伏見弓弦
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-「何でもする…などと軽々しく口にするべきではありませんよ」
クイッと顎を掬われ、値踏みするような視線で見つめられてゾワゾワした。彼の名は伏見弓弦。私の推しだ。なんと私がトリップした先はあんスタの世界であり、成人済みの社会人だった筈が、某高校生探偵の漫画よろしく体が若返って高校生の姿に戻っている。姫宮邸の庭で倒れていたらしい私は庭師の方に見つけられ屋敷に運び込まれた。目を覚まして「ここはどこ?」なんてキョロキョロしていた私の前に現れたのが弓弦くんだった。敷地内に不法侵入した不審者だと疑われても仕方がないのだけど、持ち物は何も持っていなかったしとりあえず疑いは晴れた。「何でもしますから、ここで働かせてください」と頼み込んで、無事使用人として雇ってもらえることになったのだ。
「名前さん。あなたはまた…」
弓弦くんは怖い。帰宅した桃李くんが「頑張ったご褒美に、ぎゅっとして」と私に抱きついてきたからハグしただけなのに。「坊っちゃまを甘やかしすぎですよ」と注意されてしまい、私は素直に謝った。だって桃李くん可愛いんだもん。新参者の私が坊っちゃまに厳しいこと言えるわけないのにな。桃李くんは私のことを姉のように接してくれるけれど、それとは裏腹に弓弦くんとの距離は全く縮まらない。使用人の仕事の殆どはメイド長さんが教えてくれたし。弓弦くんは桃李くんの付き人だから私に直接仕事を教えてくれる機会は少い。
「そんなにわたくしのことが怖いですか?」
「いえ。怖くなんて、ありませんよ」
嘘だ。液晶画面越しに見ていた弓弦くんは大好きだったけれど、実物の弓弦くんはなんか怖い。好きだけど、とてもアプローチなんか出来ない。幻滅されたくないし、弓弦くんのご尊顔を毎日拝めるだけで幸せなんだもん多くは望まない。しかし現在、「紅茶の淹れ方はわたくしがお教え致しますね」と弓弦くん直々に紅茶の美味しい淹れ方を指導してもらっている。ドキドキして顔が熱い。弓弦くんに嫌われたくないからめちゃくちゃ真剣に頑張った。教えてもらった通りに、私が初めて淹れた紅茶を口にした弓弦くんに笑みを向けられ、私はカチコチに固まった。
「まだまだ練習していただく必要がありますが、まぁ及第点でしょう」
「ありがとうございます。もっと練習します」
-姫宮家の愛犬キングのお世話も私の仕事であり、実家で犬を飼っていたからその知識が役に立っている。そういえば、弓弦くんは犬が苦手なんだよな。キングの全身をブローしてブラッシングを終え、片付けとお風呂の掃除をしていた私は誤ってシャワーを噴射してしまい、ずぶ濡れになってしまった。メイド服ではなく、キャミソールとショートパンツという濡れてもいいように着ていた服なのだけど。早く着替えて次の仕事へ…と考えていると脱衣場の扉が開けられた音が。私が遅いから誰か様子を見に来たのだろうか。なんて、能天気なことを考えている場合じゃなかった。相手があの弓弦くんだとわかったからだ。
「上から下までずぶ濡れじゃありませんか」
弓弦くんがいると着替えられないんですけど。なんて濡れた格好のまま視線を彷徨わせていたら、すぐ側に来た彼に耳元で囁かれて動けなくなった。「何でもする…そうでしたよね?」と。弓弦くんの声に全身が痺れてしまったようで、瞬きする間も与えられず唇を奪われた。胸に彼の手が重なる。息が乱れるような淫らな口付けと、同時に左胸を揉みしだかれて生理的な涙が頬を伝った。弓弦くんにだったら何をされてもいい。なので、私に抵抗するという選択肢はなかったのだ。
「なぜ抵抗しないんですか?」
「弓弦くんだからいいの」
「困った方ですね。襲われている自覚がないのでしょうか」
責めるような眼差しで見つめられる。弓弦くんにキスされて触られたせいでお腹の奥がキュンとする。私から手を離してしまうのは、もうこれ以上は何もしないから?なんて、物足りなくて自分からキスをねだる。もっと触られてめちゃくちゃにされたい。ぎゅうっと抱きつくと、お腹に固いものが当たる。反応してくれている。弓弦くんにだって人並みに性欲はあるらしい。「ねぇ、弓弦くん。続きしないの?」と、はしたなく煽ってしまうのは私の中の女の部分が彼を求めているからだ。
「はァ…っ。ユヅ、 ルく…っ」
濡れたキャミソールの上から胸の突起に吸いつかれて甘噛みされたり、もう片方も指でグリグリと押し潰される。壁に押さえつけられて、大好きな弓弦くんにこんなにエッチなことをされて興奮しない筈もなく。「濡れた服は全部脱ぎましょうね」と一糸纏わぬ姿にされ、彼の指を出し入れされながら既に反応しきった胸の頂をぺろりと舐められ身体を震わせて絶頂を向かえてしまった。「襲われているのに、こんなに濡らして…」と呟く弓弦くんはやっぱりドSだ。私ってMなのかな…。
「弓弦くん。見ないでぇ…っ」
食い入るようにじっと見つめられて、泣きたくなった。大好きな弓弦くんに胸を見られて恥ずかしい。弓弦くんならきっと、大きなベッドの上で優しく抱いてくれるんだろうな。という私の理想は呆気なく崩れ去った。「そんな顔をしても男を煽るだけですよ」と、嗜虐的な言葉を囁かれて裸のまま抱きしめられた。弓弦くんは優しくない。むしろ意地悪だ。大好きな人との初めてをこんな風に奪うんだから。鎖骨に滑らされた唇が、下に降りてきて敏感なそこを執拗に舐め回されて谷間に顔を埋められる。
「ァ…っ。舐めちゃ、だめェ…っ」
「感じているのでしょう?こんなに溢れて…いやらしい身体ですね」
「んん…っ。や、ァン…っ」
洗面台に手をついてお尻を突き出した体勢。所謂立ちバックで弓弦くんのものが沈められて。ガツガツと腰を打ちつけられると、本当に犯されているみたい。こんな淫らな行為から目を背けたいのに、鏡に全て写し出されてしまう。脱衣場にはパンパンと肌と肌がぶつかる音が反響して、いけないことをしているということを自覚させられる。指でクリクリと胸を愛撫されて、愛液が溢れ奥がキュウっと締まる。
「ふ、ァ…っ。それ…っ、やァ、ンン…っ」
腰を掴まれて激しくピストンされて気持ちよすぎてどうにかなってしまいそうだった。時折零れる弓弦くんの声が色っぽい。やがて、彼の白濁が私の太腿を汚した。そのまま浴室に連れていかれ、綺麗に洗い流された。弓弦くんは執事服を着ているのに、私は裸を改めてじっくりと見られて恥ずかしかった。満足げに唇に弧を描いているところを見るに、弓弦くんはドSすぎる。
「弓弦くんがこんなにエッチだなんて…」
「おや。幻滅しましたか?」
「幻滅なんてしてないです…っ」
「そういう名前さんこそ襲われて悦ぶとは、とんだ淫乱なのですね」
涼しい顔でバスルームを出ていく弓弦くんを、私はメイド服に着替えながら見送った。何事も無かったような振る舞いをされると、なんだか悲しくなった。さっきまで私を映していた彼の瞳には、もう坊っちゃましか映っていないのだから。
END