HiMERU
名前
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-「絶対、HiMERUくんも待ってるっすよ」
「私見たもん。HiMERUさんが沢山チョコ貰ってるとこ」
だから私のなんかいらないでしょ。と、つっけんどんな発言を聞いて名前の同僚椎名ニキは困ったように微笑む。HiMERUに一方的な片想いをしているだけ。と彼女は思っているのだが、ニキから見ればHiMERUも満更でもない様子で、むしろ両想いなのでは?と推測出来るくらいだった。そんな彼らの仲を応援しているのだが、本日2月14日は何やら雲行きが怪しい。今しがた食堂に現れたHiMERUが名前のことをちらちらと見ているのにも気付いているが、当の本人は彼の視線に全く気付いていない。
「チョコのこと考えてたらお腹空いちゃったっすよ~」
「そんなニキくんに、優しい名前ちゃんが恵んであげよう!」
「だから~、そういうのはHiMERUくんに…」
唐突にニキの言葉が途切れたのには理由があった。HiMERUと目が合ってしまったのだ。こんな場面は誤解を招くに決まっている。例えこれが紛れもなく義理チョコだとしてもだ。「名前ちゃん!早くHiMERUくんに本命渡してきて!」と、焦るニキに促され厨房を出た彼女は、チョコではなく彼のオーダーされた料理を運んでいく。彼の近くに居るだけで胸の鼓動が速くなる。さっさと戻ろう。とプレートを置いて彼に背を向けるが、手首を捕まれ動けなくなった。ポケットには、彼の為に作った手作りチョコが入っているが、それを本人に渡す素振りは一切なく。
「HiMERUさん…?」
「いえ。何もないのですよ」
椎名にあげていたものは本命なのか。いや、そんなこと訊くべきじゃない。と、葛藤する彼は言おうとした言葉を飲み込んで彼女から手を放した。彼に触れられた肌が熱い。意味なんてなかったと分かっているのに、手が触れた場所に自分の手を重ねる。ドキドキが治まらないまま、がむしゃらに仕事をこなした。ニキから「渡したんすか?」と訊かれても首を振っていた彼女は既に諦めていたし、時計を見れば21 時を過ぎていて。浮かれた気分でチョコを作っていた昨夜の自分が馬鹿らしいな。と、自嘲的な気持ちで更衣室から出ると、とある人物にぶつかった。HiMERUだ。引き止めたい。神様がくれた最後のチャンスを無駄にしたくない。という思いはあれど、声が出ない。彼の姿をひと目見ただけで胸がきゅうっと切なく締めつけられる。
「名前さん。HiMERUは本当は期待していたのですよ」
「そんな…だって、HiMERUさん沢山チョコ貰ってたでしょう?」
期待していた?自分からのバレンタインチョコを?なんて、疑い深い気持ちになりながらも手には彼の為のそれが握られていて。勇気を出せない彼女は、何か言おうとして口を開いては閉じを繰り返した。そんな名前の手から箱を取り上げて、彼は告げる。「これは、HiMERUが頂戴しますよ」と。義理チョコの余りでしょうか。と呟く声が聞こえ、咄嗟に彼女が「違う!」と大きな声を上げる。今にも泣き出してしまいそうな彼女を抱き寄せ、彼が顔を近付ける。キスされるかも。なんて、どきりとしたが、彼は顔を覗き込んで優しく瞳を細めるだけで。言葉の続きを待っていた。
「それ、HiMERUさんの為に作ったもの…なんです」
「本命ですか?」
「違う…、くない」
「本命なんですね?」
「そうです(HiMERUさん目がマジだ)」
END