天祥院英智
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
-「お兄ちゃんのお見合い相手が桃李くんの妹ちゃんってどういうこと!?」
「なんでそんな怒ってるんだよ」
というか、部外者が勝手に事務所内に入ってくるな。という桃李の台詞に被さって彼女の「お兄ちゃんは私のなんだからね!」というブラコン発言が響いた。スタプロ内に乗り込んできたかと思いきや、桃李を見つけるなりすごい剣幕で詰め寄ってきたのは何を隠そう天祥院英智の妹の名前だった。彼女は自他ともに認めるブラコンであり、本日の怒りの矛先は兄の見合いの相手だった桃李の妹…ではなく桃李だったのだ。
「名前さんのお気持ちもお察しいたしますが、紅茶でも飲んで落ち着いて下さいまし」
「弓弦くん…っ」
桃李相手には強気になれる彼女も、弓弦の前では極端に大人しかった。上品に紅茶を嗜みながらもグチグチと言葉が止まらないのは女子特有のものだろうか。「そもそも…お兄ちゃんの見た目と、天祥院の遺産目当てで近付いてくる令嬢が多すぎるのよ。その度に私が妨害してるんだけど」と内情を暴露する彼女に、桃李も「それは知らなかった」と少し同情的になっていた。
「病弱なお兄ちゃんが頑張りすぎて体調を崩さないように見張ったり、体にいい食べ物調べて料理したり…」
「私の影の努力…お兄ちゃんは全然気付く素振りがない!」と、夕食で彼女の手料理を紛れ込ませても英智は気付かなかったという嘆きを聞いて、弓弦はわかるわかると頷いていた。そんな状況下、唐突に開かれた扉から姿を現したのが彼女の溺愛する兄英智だった。その姿を視界に入れた途端、席を立ち一直線に英智の元に走っていく。実を言うとずっと留学していた為、英智と会うのは久しぶりだったのだ。
「お兄ちゃん会いたかったよぉ…っ」
「うん…おかえり名前」
それはそうと、先程の発言は本当かな?と、妹の奮闘を知らなかった英智は気まずそうに眉を下げて小さく息をついた。ぽんぽんと頭を撫でてやればデレデレ…いや、嬉しそうに表情を緩ませる妹が可愛い。何を見せられているのだろうか、と空気を読んで桃李と弓弦は応接室を出ていった。ゴロゴロと喉を鳴らす子猫のように英智に甘える彼女は「お兄ちゃんがデートしてくれたら許す」とボソッと呟いた。
「そんなことで許してくれるのかい?いいよ。デートしようか」
「この辺の街をブラブラするだけでいい」
街ブラデートをしながら英智が「聞いたよ。敬人にお説教されたんだってね」とからかうように笑う。ESビル内に入った途端に出会した人物こそ、兄の幼馴染みだったのだが、名前は昔から敬人と説教以外の言葉を交わしてこなかったせいで彼のことが少し苦手でもあった。本日も勝手に建物に入ったことで説教されたのだが…その敬人からの情報で、英智は名前が来ていると知ったというわけだった。
「名前の手料理、また作ってくれないかな?今度こそ気付いてみせるから」
-「名前どうしたの?眠れない?」
「寒いから添い寝してあげる!」
バスルームから部屋に戻ると、英智のベッドを陣取っている名前の姿が。確かに今夜は雨が降っているせいで少し肌寒かった。名前がいつまでも兄離れができないのは自分のせいなのではないか。と英智は複雑な兄心を抱えたまま、ベッド上で彼女の瞳をジッと見つめた。兄妹とはいえ、この距離感はいかがなものか…と、英智は名前に部屋に戻るように告げた。
「突然スタプロに来た理由も、僕に会う為じゃなくて、弓弦に会いたかったんじゃないのかい?」
「違うもん。私の一番はお兄ちゃんなの」
「僕は二番でいいよ。それに、名前を口説きにくる御曹司よりも、弓弦のほうが安心だからね。兄としては応援するよ」
因みに、近々開かれたパーティーでも弓弦は桃李命であり、名前とのダンスに興じてくれはしなかった。その代わり、英智の不在を聞きつけて颯爽と現れた人物がいた。
「今夜は特別に僕の相手をさせてあげるね。英智くんが不在でよかったね!」
「えぇ…(お兄ちゃん助けて)」
END