羽風薫
名前
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―「俺のこと嫌い嫌い言うくせに、アンデッドのライブに来てくれてたよね」
回覧板を回しに訪れた名前を薫がそのまま帰す筈などなく、抵抗も虚しく彼の部屋に連れ込まれた。近所に住んでいる薫とは同じ中学出身という事もあり、当時から互いをよく知る間柄だ。だからこそ女子にモテモテで軽薄な薫を、表向きには軽蔑していた。それなのに、今更好きだと伝えられるわけがない。
「私は朔間零くんのファンだからさ。勘違いしないでよね」
「嘘でしょ?よりによって朔間さんのファンだなんてやめてよ」
ベッドの上に腰をおろした自分の隣に何の躊躇いもなく名前が座った事により、薫はひそかに手応えを感じているのだが、そんな気持ちには気付かずに彼女はただ薫の事を貶す台詞を並べている。
「女の子ならだれかれ構わず口説いてさ、アンタのそういうとこ大っ嫌い」
ぷんすかと怒りを顕にする彼女とは裏腹に、薫は嬉しそうに頬を緩めていた。間近にある整った顔を目にして、余計に彼女の機嫌が悪くなったとは気付かずに、不貞腐れてそっぽを向いた名前の艶やかな髪に触れるのだった。
―「ヤキモチなんて妬いちゃって、か~わいい」
ここがベッドの上ということで、後ずさった彼女は両肩を捕えられ、ぽすりと白いシーツに押し倒された。大嫌いで大好きな相手との予期せぬ展開に目をぱちくりさせた後、可愛げの無い台詞が飛び出した。
「私にこんな事するなんて、欲求不満なの?」
遊び人の薫が自分なんか相手にするわけないと思い込んでいる彼女が導き出した結論…それは"気の迷い"。見当違いな言葉に笑みを滲ませながら、戸惑う彼女を抱きかかえて彼もベッドに転がった。当初は抵抗していた彼女も既に抵抗をやめて大人しく腕に抱かれている。
「ねぇ俺、今すごくドキドキしてるんだけど分かる?」
経験豊富なくせに嘘言わないでよ。と笑いながら彼の鼓動に耳をすませた彼女は反論の言葉を呑み込んだ。自分と同じくらい胸が早鐘を打っているのが伝わってくる。あの羽風薫が緊張しているなんて信じられない。
「薫、ずるいよ…」
苦し紛れに口をついて出た一言に、すかさず反論の言葉が響いた。「俺の腕の中でジッとしてる名前もずるいんじゃない?」耳元でそっと囁かれた彼女は顔を真っ赤に染めて口をパクパクさせた。
「薫とそういうコトしたいと思ってる自分がやだ…」
「奇遇だね。俺も今、その考えを振り払おうと必死になってたんだけど。その必要はないね」
君に触れてほしい―
END