朔間零
名前
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―短期留学で異国の地に訪れているが、一人ではない。同級生の朔間零と一緒だ。耳を澄ませば耳に響くのは外国語だけ…。ブロンドの髪を靡かせている異国の女性とすれ違って、何だか羨ましくなった。自分もあれくらい美しかったら零も振り向いてくれるのではないだろうか。
「ほれ、嬢ちゃん。吾輩の手に掴まっておれ」
「子供扱いしないでよ」
街を散策している途中。手を繋ごうと言わんばかりに掌を差し延べられて、躊躇いつつも彼の手を握った。初めて触れる大きな彼の掌を感じて、どうしていいか分からない高揚感に満たされた。そして、隣を歩く彼に突然ぐいと引き寄せられて耳元で囁かれた。
「道行く男から嬢ちゃんに視線が集まっておるのが気掛かりじゃのう」
日本人の観光客なんてそんなに珍しいものでもない筈なのにどうしてだろう。と首を傾げる私に彼のとんでもない憶測が挙げられた。「嬢ちゃんは魅力的じゃからのう」なんて。零ならともかく私に魅力なんてあるわけないじゃないか。と少しムッとしてしまう。
「わ、横断歩道の真ん中なのに…」
流石は海外と言うべきなのだろうか。横断歩道の真ん中で正面から歩いて来た恋人とハグしているカップルが目に止まった。呆気にとられて零を見上げれば紅い瞳と視線が絡んだ。
「嬢ちゃんも、あぁいう展開に憧れておるのじゃな」
吾輩達も見せつけてやろうぞ。なんて言葉と共にストリートの真ん中で抱きしめられた。愛しむように背中に腕を回されて身動きが取れない。抱きしめられて視界が塞がっているお陰で周りの視線は気にならない。しかし、このままでは私の心臓がもちそうにない。
「ねぇ、零!離してよ…」
「嬢ちゃんが吾輩のものになってくれるのならば、離してやるぞい」
躊躇いなく頷いた私と嬉しそうに笑みを浮かべた彼を祝福するかように、路上のバイオリン弾きの奏でる鮮やかな音色が私達を包んだ―
END