HiMERU
名前
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―「HiMERUはあなたに恋をしてしまいそうです」
くっそ。HiMERUくんめ、浮気か。と嫉妬心をメラメラさせている私の気持ちも分かってほしい。彼…HiMERUの恋人は私だからだ。そりゃあ、付き合い始めて間もないし、告白したのも私だったし両想いじゃないのかもしれないけど…酷くない?と、その場に立ち尽くし、ヘナヘナと座り込んで立てなくなった。弱り目に祟り目とはこの事だろうか。もう夜も遅く、コズプロ内に残っている人間も少ない。そんな帰り際に給湯室でティーカップを片付けていたら妙な物音と不審な影を目撃してしまい、怖気づいた私が恋人に助けを求めようとしたら冒頭の台詞が聞こえ今に至る。泣きたい。今すぐここから消えてしまいたい。と奥歯を噛み締めて堪えていれば一つの足音が響いた。
「名前…!こんな場所で座り込んでどうしたのですか?」
「HiMERUくんの浮気者!私の事はほっといて!」
心配そうな眼差しで手を差し伸べてくれる彼につっけんどんな言葉をぶつけ、膝を抱えて俯く。「HiMERUがプロデューサーさんと喋っていたのがよっぽど気に入らなかったのですね」と言われたけれど、問題はそこじゃないんだよ。と、頭をぽんぽんしてくる手を払いのけた。「HiMERUくんなんか嫌いだもん」と心にもない一言を呟くと同時に瞳から涙が溢れてくる。「とりあえず、お姫様抱っこで家までお連れするとしましょうか」と手が触れて、本当にお姫様抱っこされた。泣き顔見られたくないのに。とか、別れてしまおうか。とかネガティヴ思考に陥っているのに、重なり合う彼の体温が温かくて。彼から視線は逸らしたまま、視界に映る街の灯りは滲んだキャンドルのように揺れている。もう少しこのまま抱かれていたいと思ったけれど、あっという間に自宅に到着した。
「どうして嫌われてしまったのか、教えてほしいのですよ」
隣同士に座っていても、距離は遠い。ソファーの端と端である。「HiMERUは推理が得意なんじゃありませんでしたっけ?」と嫌味っぽく告げると、何か思い出したようで私をジッと見つめる。「あれは言葉のあやというか…完全に誤解なのですよ」と弁明してくるが、私は不機嫌かつ怒っているので全然納得出来ない。「恋をしてしまいそう…ということは、HiMERUくんは私の事なんか好きじゃないってことだよね」と、なんか自分で言ってて悲しくなってきた。人気アイドルHiMERUと釣り合えるわけがないって分かってたけどさ。「嫌い」なんて勢い任せに言っただけで本当に嫌いになんてなっていないし。近寄ってきた彼にすっぽりと抱き竦められて、抵抗もせず口を噤んで大人しくしていると、泣き濡れた跡が残る頬にキスをされた。
「焼きもちですか…?本当に可愛いですね」
「いい大人が焼きもちなんて、呆れたでしょ?」
「呆れるどころか嬉しいですよ。それ程俺のことを好いてくれているのでしょう?」と、「俺は心から名前を愛しているのですよ」と甘い言葉を囁かれて、許してしまう私は単純すぎるだろうか?だって、HiMERUくんの優しい声も愛しげな視線も狡いんだもん。抱きついて自分から唇を重ねる。触れるだけのキスをするのが精一杯なのに、彼に後頭部を支えられて熱い舌が絡まり合う深い口付けを何度も繰り返されて。「今夜は名前をめちゃくちゃにしてしまいたい…なんて、俺が考えていたらどうします?」と、セクシーすぎる声で囁かれたら拒めるわけないでしょ。ほんとHiMERUくんは狡い。
「好きにすればいいと思…って、見えるとこにキスマークはだめ…っ」
「好きにしていいのでしょう?もう付けてしまいましたよ」
END