天城燐音
名前
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-「相変わらず釣れねーなァ。名前ちゃん」
ふーんだ。セクハラ野郎なんかに心許してたまるもんか!と、自分に声をかけてきた目の前の男を睨んだ。「睨んでるつもりかァ?」とニヤニヤ笑われ、その場から足早に立ち去る。「あぁ、もう!なんなの、あの人!」と、更衣室に誰もいないのをいいことに大きな独り言を呟く。私はCrazy:Bのリーダー天城燐音のことを天敵とみなしている。以前、ほぼ初対面である私に彼が放った言葉が原因なんだ。「疲労感MAXな燐音くんの為に、ぱふぱふしてくんね?」というセクハラ発言にドン引きすると同時に何だか恥ずかしくなってあの時は走って逃げた。ド●クエよろしく軽い感じでそんなことを言われた。
「うえーん。ニキくん助けて」
「また燐音くんっすか?」
厨房にいた同僚椎名ニキの腕にしがみつく。ニキくんも日頃から被害にあっているぶん、私の気持ちも分かってくれている。あの男はセクハラ野郎でありギャンブル野郎らしい。関わらなければ大丈夫。と思っているのに、出会す度に絡まれるので無視出来ない。そもそも、あの時だって重たい酒類を運んでいた私を偶然見つけた彼が代わりに運んでくれたのだ。最初こそ、なんて親切なアイドルなんだ。と思ったのに…運び終わった途端に例の発言が飛び出したものだから台無しだ。そりゃ私だって「何かお礼させて」と感謝の意を示したけどさ。同じユニットに所属してるのに、ニキくんとは大違いだな。なんて、彼に頭をぽんぽんしてもらって慰められている中、ぼーっと考えを巡らす。
「燐音くん、名前ちゃんのことが好きなんじゃないっすか?」
「それはない」
好きな人にちょっかいを出したくなる。って小学生男子か!「この前知り合ったばっかりなのにそんなわけないじゃん」と告げるや否やニキくんに笑われた。「名前ちゃんが嫌ってるの、燐音くんは気付いてないっすからねぇ」と。あ~やだやだ。あんな奴のことなんか考えたくないのに。買い出しに行こうと歩いているとばったり遭遇してしまったし、話しかけられて「これやるから機嫌直して」と板チョコを差し出された。この男から何か貰うなんて気が引ける。ていうか、これってパチンコの戦利品ってやつなのでは?こんなことで機嫌が良くなったりしないけど貰っておこう。後でニキくんにあげるし。彼をじっと見上げると、嬉しそうな笑顔でこちらを見つめているものだから何だか調子が狂う。胸がザワザワするのは何故だろう。
「なんですか?」
「いや…名前ちゃん可愛いなって思っ、」
「私、買い出し行く途中なので失礼します」
あ~やだやだ。思わず腹パンしちゃったじゃないか。誰彼構わず口説くチャラ男め。少しだけ警戒心を緩めたこと、そして可愛いと言われて嬉しいと思ってしまった自分を恥たい。奴が私を好きだなんて絶対ない。ニキくんの勘違いだな。こんなに可愛くない態度ばかりとってるし大嫌いな筈なのに、コンビニで彼が表紙を飾る雑誌を手に取ってるなんて…。しかもそれを本人に見つかって尋問まがいな状況に陥っている。「そんなに俺っちが好きなのかァ!両想いだな!」とか言われて固まった。さっさとお会計をして店を出る。「この雑誌、HiMERUくん目当てで買っただけですから!」と、捨て台詞のように告げて。
-「話が合うじゃねェか!結婚しよう」
うーわ。また初対面の女の子口説いてやがる。と、ドン引きしている私は物陰に隠れつつコソコソとその場を後にする。天城燐音やっぱりチャラ男だな。と確信して何だかがっかりした。褒めてくれたのも、板チョコくれたのも全てチャラになりそうな印象の悪さである。雑誌の特集で写真だけ見てる時はかっこいいじゃんと思ったけど。やっぱないな。HiMERUくんしか勝たん。と、HiMERUくんを探してキョロキョロしていると前方に影が落ちた。というか、立ち塞がって妨害された。「名前ちゃん見ーっけ!」と、声が聞こえた途端に走り出した…いや、無理だった。首根っこ掴まれて顔を突き合わせることになった。「逃げることないっしょ?燐音くんかなしー」と、しょんぼりした顔で言われると心が痛…いやいや、騙されるな私。相手はセクハラ野郎だぞ。と…ここでHiMERUくん発見!急いで背中に隠れる。状況が飲み込めていないまま巻き込んでごめんなさい。
「女性をいじめるなんて最低なのですよ」
「違うって!いじめてたわけじゃなくて…」
天城が必死に弁解している隙に私は逃げさせてもらった。HiMERUくんありがとう。そんなことがあった本日の帰り道、事務所を出たところで捕まった。なんで天城がそのことを知っているんだ。私がストーカー被害に遭っていることは女性スタッフの一部とニキくんしか知らない筈なのに。「ニキから聞いたんだけどよ」と、「俺っちが家まで送り届けてやっから安心しろ」と、とんでもない事になった。なんでニキくんじゃなくて天城なんだよ。「いいから!大丈夫だから。一人で帰れるし」と、歩き出すと横にぴったり付いてくるじゃないか。昼間あんなことがあったのに、私と関わるの嫌じゃないのかな。
「だーかーらァ、何かあってからじゃ遅いんだよ!」
「せっかく心配してやってんのに」と文句を言われる。そもそもストーカー被害だって気のせいかもしれないのに、天城を頼りたくないし借りを作りたくない。私の心境なんてお構い無しに手を握られた。振り解きたいのに、ぎゅっと握って離してくれない。手が大きいな。とか、あったかいな。とかこんな奴相手にドキドキしたくないのに無性に意識させられて泣きたくなる。「ねぇ、やっぱりストーカーなんて私の勘違いだったんだよ」と自分自身に呆れつつ、申し訳ないなと天城を見上げると同時にグイッと手を引かれて気付けば彼の胸に飛び込んでいる状態で。「ねぇ!なにすんの!?」と声を上げると口を塞がれた。「今、そこに怪しい男がいたんだよ。こっち見てたし、絶対あぶねェーよ」と、耳元でコソッと告げられる。私の自意識過剰じゃなかったみたいだ。
「もうやだ。天城に迷惑かけてるし」
「迷惑じゃねェよ。俺っちは名前ちゃんが危ない目に遭うのが嫌なだけ」
「私みたいな可愛くない女ほっとけばいいのに」
優しくしないでよ。と、口では悪態をつくけれど、私は天城とどう接したらいいか分からなくなってるだけだ。「好きな娘に優しくしたらだめかァ?燐音くん名前ちゃんのこと大好きなんだけど」とか、もうやだ。「趣味悪いんじゃない?」なんて、可愛くない自分が嫌だ。「いい加減、素直になったら?」と私の心に気付いている天城はもっと嫌だ。
「天城っていいやつだね」
「そこはさぁ、燐音くん大好き!って言うとこじゃんよォ」
END