HiMERU
名前
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
※前半はHiMERU視点
―「私と別れてください!」
「絶対嫌です」(即答)
「私も嫌です。アイドルが恋愛なんて、HiMERUくんからしたらデメリットしかないじゃないですか」
このやり取りも何度目になるのか。言われる度に結構傷付いているのですよ。俺はこんなにも惚れこんでいるというのに、名前さんはきっぱりと別れ話を切り出してくる。確かに…好きになったのも、告白したのも俺からですが、今では両想いでお付き合いできていると思っていただけにショックです。
「私がHiMERUくんから離れようとしてるの、わからない?」
「他事務所が人手不足で駆り出されているだけなのでしょう?」
人手不足の為にNEW DIMENSIONに短期移籍している彼女は、一連の行動は全て俺と離れたいが為と告げる。絶対に他のアイドルにちょっかいをかけられたに違いない。と、後ろから抱き竦めれば、冒頭の可愛くない台詞が飛んできました。つっけんどんな態度で俺の腕を振りほどいてスタスタと歩いていってしまうその背中を追い、隣に並ぶ。「なんで星奏館に帰らないの?」と彼女が。夜の冷えた空気と相まって冷ややかに感じました。
「合い鍵を貰っているので、HiMERUを遠ざけても無意味なのですよ」
独り暮らしをしている彼女の部屋の中ならば遠慮する必要もない。部屋に入るなり正面から抱きしめた。俺の腕の中にすっぽりと収まってしまうところ、抱き心地の良さ、ムッとした顔…何もかもが愛おしい。突き放すようなことをされても、ガードが甘く、簡単に俺の手に捕まってしまうところが可愛い。可愛すぎる。仕事着を脱ぎ捨てて下着のような格好になるのも俺に気を許している証拠。警戒心がなさすぎるのですよ。
「距離!近いんですけど…っ」
「そりゃあHiMERUは名前さんの恋人ですから。こうする権利はあるでしょう?」
「もう…っ!HiMERUくんは私には勿体なさすぎるの…っ」
嫌がられると何だか可哀想になって、だいぶ距離を置いてベッド上で横に座ったのですよ。抱きしめても抱きしめ返してもくれず、口付けの一つもさせてもらえない現状。彼女の言うように別れるべきなのでしょうか?互いに視線を彷徨わせ、無言の時が流れる。
「その雑誌、HiMERUが載っているものですね」
「べつにHiMERUくん目当てで買ったんじゃありません」
「北欧インテリア特集だったから」と、彼女の言うように少しはそのページも掲載されているが、その他は若手女優のインタビュー記事だったり彼女の趣味ではなさそうなブランドのものだ。HiMERUに関心がある様子からするに、別れたいなんて本心じゃないのですよ。HiMERUは推理が得意なのです。
「俺は名前さんのいない世界なんて、考えられないのですよ」
「いや、大袈裟。一度離れてみたら目が覚めるのでは…?」
◆
―「副所長が呼んでるとか絶対嘘じゃん」
わざわざ7階まで降りてきて私を連れ戻すかね。茨くんが呼んでるとかいうのも嘘なんだろうけれど、私は律儀にコズプロ事務所までHiMERUくんに同行した。エレベーターの扉が閉まった途端に抱きしめられて唇奪われるし、HiMERUくん通常運転すぎる。しんどい別れたい。
「相手鳴上くんだよ?絶対恋愛には発展しないじゃん」
たとえ相手がお姉ちゃんな鳴上くんでも、私が他の男と仲良くしているのを良しとしてもらえない。こんな美形がメンヘラ化してきてるのはよくないし余計に別れたほうがいいと思う。本日、Knightsの朔間凛月くんに絡まれて膝枕させられたなんて言ったらHiMERUくんが発狂しそうだから絶対に言えない。
「メルメルに連れ戻されただけで、正直…ニューディ事務所のほうが仕事しやすかったです」
「HiMERU氏は後ほど説教ですな」
私をコズプロに呼び戻してきた一連の行動に、茨くんがちょっと引いてたぞ。だからこそ、一ヶ月間はニューディのほうを手伝いに行っていいと送り出してくれたのだろうか。HiMERUくんと会わなくていいと思うと少し心が軽くなる。行き交う人混み、賑やかな歓楽街、駅前の大きな道路と揺れるライト。一人のほうが何かと楽でいい。見境のないナンパなのかキャッチなのか、それすら煩わしく思える。別れたいと思っているのに、声を聞くと安心するなんて馬鹿げている。もう自分の心がわからない。
「HiMERUが傍にいないと、悪い虫が寄ってくるのですよ」
「あったかい…」
HiMERUくんはESからずっと私の跡をつけてたんだな。あんな雑なナンパなんて、HiMERUくんがいなくたって対処できたのに、大袈裟に守ってくれたのが嬉しかった。上着を肩にかけて、私の手を握って歩き出す彼の手を握り返す。男らしさはないけれど、私よりも大きな手。
「離れてみたら、改めて名前さんの可愛さは異常だと実感させられました」
「用もないのに他の事務所来ないでほしい」
END