スタイリスト
名前
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―「やっぱり肩こり酷いねぇ」
「なに勝手にマッサージを始めてらっしゃるんですか」
副所長の茨くんが肩こり辛そうな気がしていたから、ずっとマッサージしてあげたかった故に色々とこじつけてついに実現した。明日は音楽番組に出演するEdenのヘアメイクを任されているし。「コンディション万全にしておこう」とほぼ無理矢理な感じで提案したらイけた。若いのにこんなに肩パンパンとか働きすぎだな。
「名前さん!当たってる。当たってますってば」
「ちょっと我慢してください」
マッサージに集中しすぎて胸当たってたみたいだけど、これはしょうがないな。わざとじゃないし。人気アイドルがこんな疲労溜まってるなんて…。それにしても、あの茨くんがそんな照れ顔するんですね。(メディア向けのキメ顔しか見たことなかった)
「名前さん。宜しければ、今回のお礼に自分とディナーなんていかがですか」
「いえいえ、そんなお気遣いなく!」なんて、速攻お断りしてしまうのは私の悪い癖かもしれない。大人気アイドルEdenのメンバーから食事のお誘いをされたんだから普通ならこんなあっさり断らないだろうけれど、私は茨くんと二人きりの空間に耐えられる気がしない。今みたいに仕事の一環ならアリだけど。なんて、Eden相手に尻込みしていた私はこの後クセ強メンバーから洗礼を受けることになる。
「Eveの曲を歌ってるってことは、僕のファンなんだね!?」
「さっきOSENで流れてたから、つい」
副所長室を後にして、鼻歌を歌いながら廊下を歩いてたらEdenのメンバーに絡まれた。初めて絡んだけど、日和くんすごいグイグイくるな。「ファンじゃないんですけど」と言わせない勢いに圧倒されていたら、漣くんに助けられた。なんだろうこの安心感。「おひいさんがすんません」とか謝ってくれたしいい子だ。さて、私はアイドルに囲まれるといたたまれなくて逃げ出したくなる性分なんだけど、明日は彼らのヘアメイクを控えているから、さぁ大変。
-「名前さんはジュンのファンなの?」
私の友人(Eden箱推し)が漣くんのことをジュンジュンと呼んでいたからちょっと確かめてみようと思ったら盛大に誤解されてしまった。コズプロで働いてはいるけれど、好きなアイドルがいるわけじゃないんだよなぁ。さて、私は凪砂くんが美形すぎて戦々恐々としていたんだけど、何故か好意的に話しかけられて面食らいましたよ。
「私ね、今日初めて名前さんにメイクしてもらえて嬉しいんだ」
「いや〜恐れ多い。なんかありがとうございます」
「それに名前さんは以前、私に美味しいチョコレートをくれたし少しは仲良くなれたと思ってるんだけど」
貰い物のベルギー産チョコレート、美味しかったから近くにいた凪砂くんにおすそ分けしただけなのに。そんな友好的に思われてたとは意外でした。彼らはいいとして、彼はどうにかならないものか。と、茨くんのメイクを始めて頭を抱えたくなった。昨日あれだけマッサージしてコンディション整えたというのに、徹夜したのか疲れた顔してる。
「茨くんは働きすぎなんじゃないですかね」
「そうでしょうか。名前さんは自分の機微によく気付いて下さいますね」
そしてまたお食事に誘われましたけどね。そんなに茨くんは私とディナー行きたいのか。物好きだな。なんて、全然乗り気じゃない私と茨くんの会話を遮るように現れたのは日和くんで。「名前ちゃんを口説くなんて抜けがけは良くないね!」と怒っていた。私、口説かれてないと思うんですけどね。
「俺も同意見っす。なんか、あの茨が本気っぽいんすよねぇ」
「茨に名前さんはあげないよ」
茨くん絶対口説いてないだろうに。仕事の延長だと思いますが。と、現実逃避していたのだけど、音楽番組終了後に本当にディナー連れていかれたんですよ。夜景の見えるレストラン初めて来た。茨くんは仕事の話と見せかけてめちゃくちゃ褒めてくるから落ち着かないし、なんか胡散臭いんだよな言葉が。(失礼)
「名前さん程の実力者が業界を離れて良いのでありますか?」
美容業界に未練はないんだよなぁ。免許持ってるのに勿体ないけど。立ち仕事しんどいし。実は私、前職の時に作り笑いのしすぎで表情筋固まって大変だったんですよね。「自分を偽るのに疲れた」と愚痴みたいな話しなのにちゃんと訊いてくれるとか優しいな。勝手に性格悪いイメージ持ってましたが。(失礼)
-「ここは男が払うものでしょう?」
「うちの事務所のアイドルに、奢ってもらうわけにはいきませんよ」
奢られるの好きじゃないからトイレ行くふりして勝手に会計を済ませておいたんだけど。店を出てから茨くんに咎められ、「では、次回は自分が支払うということで」と、まさかの次回に繋げてしまった。ミスったなぁ…。しかしながら、翌日…今日のことがEdenのみんなにバレて、私の自宅にEdenが大集合することになるとは露知らず…。
……To be continued