椎名ニキ
名前
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-中学二年生という多感な時期だからこそ、会話の話題は誰と誰が付き合ってるらしいよ。とか、はたまた別れたらしいとか、そういう恋愛事が多いのだが、如何せん彼は全く興味がないみたいで。同様に、私もそういう浮ついた話題についていくのが億劫だった。下世話な話…ようするに下ネタばかり飛び交っているグループの中から抜け出してニキくんのもとへ避難してきた。
「ニキくん助けて。下ネタオンパレードで気まずかったよぉ」
休み時間も、彼は一人でいることが多い。それは彼が食べ物の話しかしないから絡みづらいということが原因なのではと思う。まぁ、ライバルが増えないのでニキくんを一人占め出来て良かったとか考えてしまう私も大概だ。さぁ、お昼休みだ。と、お弁当を片手に彼と人気のない裏庭に赴く。ニキくんのお弁当はいつ見ても美味しそう。かくいう私も影響されて自分で作ってみたけれど、冷凍食品も入れてしまったし普通以下レベルでとても彼には見せられない。暖かな木漏れ日が揺れる中でニキくんがにっこりと笑う。「名前ちゃんが作ったお弁当見てみたいっす」と。私はこの可愛らしい笑顔に弱い。なんだか庇護欲を駆り立てられて、胸がきゅんとする。自分で作ったおかずは味気ないなぁ…と、自己嫌悪に陥っていれば、私のお弁当の卵焼きをひょいと摘まれ、ニキくんの口の中へ。「美味しくないから」という言葉は既に手遅れで。ニキくんに嫌われてしまったらどうしようと俯いていた私の耳に響いた台詞はあまりにも荒唐無稽なものだった。
「甘くて美味しいっすよ」
「偶然それだけ上手く出来ただけ。私…お料理下手かもしれない」
きっとニキくんは料理上手な女の子が好きなんだろうな。と、勝手に落ち込んでいたら「はい、あーん」と彼のお弁当のおかずを食べさせてくれた。愛しのニキくんにあーんしてもらえるなんて幸せすぎて死にそう。めちゃくちゃ美味しい。「ニキくんお嫁に欲しい」とうっかり願望を口にしてしまったら途端に不機嫌になってしまわれた。「男の僕がお嫁さんっておかしいっすよね?」と。「というか、名前ちゃん、僕と結婚したいんすか?」と聞きたかったのだろうけど最後のほうが尻すぼみだったのは照れているからだろうか。ニキくんと結婚…考えただけで恥ずかしい。やましいことが頭を過ぎる。優しい風が頬を撫で、ぽかぽかとしたこの場所でニキくんの肩に凭れかかったままうたた寝してしまったとかなんという失態。「夢の中では結婚していた」なんて、いくら寝ぼけていたからとはいえ言うべきではなかった。
-「僕と仲良くしてるせいで名前ちゃんまで悪く言われるのは嫌なんすよぉ~」
クラスメイトが私の悪口を言っているのを聞いてしまったみたいで、ニキくんは罪悪感を感じているらしい。「僕と関わるのやめたほうがいいっす」と言い出したので「やだ!」と即答した。クラスの女の子から良いように思われていないのはわかってるけど、ニキくんと離れるのは絶対嫌だ。本当は不安そうな彼に抱きつきたいけど、我慢我慢。なんたって今日はニキくん家でお料理を教えてもらっているのだから。二人きりという状況で、もしかしたらエッチな展開もあるかも。とか邪なことを考えててごめんニキくん。にやにやしててごめん。手取り足取りのお料理レッスンしてもらってるから、仕方ないよね。年頃だしね。「なんか危なっかしいっすね」と、包丁でじゃがいもの皮を剥いていると後ろから手を包まれた。
「ごめんなさいっす。見てられなくてつい…」
手が触れただけなのに、気まずそうに距離をとるニキくんよ。もっとそういうのを望んでる私とは大違いだな。私は心が汚れているな。横で器用な包丁さばきでお手本を見せてくれる彼の綺麗な手に魅入ってしまう。この手で触ってほしいとか思っちゃうわけで。エプロン姿の家庭的なニキくん愛おしい。解けかけていたエプロンの紐を結び直してくれる行為ですらドキドキする。腰の辺りに彼の指が当たってぴくりと腰が跳ねる。振り向くと触れそうなほど近くに彼の顔があって、キス出来そうな距離感だな。と思っていれば、彼が照れくさそうに笑う。「名前ちゃん、味見して」と、ニキくんにあーんされてしまい、思わずへたりとその場に座り込んでしまう。新婚さんみたい。とか、肉じゃが美味しい。とか気分が高揚しすぎて真っ赤な顔を両手で覆い隠していると、私に手を差し伸べながら彼が問いかける。よく見るとニキくんの頬も赤く色付いていた。
「名前ちゃん、どうしたんすか?」
「だって、好きな人にこういう事されたら嬉しすぎて…っ」
「それって…いや、なんでもないっす」
END