日々樹渉
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-「うわぁぁぁぁぁ!だから、高いとこ無理だって言ったのに…!」
天祥院邸の上空では英智の妹の名前の絶叫が響いた。彼女の隣には日々樹渉が。彼女は兄に促されるままに渉と共に気球に乗ってしまったことを酷く後悔していた。兄のユニット仲間である日々樹渉の見た目が好みのタイプだっただけに、理想と現実のギャップに溜め息をつきたくなった。「名前と一緒に大空をデートできるとは、なんと素晴らしいことでしょう!アメージング!」と渉はいつものテンションだが、それとは裏腹に「早く降ろしてよ」と名前が涙目で訴えている。足がガクガクと震えている彼女を見かねた彼は安心させるように彼女を腕に抱き、その小さな手を握った。「ほら、ご覧下さい。この絶景」と、真っ直ぐに視線を向ければ、広がる街並みと陽の光を反射して煌めく海が見えた。若干恐怖心が和らいだとは言えど、恐怖心が全くなくなったわけではない。やっとの思いで地上に戻ってこられた名前は笑顔で迎えた兄英智に抱きついた。
「時折、名前の絶叫が聞こえたけど、渉とは仲良くなれたかな?」
「私が怖がってるの見て楽しんでるような変態仮面と、仲良くなんてなれないんだけど」
こんな出来事があったおかげで…英智の妹なのにも関わらず、名前は日々樹渉を天敵と見なしていた。そして、そんな彼女を唖然とさせるハプニングが起こった。その日は休日であり、先日英智からプレゼントされた新しいワンピースに着替えていた刹那…事件は起こった。鍵をかけていた筈の窓が開いている。下着姿の彼女の前には「あなたの日々樹渉です」と薔薇片手に渉が窓から入ってきた。彼が窓から入ってくることなど夢ノ咲では何ら不思議に思われないことだが、状況が状況だった為、彼女は悲鳴をあげ急いで服を着てから兄のもとへと走っていった。
「変態仮面が!私の着替え中に勝手に窓から入ってきたの!」
ぷりぷり怒っている名前を「渉はわざとじゃないから、許してあげなよ」と英智が諌めていると、当の本人が扉から部屋に入ってきた。「着替え中と知らなかったとはいえ、申し訳ございません」と謝罪するが、次の一言に天祥院兄妹は耳を疑った。「責任をとって、私が名前を貰いましょう!」と笑顔で宣言する渉と、愉快げに笑う英智とは対照的に彼女は困惑して顔が引きつっていた。「私の将来を簡単に決めないでよ」と文句を言うも、近寄ってきた渉に肩を抱かれた。逃げ出したいのに兄の圧力のせいで逃げられなかった。そして、彼女に追い討ちをかけたのは他でもない兄の英智だった。
「名前には婚約者もいないし…初めて渉と会った日、かっこいいって言ってたよね」
「それは…見た目だけの話で。変態仮面のこと好きなわけじゃないもん」
「素直じゃないですねぇ。名前は」
拒絶されて簡単に諦めると思ったら大間違いですよ。と微笑む彼は、彼女の顎を掬い、真っ直ぐに視線を絡めた。名前は精一杯睨んでいるが、渉には「そんな上目遣いで、睨んでるつもりでしょうか」と余裕の笑顔でかわされた。妹の荒んだ心境をよそに、英智はふたりを微笑ましげに眺めている。「渉が名前を貰ってくれるなら、僕とは義理の兄弟になるわけだね」「英智のほうが誕生日が早いですから、私は弟になりますね」と、トントン拍子に話が進んでいき、名前は諦めたように溜め息をついた。このまま他の財閥の御曹司との縁談を受け入れるか、渉に婚約者になってもらうか…苦渋の決断を迫られた彼女は、後者を選択した。兄の英智に劣らない王子様感のある渉の真摯な発言とサプライズは、彼女にとってはもはや反則技だった。
「必ずや名前を幸せにしてみせましょう!あなただけの日々樹渉になる覚悟は出来ていますよ」
「ねぇ、何処から出したの…?その指輪」
END