鬼龍紅郎
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-これだけの異常気象なら、自宅では常に下着姿でウロウロしていても仕方ないのではないだろうか。と名前は楽観的に考えるが、夏休みに入ってからというもの…その姿を隣の家の鬼龍紅郎に二度も目撃されているのだ。1度目は洗濯物を取り込んでいる時に同じくベランダに出ていた彼とばったり顔を合わせた。そして二度目はつい先程の出来事である。「作りすぎちまったから」と彼の手料理をお裾分けしてもらったのだが、あろう事か彼女はそのままの格好で玄関の扉を開けてしまった。動揺した彼に「服!服着てこい」と指摘され急いで着替えた彼女は現在、紅郎と自室で向き合っている。
「あー、その…なんかごめんな」
「どうして紅郎くんが謝るの?謝りたいのは私のほうだよ」
見苦しいものを見せてしまって本当にごめんなさい。と、謝罪する彼女に面食らったように彼は笑う。「説教するのは俺の担当じゃないんだが…」と前置いて、「誰に見られるか分かんねぇだろ。もっと気をつけろよ」と優しく叱る彼を相手に、思うところあった彼女だが、取り敢えず素直に謝っておいた。彼女にとって彼、鬼龍紅郎は中学の同級生であり、長年想いを寄せている相手でもあった。そんな彼と自室に二人きりというのはもってこいのシチュエーションだ。そう自覚した彼女が行動に出るのは早かった。彼の隣に移動し、「口開けて」と冷たいゼリーをスプーンで掬い、彼の口の前に持っていく。唇にスプーンの先を当てがうと渋々といった様子で口を開いてくれる。
「こりゃ、なんの真似だ」
「さっきのお詫びだよ」
悪びれも無くそう告げる彼女に、くすりと笑って彼は頭を撫でる。この、妹と同等の扱いには複雑な気持ちが募る。自分を女として見ていないような気がして虚しくなる。だが、それよりも彼女は完全に見落としている部分があった。そして、紅郎は部屋に招かれた時からそれが気掛かりだった。彼の視線の先には、彼の顔がプリントされた扇子が飾ってある。これの他にも部屋には紅月のグッズがちらほらと置いてある。どれも自分のグッズばかり。同級生で隣人の彼女は自分のファンなのだろうか。自意識過剰のようで気恥しいが、この話題に触れておきたかった彼はついに彼女に問いかけた。「お前さんが紅月を応援してくれてるのは有難いんだが、グッズを飾るなら蓮巳のほうがよくないか?」と。
「これを見ても尚、私の紅郎くんへの愛情を疑う気?」
「紅郎くん鈍感すぎるんじゃないの」と彼を一瞥する彼女に、本当は今日出会った時から心を乱されている彼が反論する。「自惚れみたいになるが、それだと名前が俺の事を好きみたいに聞こえるぞ」と。「好きな人だから、下着姿見られても嫌じゃなかったんだよ」と、彼女の発言により、紅郎は自分の思い違いじゃないのか。と返答に困り、はぁ…と息をついた。「昔から、俺の見た目に怖がらずに、懐いてくるような名前の真意が理解できなかった」と当時を思い出すように神妙な面持ちで彼は瞳を細めてそう語った。それに対して、彼女は満面の笑みで想いを吐き出すしかなかった。
「当時から、そんな紅郎くんが大好きだった。でもね、紅郎くんが私を異性として意識してないのはわかってる」
「誰もそんな事言ってないだろ。お前さん意外と鈍感なんじゃねーか?」
END