鬼龍紅郎
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―付き合っているのにも関わらず、紅郎が手を出してこない事を名前は心底気にしていた。鉄虎が帰った後の空手部の道場では裁縫に勤しんでいる紅郎が居た。二人きりになるには今しかない。と、意気込んで道場に足を踏み入れた彼女の足音に気付いて顔をあげた彼と視線が絡んだ。
「よぉ、嬢ちゃん。俺に何か用事か?」
「用事がないと来ちゃいけませんか?」
裁縫道具を片付けた紅郎は畳の上に座って拗ねたように唇を尖らせる彼女の頭にポンと手を置いて会話を続けた。「嬢ちゃんが来てくれるのは嬉しいけど、俺と居ても楽しくないだろ」と。名前は大声で否定したい気持ちを抑えて、ふるふると首を振った。
「先輩が思ってるよりもずっと、私は先輩を好きです。こうして傍に居られるだけでいいと思ってたのに…」
先輩に触れて欲しくて堪らなくなる。なんて言ったら困りますよね?と、恥ずかしそうに頬を染める名前の隣で彼は顔を綻ばせた。しかし、その一言に紅郎が困っていたのは事実だった。
「可愛い彼女にそんな大胆なこと言われちゃ適わねーな」
「じゃあ…私に欲情してくれますか?」
―紅郎が目を離した隙に名前はブレザーを脱いで、シャツのボタンを全部外していた。否が応でもブラジャーは勿論、胸元が見えてしまう。視界に入ったその光景から瞬時に目を逸らして両手で目を覆った紅郎はそのまま彼女を諫めた。
「こら、嬢ちゃん。道場でそんな格好しちゃいけねぇよ」
「むー。紅郎先輩どうして襲ってくれないんですか?」
大好きな紅郎に襲われたい願望があった彼女はションボリとしながらシャツのボタンを留め直す。服装を正した彼女を恐る恐る見やった紅郎は呆れたようにふぅと、息をついた。
「そんなに拗ねないでくれよ。これでも理性保つの大変なんだから」
「紅郎先輩の硬派なところ大好きですけど、もう少し私に男の欲を向けてほしいんです」
「そうか。嬢ちゃんがそう言うなら、俺だって本気出すからな」
観念したように笑った紅郎は寄り添う名前の頬を両手で包み込んで、艶めく桜色の唇に噛み付くように唇を重ねた。そのまま角度を変えて何度もキスをした。そのリップ音が静かな道場に響いて二人の胸にイケナイことをしているという背徳が募る。
「はァ…ンっ」
「キスだけでこんなに赤くなってる嬢ちゃんには、これくらいが丁度いいのかもな」
「うぅ…紅郎先輩の意地悪」
END