日々樹渉
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―「顔色が悪いですね」なんて言われて否定すれば、彼はあから様に顔を曇らせた。体育の授業も寝不足のせいか億劫に感じるし何かと絡んでくる日々樹渉を受け流して50m測定のスタートラインについた。この日差しのせいか、見据える先の景色が歪んで映る。フラフラとした感覚に体中の力が抜けていくと同時にクラスメイト達の喧騒が遠く聞こえた。
◆
私を抱き上げて保健室まで運んでくれたのは誰だろう。保健室のベッドの上で目を覚ました私を心配そうに覗きこんだ人物があまりにも予想外で目を瞬かせた。
「なんでアンタがここに居るの?」
「あなたの日々樹渉です」
駄目だ。会話が通じねぇ。日々樹渉ほんと苦手だ。よく考えたら、今は授業中なので日々樹に教室に戻るように促した。「後でもう一度来ますから待っててくださいね」なんて台詞を残して、彼は長い髪を靡かせながらこの場から立ち去った。
◆
その後に、佐賀美先生が来て、私が貧血で倒れたという旨を説明してくれたのだが、驚きの事実に言葉を失ったのはその次の瞬間だった。
「あの日々樹が血相変えてお前を運んできたもんだから、吃驚したよ。アイツ、お前が目を覚ますまで此処に居るって宣言してさ…」
アメージングとかいつもうるさくて苦手意識すら抱いていた相手に助けられたなんて…どうしたらいいのか分からず曖昧な相槌をうつ。今すぐにでも日々樹にお礼を言いに行きたいのに、体はだるくて重くて動いてくれない。今日一日大人しくしているように言われて、もうひと眠りしようと瞼を閉じると浮かんでくるアイツの顔。あの綺麗な顔が近付くと、彼の本質を知っていても見惚れるんだよなぁ…なんてぼんやりと考える。
日々樹って案外いい奴なのかも…なんて見直していた刹那「元気が出るよう鳩を出しましょう」なんて声と共に私の目の前で鳩が飛び回り、いつもの調子で現れた彼を見て先程までの想いが泡のように消えていくのを感じた…。
END