伏見弓弦
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―桃李くんには奴隷と呼ばれているけれど、姫宮家に招待された私は賛嘆の溜め息を零していた。お屋敷は予想以上に広い。私の手を引いてご満悦の桃李くんとは対照的に執事の彼には手間を掛けさせてしまっている。彼、伏見弓弦と私はクラスメイトだ。丁寧な口調と品のある仕草に私は魅力を感じていた。庶民の自分とは住む世界が違うのだと分かっている。
「坊ちゃまの我侭に付き合わせてしまい申し訳ございません」
彼はお茶を煎れてくれながら私を気遣う様に唇に笑みを乗せた。ふとした瞬間に自分自身に向けられた笑顔に胸が高鳴る。彼に見惚れてぽーっとしていた私に桃李くんから訝しげな声がかけられた。
「名前ってば、弓弦ばっかり見てるけどどうして?」
本音を告げられたらどんなに楽だろうか。こんな曖昧な微笑みを滲ませる私を彼はどう思っているのだろうか。こんなに近くに居るのに、酷くもどかしい。
―「キングも名前に懐いてるみたいだね」
所変わって、中庭で桃李くんの愛犬と戯れているがそれより気掛かりなのは彼の態度だ。少し離れた場所でこちらの様子を見守っているように見える。どうかしたのか心配になった私に桃李くんから一言「弓弦は犬が苦手みたいだから、ほっといていいよ」と衝撃の事実が。
「弓弦くんに苦手なものがあるなんて意外だね」
桃李くんの愛犬が私から離れた隙に彼に駆け寄った。恥ずかしげに眉を下げる彼はいつもとは違い、可愛らしく瞳に映る。
「名前さんに構ってもらえるキングが羨ましい…なんて、わたくしはどうかしていますね」
「そんな事ないよ。私も弓弦くんに大事にされてる桃李くんを羨ましいと思ってるんだから」
気恥ずかしさを誤魔化す為に笑い合う。互いに、こんなヤキモチを焼いていたなんておかしいけれど何故だか幸せな気持ちにさせられた。傍(はた)からみたら何気無い事でも私にとっては大きな前進だ。
「なに二人だけで良い雰囲気になってるのさ~」
END