乙狩アドニス
名前
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―「それはあの子なりの優しさなのよ」と嵐ちゃんからアドバイスを得たけれど、どうも私にはそうは思えない。クラスメイトの乙狩アドニスくんは私と顔を合わせる度に同じ事を忠告してくるのだ。
「名前は細すぎる。もっと肉を食え」
「私はね、モデルとして体型を維持しないといけないの」
アドニスくんは決して悪い人ではないのだけど、女心を察知出来ないのだと感じる。食堂で昼食を食べている時に本当に肉料理を与えられたのは驚いた。何これ餌付けされてるみたい。
「アドニスくん、私の食事の観察しないでくれるかなぁ?」
昼休みになると必ず私の横のテーブルで昼食を食べている彼。まるで見張られているようだが、傍(はた)から見たら私達は仲良く食事しているように見えているらしい。真実とは程遠い勘違いである。
「名前は少食すぎるから心配になる。もう少し食べろ」
「いや、アドニスくんに言われて多少は食べる量増やしたんだよ?」
そもそも何故、彼は私にこんなに絡んでくるのだろう?不思議でならないので本人に訊いてみた私の判断は間違ってはないだろう。それなのに…彼から告げられた一言で顔中が一気に熱くなった。全部彼のせいだ。完全に不意をつかれた。
―「好いている相手に構いたいのは当然だろう」
「私はアドニスくんが言うような"小さくてか弱き者"じゃないのにいいの?」
大きくて逞しい彼は小さくて可愛い女の子が好きな筈。残念ながら私には当てはまらない。それなのに…。
「名前は俺よりも小さいだろう。守ってやりたくなるんだ」
昼食を食べ終えて紅茶を飲んでいる私の手を握って、彼は照れくさそうに笑った。"アドニスくん女心分かってない"と不満を抱いていた筈なのに、この人ならいいか。なんて愛しく感じるのだから不思議なものだ。
「私でいいのなら、アドニスくんの傍にいさせて」
少しずつ、伝えていこう―
END