。
「ヒーロービルボードチャート見た?みんな凄いヒーローだよね!特に──とか──がね!」
今までは楽しく聞いていたのに、ここ最近は楽しくない。
気が付けば、話を遮るように出久君の名前を呼んでいた。
「ねえ、出久君……」
「ん、何?●●ちゃん。ヒーローについての質問?なんでも答えるよ!」
その目は、無個性の壁にぶつかりながらも、未だに折れない意思で輝いている。
その眩しさが、今の私にはただただ苦しかった。
「出久君は個性がないのに、なんでヒーローを目指すの?」
「えーっと、それは……ヒーローに憧れちゃったから、かな。どうやら、僕は根っからの困っている人を放っておけない性分みたい」
出久君はへへっと照れ臭そうに頬を掻いた。
それなら、私のことも助けてよ。
個性がないアナタに嫉妬している私を。
親にヒーローを目指すことを反対されている私を。
だけど、その言葉が出ないように、唇をぐっと噛み締めた。
その時だった。
「きゃー!!!!」
空を切り裂くような悲鳴が聞こえてきた。
「何、今の」
私たちは顔を見合わせて、直ぐに悲鳴が聞こえてきた方へと走り出した。
……。
…………。
「人集りができている!」
「ここだ!」
傍観者たちを押し退けて前列へと出ると、そこには小さい男の子を人質に取っている覆面ヴィランがいた。
「お前ら近付くな!これ以上近付くと、このガキの頭が吹っ飛ぶぞ!」
覆面で顔は見えないけれど、声と屈強な体格からして男だ。
ヴィランは空いている方の手を銃の様な物に変形させて、男の子の頭に突き付けていた。
「た、助けて……」
ガクガクと震えている男の子。
近くで取り乱している母親らしい女性。
どうする、私。
どうすればいい。
心臓の鼓動が煩く鳴り響く。
飛び出して男の攻撃を受けて個性のシンクロを発動させるか。
でも、威力も分からない。
心臓を狙われようものなら、シンクロさせる間もなく私が死ぬ。
それなら……。
私は震える手で鞄からカッターナイフを取り出した。
銀色の刃が、反射して不気味に光る。
「ちょっと●●ちゃん、何出してるの!」
驚いている出久君を無視して、私は自分の腕を切りつけた。
「っ……!」
ヴィランの方を見ると、銃に変形させた腕を少しだけ気にした素振りを見せただけで、特に変化はなかった。
恐怖で傷が浅かったようだ。
もっと深く切らないと。
「やめてよ!」
出久君がカッターを持つ腕を掴んできたけれど、私はそれを振り払った。
そして、再度腕を切りつけた。
肉を断つ嫌な感触と、焼けるような熱い激痛が走る。
「ぐっ……ぅ!」
これならどうだ!
私の腕から鮮血が吹き出すと同時に、ヴィランも唸り声を上げた。
「な、なんだ!急に腕から血が!!誰の仕業だ!」
ヴィランは反射的に傷口を押さえた。
狙い通り、人質を掴んでいた手が緩む。
その隙を狙って、人質になっていた男の子は母親に向かって走り出した。
「おい、ガキ!クッソがああぁ!!」
だけど、激怒したヴィランの銃口が、逃げる男の子へと向けられた。
思考より先に体が動く。
私はその軌道上へと飛び込んだ。
「●●ちゃん、危ない!!」
出久君の叫びも虚しく、乾いた破裂音が鼓膜を震わせた。
進路を迫られるとき。
それなのに、私の手元にある進路希望調査票は、何度も書き直した跡があるわけでもなく、ただ真っ白なまま。
今の私なら、自分の個性が理解できる。
予想通り、両親の個性を受け継いだ。
個性『シンクロ』。
受けた痛みを相手にも移す個性。
ただし、物理的な痛みでなければ、移すことはできない。
その力を理解すればするほど、かつての夢は砂のように指の間からこぼれ落ちていった。
物理的な痛みを共有するだけの力。
確かにヒーロー向きではない個性だ。
だけど、なぜ未だ無個性の出久君がヒーローを目指せて、私は目指せないの?
納得がいかなかった。
ーーーー
ある日、今日も出久君のヒーローのうんちくを聞きながら帰宅していた。
「ヒーロービルボードチャート見た?みんな凄いヒーローだよね!特に──とか──がね!」
今までは楽しく聞いていたのに、ここ最近は楽しくない。
気が付けば、話を遮るように出久君の名前を呼んでいた。
「ねえ、出久君……」
「ん、何?●●ちゃん。ヒーローについての質問?なんでも答えるよ!」
その目は、無個性の壁にぶつかりながらも、未だに折れない意思で輝いている。
その眩しさが、今の私にはただただ苦しかった。
「出久君は個性がないのに、なんでヒーローを目指すの?」
「えーっと、それは……ヒーローに憧れちゃったから、かな。どうやら、僕は根っからの困っている人を放っておけない性分みたい」
出久君はへへっと照れ臭そうに頬を掻いた。
それなら、私のことも助けてよ。
個性がないアナタに嫉妬している私を。
親にヒーローを目指すことを反対されている私を。
だけど、その言葉が出ないように、唇をぐっと噛み締めた。
その時だった。
「きゃー!!!!」
空を切り裂くような悲鳴が聞こえてきた。
「何、今の」
私たちは顔を見合わせて、直ぐに悲鳴が聞こえてきた方へと走り出した。
……。
…………。
「人集りができている!」
「ここだ!」
傍観者たちを押し退けて前列へと出ると、そこには小さい男の子を人質に取っている覆面ヴィランがいた。
「お前ら近付くな!これ以上近付くと、このガキの頭が吹っ飛ぶぞ!」
覆面で顔は見えないけれど、声と屈強な体格からして男だ。
ヴィランは空いている方の手を銃の様な物に変形させて、男の子の頭に突き付けていた。
「た、助けて……」
ガクガクと震えている男の子。
近くで取り乱している母親らしい女性。
どうする、私。
どうすればいい。
心臓の鼓動が煩く鳴り響く。
飛び出して男の攻撃を受けて個性のシンクロを発動させるか。
でも、威力も分からない。
心臓を狙われようものなら、シンクロさせる間もなく私が死ぬ。
それなら……。
私は震える手で鞄からカッターナイフを取り出した。
銀色の刃が、反射して不気味に光る。
「ちょっと●●ちゃん、何出してるの!」
驚いている出久君を無視して、私は自分の腕を切りつけた。
「っ……!」
ヴィランの方を見ると、銃に変形させた腕を少しだけ気にした素振りを見せただけで、特に変化はなかった。
恐怖で傷が浅かったようだ。
もっと深く切らないと。
「やめてよ!」
出久君がカッターを持つ腕を掴んできたけれど、私はそれを振り払った。
そして、再度腕を切りつけた。
肉を断つ嫌な感触と、焼けるような熱い激痛が走る。
「ぐっ……ぅ!」
これならどうだ!
私の腕から鮮血が吹き出すと同時に、ヴィランも唸り声を上げた。
「な、なんだ!急に腕から血が!!誰の仕業だ!」
ヴィランは反射的に傷口を押さえた。
狙い通り、人質を掴んでいた手が緩む。
その隙を狙って、人質になっていた男の子は母親に向かって走り出した。
「おい、ガキ!クッソがああぁ!!」
だけど、激怒したヴィランの銃口が、逃げる男の子へと向けられた。
思考より先に体が動く。
私はその軌道上へと飛び込んだ。
「●●ちゃん、危ない!!」
出久君の叫びも虚しく、乾いた破裂音が鼓膜を震わせた。
