蓮巳敬人
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―「下着でうろうろするな。はしたない」
蓮巳家のリビングでは下着姿の姉、名前が弟の敬人にバスタオルを被せられたまま説教をされていた。「だって、部屋にパジャマ忘れたんだもん」と弁明しようにも敬人の長々しい説教は続いていく。「普段から露出の多い格好が目立つんだ。名前姉さんは」の次に出てくるのは、「度し難い」の一言だ。早く部屋に戻って服を着たい一心の彼女は弟への反撃を開始した。「敬ちゃんは女子に免疫がないから、こういう格好見るとすぐに狼狽えるよね。童貞かわいい~」と彼をからかうと、眉根を寄せて苛立ちを顕にした彼の顔は赤く染まっていた。
「敬ちゃんって呼ぶな。さっさと着替えてこい」
「敬ちゃんが説教長いから着替えに行けなかったんでしょ」
童貞呼びしたことに反論してこない弟が、本当に可愛くて仕方ない彼女は部屋に戻りながら彼からは見えない場所でけらけらと笑った。自分とは正反対の、生真面目な弟をからかうのは彼女の趣味だったりする。しかし、ツンデレのツンしかない弟に不満があるのも事実。「敬ちゃんをデレさせたい」という独り言が静かな部屋に反響した。
―そんな弟の自分への塩対応にはもう慣れきっていた為、彼のデレは大変貴重だ。ある日の仕事帰り、突然の雨に頭を抱えていた彼女は駅で自分を待ち構えていた予想外の人物の姿に気付いた。急いで駆け寄ると「天気予報を見なかったのか?」と嗜虐的な笑みを浮かべる敬人に傘を手渡された。「敬ちゃん、迎えに来てくれるなんて優しいね」と腕を組むと呆れたように溜め息を漏らした彼に「早く帰るぞ」と促される。だが、名前は一向に自分の傘を開こうとしない。「せっかくだから、相合傘で帰ろうよ」と提案する姉に面食らった彼だが、雨の降る肌寒いこの状況では拒絶することも躊躇われる。広げた彼の傘に入りこんだ彼女は敬人にぴったりとくっついて、にこにこしている。
「そんな嫌そうな顔しなくてもいいでしょ」
「誰のせいだと思っているんだ。度し難い」
相合傘の中で弟の反応窺えば、気難しい表情で自分とは目も合わせてくれない。雨に濡れないように密着しているのだが、体を強ばらせている様子の彼は緊張しているのかもしれない。そんな彼女の鼻腔を掠めるのは、敬人の服から漂う線香の香りだった。だが、その匂いには安心感もある。
「敬ちゃんて、線香の匂いするね」
「なんだと?名前姉さんには言われたくないな」
気付かなかっただけで自分も線香臭いのだろうか。と歩きながら、くんくんと自らの服の匂いを嗅いでみる彼女だが、愛用のボディーミストの香りがするだけだった。「私からは線香の匂いしないよ」と反論するも、「自分ではわからないだけだろう」と意地の悪い言葉が返ってくる。自宅に到着しても彼らの口論は収束することはなかった。
「あのさ、敬ちゃん。デレのないツンデレはツンデレじゃないんだからね?」
「ツンデレ…?何を言っているんだ貴様は」
「姉に向かって貴様呼びは酷いと思うよ。ばか敬人」
END