HiMERU
名前
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-「このファンレター…名前が書いたものでしょう?」
猫柄の便箋を手に、HiMERUくんがずいっと詰め寄ってくる。HiMERUくんが直々にファンレターにお返事していると知ってから、私は密かに彼にファンレターを送っている。古参ファンではない。もしそうならコズプロになんか就職できなかっただろう。HiMERUくんとお付き合いするようになってから、定期的にファンレターを送っていたのだ。一般的なファンっぽく書いたつもりなのに、なんでバレたんだろう…?
「あなたのファンレター…いつも途中からラブレターになっているのですよ」
「私が書いたという証拠は…?」
「まず…HiMERUのオンとオフの違いを知っているところ。好きな人にはベタベタしてそう…など、変に確信をついてくる発言。あとは筆跡で分かりました」
「いつも律儀にお返事くださってありがとうございます」
気付かないと思ってやってたことだけに、いざバレると気まずい。逃げたいけど抱きしめられて退路を断たれた私は無言でいるしかなかった。恥ずかしすぎる…手紙だと本音を明け透けに書いていたから。“HiMERUくんの綺麗だけど男性らしさのある手が好き”とか、変態みたいなこと書いたしな。
「例え演技でも、HiMERUが他の女性とキスするのが嫌なのでしょう?」
これはまずいな。HiMERUくんに弱みを握られたも同然だ。抱き寄せられて色気のある声で囁かれるの弱いのに…。心做しかHiMERUくん楽しそうなのなんで?ドラマで他の女とキスしてるHiMERUくんを見るのが嫌だという話しは一度も言ったことがなく、ファンレターで初めてその話題に触れたわけで。いちファンとしての意見としてなら…と書いたもので、今の状況だと私からの苦情というか、ヤキモチ知られただけじゃないですか。
「ご機嫌取りのキスなんてやめてよ」
「こんなに可愛い名前にキスしちゃいけないのですか?」
「どういう苦行なのですか」とかショック受けてるHiMERUくん面白い。近付いてきた唇を指先で押しのけたのは、そういう気分じゃなかったから。自分の本音を知られてしまって言い訳を探しているのだ。だってHiMERUくん怒ってるし…。
「愛の言葉も、手紙ではあんなにつらつら語ってくれるじゃないですか。HiMERUは面と向かって名前から好きと言われたことないのですよ」
彼の言葉は全て本当のことだ。告白してきたのも彼からだったし、私は決して事務所のアイドルを誑かしたわけじゃない。そう…今ではHiMERUくんのことが大好きになったけれど、当初はアイドルとお付き合いなんて…と気が引けて、私なんてやめとけオーラを出しまくっていた。なので、彼に直接愛を囁いたことは一度もない。
「HiMERUくん…耳貸して」
「〜…っ。それはずるいのですよ」
耳元で「好きだよ」と告げただけなのに、HiMERUくんは案外チョロいな。あ、でも…この一言でやる気スイッチ入っちゃったみたい。寝室に強制連行されて、ベッド上で組み敷かれて動けないし。HiMERUくんはとてもギラついている。こんな貪るようなキスされたの初めてだ。シャツのボタンを外されて首筋に顔を埋められる。
「HiMERUさん…お盛んですね」
「“一途に愛してくれそうなHiMERUくんが好き”…なんでしょう?」
「それ…ファンレターに書いたこと…っ」
「名前からファンレターもとい、ラブレターを貰うのはとても嬉しかったのですよ」
ハニカミ笑いを浮かべる可愛いHiMERUくんは甘い口付けをくれた。しかし、ファンレターに書いた内容を一々ネタにされるのはちょっとやだな。私がHiMERUくんに見た目が似てる乙女ゲーキャラを攻略してることとか…そんなの覚えてなくていいのに。
「HiMERUに似ているキャラ…とはいえ、これは浮気なのですよ。しかも…コイツからプロポーズまで受けているなんて…っ」
まさかのコイツ呼び…。HiMERUくんが忙しくて構ってもらえなくて拗ねてた時にやってたんだよねそのゲーム。私は元からいくつも乙女ゲームやってたオタ女なのになぁ…。「お仕置きが必要でしょうか」と、この後めちゃくちゃ抱かれましたわ。
「名前。明日、HiMERUとデートしましょう」
情事後のセクシーカンストしてるHiMERUくんにデートに誘われて身悶えすぎてベッド上でゴロゴロとのたうち回っていたらHiMERUくんに訝しげな視線で見られた。ファンレターにファンの妄想として書いたデートしたい願望なのに叶えてくれるのか。あ…でも、“寒空の下で抱きしめられたい”とか妄想垂れ流してたの思い出した。恥ずかしすぎる。
「HiMERUくんにキスされすぎて息が止まりそう…」
「口付け以外の方法で愛を伝えてもいいのですよ」
END