乙狩アドニス
名前
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―「この前の、私の我儘覚えてる?」
月明かりが照らす夜道。本日は名前がアンデッドのレッスンを担当し、その帰り道は恋人であるアドニスに送ってもらっていた。彼と手を繋いで、冒頭の台詞を彼女はふと問いかける。と、いうのも…明日は家族全員家に居らず、アドニスとお泊まり会が出来ると判断した彼女の提案に起因していた。―「そろそろキス以上のこともしたいな」と彼女の可愛い我儘を思い出し、「明日は私の家にお泊まりして」と誘われたアドニスは少し考える素振りをみせた。硬派な彼が断る可能性は大いに有りうる。だからこそ、願いを込めるように彼の手をぎゅっと握った。暫し考えて、覚悟を決めたのか彼は彼女と視線を絡めて頷いた。「名前はあまりにも危機感がなさすぎるな」とアドニス相手には隙だらけの名前を彼は逆に心配していた。だが、相手は愛しい恋人。少しの我儘なら聞いてあげよう。と決めたのは自分だ。「おやすみのチューして」と、彼女の自宅の前で夜闇に紛れて彼らは唇を重ねた。嬉しそうに、名残惜しそうに微笑んで手を振る彼女を抱き締めたい。と感じてしまうことに、自分は名前に依存していると認めざるを得なかった。
―「アドニスくんはお客様なんだから。手伝ってくれなくていいんだよ」
考えを巡らせすぎてすぐには寝付けなかった昨晩が嘘のように、彼らには和やかな雰囲気が満ちていた。キッチンで、夕飯を作っているエプロン姿の名前の隣にはアドニスが。「肉を食え」といつも言っているだけあり、肉料理を作る彼の腕前に彼女は感嘆した。スープとサラダを作り、手を洗っていると後ろからアドニスに抱き締められた。これは、俗に言う“あすなろ抱き”というものだと頭の片隅でぼんやりと考えた。彼が唐突に抱き締めてくれるのは、とても珍しいことだった。「どうかしたの?」と問いかければ「名前のエプロン姿が色っぽいのが悪いんだろう」との予想外の台詞に彼女は胸をときめかせた。食事はもう出来上がっているのに、このまま離してほしくないとすら思ってしまう。夜の営みだって覚悟しているのに、こんなことで心揺さぶられてしまうなんて。と、甘い葛藤に悩まされた。現在のシチュエーションは、まるで夫婦のようだ。と少なからず未来に思いを馳せてしまう。そんな彼女から手を離し、ふたりで食卓を囲んだ。一緒に作った料理が美味しいこと。それから、今夜は彼とずっと一緒に居られるという事実に只々胸が踊った。
ー「アドニスくんとじゃなきゃやだ」
ついにこの時が来てしまった。と、内心どうしようもなくドキドキとしているのだが、彼はその意志とは裏腹に「初めての相手が俺でいいのか?後悔するかもしれないだろう」と、ベッド上にいるにも関わらず何も進展していなかった。一人では贅沢かもしれないセミダブルサイズのベッドはふたりなら丁度いい大きさである。硬派な彼ならではの言動に、名前はひたすら自分の想いを伝える。実の所、彼自身も初めてなせいで自信がないのである。「俺は上手くないから、名前に痛い思いをさせてしまうだろう」と彼は自身の欲よりも彼女の身体を労わっていた。そして、冒頭の台詞に戻る。手を出すのはまだ早いんじゃないかと思っていたアドニスだが、名前の可愛すぎる懇願に理性が砂のようにさらさらと崩れていくようだった。「煽られると、もう理性が保てないが…いいんだな?」と問いかければ何度も頷く彼女は真っ白なナイトガウンを脱がされ、素肌が露わになった。部屋の明かりは暗くされていない為、明るい場所で裸を彼に見られ、恥ずかしさでどうにかなってしまいそうだった。しかし、同じく服を脱ぎ捨てた彼の逞しい肉体に、ぽーっと見惚れてしまう。彼を見上げれば、抱き竦められ唇が重なり合った。
「アドニスくん…っ」
「すごく綺麗だ…」
大きくはないが、形の整った双丘に彼の手が重なる。キメ細かな白い肌は驚く程に滑らかだ。向かい合った体勢で胸を揉みしだかれ、その初めての感覚に身体は反応を示していた。大きな掌が頂を掠めると、羞恥心とは対照的に甘い声が漏れた。「だめ…っ」と条件反射で言ってしまうと、それを本気にしてしまう彼は「やはり、嫌か」と手を離そうとするのだ。すかさず「違うの」と彼女は慌てて説明をする。「だめっていうのは、もっとって意味なの…。いっぱいアドニスくんに触ってほしい…」と、上目遣いで彼を見遣るその眼差しは色気が溢れており、彼は敏感な先端を指の間に挟んだり刺激しつつ、そこに吸い付いてみせた。いつもの彼女からは想像も出来ないくらいに艶っぽく、いやらしいその光景に気分が高揚した。
「アァ…っ。もっとぉ…っ」
彼女を組み敷いた体勢で、彼は彼女の乱れた姿に色欲を煽られ、その瞳にはギラギラとした男の欲が篭っていた。執拗に胸を愛撫され、既に湿っているそこを彼の指でなぞられた。レース素材のショーツに染みを作り、彼の指に付着する程にそこは溢れていた。ショーツが取り去られると、直接彼の指でそこを解され、無意識に腰が揺れていた。「こんなに濡らしていたのだな」と余裕そうに思えるアドニスとは反対に、彼女は火照る身体を持て余していた。そもそも、彼は自分相手に反応してくれるのだろうかと不安が胸を過ぎる。しかし、その考えは全くの杞憂だったのだ。「優しくしようと決めていたんだが、難しいものだな」と腫れ上がった男根がそこに当てがわれ、ゆっくりと挿入される。「痛いようならやめるから、無理をするな」と彼はどこまでも優しいが、彼女は絶対に止めてほしくないと首を振った。「ひとつに、なりたいから…っ。止めちゃだめ」と彼を抱き締め、痛みを堪え、そこには彼のものが根元まで咥えられた。
「全部入ったな…」
「動いて、いいから…ァァっ」
クチュクチュと、粘着質ないやらしい音が静寂な部屋に響く。充分に溢れていたそこは蜜が潤滑油になり、彼の大きなものが出し入れされた。正常位の体位で、ガツガツと腰を振る彼は野性的だが、その眼差しは慈愛に満ちており、名前を愛おしげに見つめていた。何度も彼女の名前を呼び、「好きだ」と伝えてくれる。まるで夢のような時間だと、彼女の瞳からは涙が零れていた。蕩けるような甘い口付けは何度も繰り返され、心も身体もドロドロに溶けてしまいそうだった。痛みすら忘れてしまうのは、舌を絡めた口付けと、感じる箇所への激しい愛撫のおかげか…。玉のように汗が飛び、互いの荒い息遣いを感じる。獰猛さを孕ませた視線を向けられ、優しくも激しく自分を抱く彼の姿に、彼女は胸を締め付けられた。こんなにかっこよくて、大好きな彼に初めてを捧げられた。その事実は何よりも幸せなものだった。
「ねぇ…っ。私、もう…イっちゃいそ…ァアっ」
全て夢だったのかもしれない。恍惚とした表情で、彼に髪を撫でられ、目を細めている彼女は幸せの余韻に浸っていた。「ねぇ、アドニスくん。気持ちよくなれた?」その問いかけに彼は頷き、薄紅色の唇にキスをして微笑む。「名前が可愛すぎて、もう手離してやれない」と。「手離してくれなくていい。私、アドニスくんが大好きだから…」と微笑んだ彼女は彼の腕に抱かれたまま瞼を伏せた―
END