天祥院英智
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
-「おはよう。名前ちゃん」
高級車から降りてきた彼は、本当に嬉しそうな笑顔で。しかもぽんぽんと頭を撫でてくるのだから、彼女は気後れして無言になってしまった。夢ノ咲学院の皇帝こと、天祥院英智は何故か名前のことを溺愛していた。彼女からすれば、こんなに絡まれる理由なんて分からず、ただただ困惑していた。そして現在、その英智から無茶ぶりをされている。「私は桃李くんじゃないんですよ。それに、きっと重たいし…」と本日も名前は英智に困らされていた。「僕の膝の上においで」と何食わぬ顔で告げられたからだ。お手伝い出来ることがあれば。と生徒会室に訪れていたのだが、そこには会長の英智しかおらず、今に至る。
「気にしすぎだよ。それとも、ただ単に嫌がられているのかな?」
「そういうわけじゃ…ないですけど」
なんせ顔がいいのでずるい。彼女は彼のしょんぼりした表情に弱かった。「仕方ないですね。今日だけですよ」と、英智に言われた通り彼の膝の上に座る。その途端、腰に回された腕が彼女を優しく抱きしめた。そして、晒された白い太腿を撫でられた。「抵抗しないんだね」と英智は意外そうに笑っていた。「不思議と、抵抗しようという気は起こりませんね」と言う名前の気持ちは既に英智に傾いているのかもしれない。「可愛いね」と褒めてくれる声が好きで、焦がれるような眼差しにドキドキした。
「そうなんだ。名前ちゃんはいい匂いがするね」
肩口に顔を埋めた彼がそう呟く。お金持ちの御曹司で、もしかしたら許嫁だっているかもしれないのに。こんな、恋人にするようなことをされたら期待してしまう。他の生徒会メンバーに見られたらこの状況をどう説明すればいい?副会長が来てくれれば私は解放される筈だ。なんて、ここから逃げたい。と先程までは考えていた。しかし、今では彼の温もりが愛おしくて、もう少しこのままでもいいかも。なんて願ってしまうのだ。
「僕はね、名前ちゃんと同学年…同じクラスの凛月くんですら羨ましいんだよ。授業中だって君と同じ空間にいられていいなぁってね」
「なんであんずじゃなくて私なんですか?」
もう一人のプロデューサーのあんずの方が可愛くて人気もある。と、彼女は疑問に思っていたのだが、英智は「何も分かってないね」と呆れていた。彼女をぎゅうっと抱き竦めて彼は優しく告げる。「他の誰でもなく、名前ちゃんがいいんだ」と。その声に、胸を締め付けられた。本気にしていいのだろうか。と、何も言い返せないでいると、だし抜けに生徒会室の扉が開かれた。現れたのは副会長の蓮巳敬人で。彼はこの光景を見るや否や「度し難い」と激怒していた。
「英智…貴様が校内の風紀を乱してどうするんだ」
「僕が名前ちゃんを独り占めしてるのが、そんなに気に食わない?もしかして…」
「敬人も名前ちゃんが好きなの?」という台詞は彼の「度し難い!」という怒号にかき消された。そして、気付けば英智の膝の上はもぬけの殻になっていた。生徒会室から…そして英智の腕の中から逃げ出した彼女はほっと胸を撫でおろしていたが、当の本人は「あ〜あ。逃げられちゃった」と嘆いていたとか。
END