椎名ニキ
名前
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-「ニキくん!会いたかったよぉ〜」と抱きつこうとして前のめりに傾いた身体を咄嗟に戻したら、バランスを崩して後ろに転んだ。幼稚園からの大親友ニキくんの家に突撃した私を迎えてくれたのは、愛しのニキくんではなく。彼と同じユニットの天城燐音だった。「大丈夫か?」と心配してる風に見せても笑ってるのバレてんぞ。
「なんでアンタがここにいるんだよ…!私はニキくんに会いたかっただけなのに!」
「威勢のいいガキンチョだなァ!むしろ俺っちに会えたんだからツイてるっしょ」
この憤りをぶつけたくて思わずキックしたら“弁慶の泣き所”を蹴ってしまったようで、天城は脛を押さえて蹲っていた。そして「なんて野蛮なガキなんだ」とめちゃくちゃ痛がっていた。私だって、最初からニキくんが出迎えてくれればこんな暴挙に出ないけど。玄関先でドタバタと争っていたら、ひょこっと顔を覗かせたニキくんがやっと私の来訪に気付いてくれた。正直、出てくるのが遅かったぞ。
「料理中で手が離せなくてごめんなさいっす。でも…まさか、名前ちゃんが燐音くんとケンカしてるとは思わなくて」
「ニキくん!なんでそんな奴と一緒に暮らしてんのさ!?」
「私だってニキくんと同棲したい」とポロッと零れた願望は、ニキくん本人の耳に入ることなく、「このガキンチョ、いきなり俺っちの脛を蹴ってきやがって」と天城の声で遮られてしまった。さっきからガキンチョとか失礼だな。ニキくんの背に隠れながら、彼の耳元でコソッと事情を説明した。
「私はニキくんに会いたかったし、ニキくんの手料理も食べたかったし、二人きりになりたかったのに」
邪魔な天城も見た目はいいから、普通の女の子ならこんなに邪険にしたりしないと思う。けれど私は、人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて●んじまえくらいのことは思っている。目的が遂行出来なさそうなので帰ろうと背を向けた途端、ニキくんに抱き竦められてピシィっと固まった。あのニキくんがこんなに大胆なんて。どういう風の吹き回しなのか。すんすんと匂いを嗅がれて「相変わらず名前ちゃんは美味しそうな匂いがするっす」と呟いたかと思えばニキくんが自ら天城のことを追い出した。
「ねぇ…ニキくん。どうしたの?」
「せっかく名前ちゃんが会いに来てくれたんだから、誰にも邪魔されたくなかっただけっすよ」
なんと、私からは砂糖菓子みたいな匂いがするらしい。お腹空いたから早くニキくんの手料理食べたいのに、抱きしめたまま離してくれないし、私に恋人が出来たんじゃないかと疑われ、根掘り葉掘り近況を訊かれた。そして、そんな彼から信じ難い台詞が飛び出した。
「名前ちゃん。ここで僕と一緒に暮らしてくれないっすか?」
「天城と同棲してんじゃないの?」
「寮にも部屋はあるし大丈夫っすよ」
久しぶりに私と会って、離れたくなくなったと彼は言う。ニキくんお手製のよだれ鶏を食べている間、じっと見つめられて恥ずかしかった。食べてるとこ凝視されるのって落ち着かないな。「僕の手料理を幸せそうに食べてくれる姿が好きで」なんて言われたら、怒るに怒れないじゃないか。あ〜ニキくんの料理美味しすぎる。さて、共同生活中にあわよくばそういう色気のある展開にならないかなぁという私の淡い期待が裏切られることになるとは、この時は知る由もなく。
―「同じベッドで寝ちゃだめ?昔は一緒に寝てくれたじゃん」
「それ、幼稚園のお昼寝の時の話っすよね。しかも、勝手に僕の布団に潜り込んでて…」
「それだけじゃないもん。修学旅行の時も一緒に寝たし」
「許可なく…という言葉が抜けてるっす」
END