諦める決断
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その日の夜。
トイレに行きたくなり、静かに部屋を出た。
冷え切った廊下を通り過ぎようとしたとき、リビングのドアの隙間から、漏れ出した光と一緒に話声が聞こえてきた。
「……あの子、ヒーローになりたいって言ったのよ」
母の声だ。
昼間のことを、早速父に話しているようだった。
私は思わず足を止め、壁の影に身を潜めた。
「個性のこと、そろそろ話さないといけないか……」
父の低く唸るような溜息。
個性……。
そういえば、私はまだ自分の個性を知らない。
父と母の個性もよく分かっていないため、予想がつかない。
異形型は見た目的に違う。
変形型もなくはないだろうけど、身体のあらゆる場所を力ませても変わる様子はない。
やはり定番の発動型なのだろうか。
どうせなら強いのが良いな!
それで、強いヒーローになるんだ!
そんなことを考えていると、自分の膀胱が限界を迎えていることを思い出した。
今はトイレが優先。
父が「話さないと」って言っていたから、明日になれば分かるはず。
私は速やかにトイレを済ませて、寝床についた。
ーーーー
翌朝。
香ばしく焼けたトーストと、目玉焼きの匂いで目が覚めた。
布団から飛び起き、リビングへ向かうと、食卓を囲む空気はどこか沈んでいた。
それに気が付かないフリをする。
「いただきまーす!」
あえて元気よく声を出し、大口を開けてトーストに齧りつく。
「●●。……お前に、大切な話があるんだ」
父が箸を置き、真っ直ぐに私を見た。
その瞳は、昨日の母と同じように険しいものだった。
「なあに?」
昨日、盗み聞きしてしまったことを悟られないように、私はとぼけた声で返事をした。
「父さんと母さんはね、実は偶然、全く同じ個性を持っているんだ。だから、高確率でお前も同じ能力を受け継ぐことになる」
父は一瞬言葉を詰まらせ、それから、絞り出すように告げた。
「その個性はな、自分の痛みを、相手にも移す個性なんだ」
「……?」
理解が追いつかなかった。
首を傾げる私に、父は悲痛な面持ちで首を振った。
「今はまだ分からないかもしれない。けれど、この個性は……自分を守れない力なんだ。だからヒーローには……絶対に向いていない」
何故、向いていないのか。
向いていないと、ヒーローを目指してはいけないのか。
それならば、出久君との約束はどうなるの?
昨日あんなに胸を躍らせた夢は、理解できないまま打ち砕かれた。
「だから、頼む。ヒーロー以外の夢を目指してくれないか。それ以外なら、父さんたちは全力でお前を応援する。……お前には、傷付いてほしくないんだ」
父の大きな手が、微かに震えながら私の肩に置かれた。
泣き出しそうな両親の顔を初めて見た。
私は、口の中に残っていたトーストを飲み込むことさえ忘れて、ただ、頷くことしかできなかった。
トイレに行きたくなり、静かに部屋を出た。
冷え切った廊下を通り過ぎようとしたとき、リビングのドアの隙間から、漏れ出した光と一緒に話声が聞こえてきた。
「……あの子、ヒーローになりたいって言ったのよ」
母の声だ。
昼間のことを、早速父に話しているようだった。
私は思わず足を止め、壁の影に身を潜めた。
「個性のこと、そろそろ話さないといけないか……」
父の低く唸るような溜息。
個性……。
そういえば、私はまだ自分の個性を知らない。
父と母の個性もよく分かっていないため、予想がつかない。
異形型は見た目的に違う。
変形型もなくはないだろうけど、身体のあらゆる場所を力ませても変わる様子はない。
やはり定番の発動型なのだろうか。
どうせなら強いのが良いな!
それで、強いヒーローになるんだ!
そんなことを考えていると、自分の膀胱が限界を迎えていることを思い出した。
今はトイレが優先。
父が「話さないと」って言っていたから、明日になれば分かるはず。
私は速やかにトイレを済ませて、寝床についた。
ーーーー
翌朝。
香ばしく焼けたトーストと、目玉焼きの匂いで目が覚めた。
布団から飛び起き、リビングへ向かうと、食卓を囲む空気はどこか沈んでいた。
それに気が付かないフリをする。
「いただきまーす!」
あえて元気よく声を出し、大口を開けてトーストに齧りつく。
「●●。……お前に、大切な話があるんだ」
父が箸を置き、真っ直ぐに私を見た。
その瞳は、昨日の母と同じように険しいものだった。
「なあに?」
昨日、盗み聞きしてしまったことを悟られないように、私はとぼけた声で返事をした。
「父さんと母さんはね、実は偶然、全く同じ個性を持っているんだ。だから、高確率でお前も同じ能力を受け継ぐことになる」
父は一瞬言葉を詰まらせ、それから、絞り出すように告げた。
「その個性はな、自分の痛みを、相手にも移す個性なんだ」
「……?」
理解が追いつかなかった。
首を傾げる私に、父は悲痛な面持ちで首を振った。
「今はまだ分からないかもしれない。けれど、この個性は……自分を守れない力なんだ。だからヒーローには……絶対に向いていない」
何故、向いていないのか。
向いていないと、ヒーローを目指してはいけないのか。
それならば、出久君との約束はどうなるの?
昨日あんなに胸を躍らせた夢は、理解できないまま打ち砕かれた。
「だから、頼む。ヒーロー以外の夢を目指してくれないか。それ以外なら、父さんたちは全力でお前を応援する。……お前には、傷付いてほしくないんだ」
父の大きな手が、微かに震えながら私の肩に置かれた。
泣き出しそうな両親の顔を初めて見た。
私は、口の中に残っていたトーストを飲み込むことさえ忘れて、ただ、頷くことしかできなかった。
