神崎颯馬
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―私の幼馴染みの神崎颯馬は、まるで江戸時代からタイムスリップしてきたかのように浮世離れしている。現に今も、私の目前には馬を連れた颯馬が居る。
「ねぇ、颯馬。馬じゃ目立つから電車に乗って行こうよ」
たまには二人で出かけようよ。と提案したら快く頷いてくれた事が嬉しかったのに、彼相手では前途多難は確実。神崎家の庭で不思議そうな視線を私に向ける彼の真意は読み取れない。「名前殿は幼い頃、我と一緒に馬に乗りたいと言っていたであろう」その言葉で水が溢れだしたように記憶が巡っていく。あぁ、あの頃は颯馬にべったりだったなぁ…なんて感傷に浸る。期待に満ちた眼差しをしている彼と、その愛馬に応えるように笑ってみせた。
「そうだね。馬に乗るの初めてだけど、颯馬と一緒なら安心だ」
先に馬に乗った彼に続いて馬に跨った私は背後から抱きつくような体制。鈍感な彼はこっちの気持ちなんて気付いていないだろうが、高鳴る胸の鼓動が背中越しに伝わってしまいそうで緊張する。しかし、馬が歩き出し、余計に彼の腰に回した腕に力が入った。女子のような風貌なのに、その背中は自分よりもずっと大きく逞しい。
「ねぇ、颯馬。なんだか注目の的になってるね」
道行く人々からの好奇の目にさらされて恥ずかしいやら、ドキドキするやらキャパオーバーの私とは対照的に「我はもう慣れっ子である」とあっさりとした返事をする彼はなんだか狡い。向かう先は夢ノ咲学院近くの海岸で。軽やかに馬を操る彼に只々しがみつくしか出来ず、あっという間に目的地に着いてしまった。
「こういうのって本来なら女性の仕事なんだけどな…」
私が背負っていたリュックの中には、彼お手製のお弁当が。レジャーシートの上でそれを広げて思わず目を瞬かせた。颯馬は私より断然お料理上手だ。味も申し分無い。和で統一されたお弁当のだし巻き卵美味しすぎる。
「すまぬ。我、二人でお出掛けが嬉しいあまり…嬉々として料理を作ってしまったのである」
「こんなにお料理上手なら、お嫁にもらいたいくらいだよ」
冗談で言った事なのにも関わらず本気で捉えたらしい。冗談が通じない相手に軽率にこんな事を言ってはいけない。笑ってすませられる筈だったのに…早鐘を打つ胸を鎮めたくて視線をそらした。
「名前殿を嫁に貰うのは我であって、嫁にくるのは名前殿であろう」
END