天城一彩
名前
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―「若い男と付き合ってる?」
家に男物の服が置いてあったせいで遊びに来た女友達に詮索された。そのお洋服の持ち主こそ、うちの事務所所属のアイドル天城一彩だ。スタプロ事務員の私が何かと面倒を焼いていたら懐かれ仲良くなり、今では家にお泊まりする間柄に。しかし…お付き合いもしていなければ、やましい関係にもなっていない。弟的な感じで可愛がっているだけ。恋愛感情だってないし…と、ぼんやりした思考でコーヒーカップを片付けていたらコンコンと部屋のドアを叩く音と、聞き覚えのある声が聞こえて意識が覚醒した。
「一彩くん。インターホン押してくれればいいのに」
「ウム、すまない。ここを押せばよかったんだね」
都会に慣れていないと彼は言うけれど、世の中を知らなすぎるんだと思う。今も未知のものを見つめるような視線でコーヒーメーカーを見つめているし。この機械はなんだとか訊かれるのかと思っていたから、「他の男を家に上げたりした?」と訊かれて面食らったよ。私がクッションを片付け忘れていたから来客があったことに気付いたんだろうけど。
「女友達か…それならいいけど。名前さんの傍にいる男は僕だけであってほしいからね!」
正直だな一彩くん。つまり私が他の男を家に上げていたら嫌だということか。可愛いなぁ…よしよし。なんて風に頭を撫で撫でしたら、唐突な温もりに包み込まれて動けなくなった。可愛くて幼い年下の男の子だと思っていたのに、いざ抱き竦められると身長は高いし男の子って意識させられて年上の余裕が崩壊寸前だ。まるで恋人にするみたいな熱烈なハグをされて何も言えずにいる私の耳元で彼は苦しげに説明してくれた。藍良くんに「ヒロくんは名前さんのことが好きなんじゃないのォ?」と言われて戸惑っているらしい。
「こんな気持ちになるのは初めてなんだけど、名前さんの隣にいると幸せなんだ。僕は名前さんが好きなんだと思う!」
ストレートすぎて照れる。よくもまぁ、好きな女の隣で普通に寝れたよねぇ。と思ってしまうのは仕方ない。同じベッドで寝ても手を出されなかったし、そういう欲を向けられてるとも思えなかったから。それに、20代半ばの女に16歳の男の子が本気になるとも思えない。「私と一彩くんはだいぶ年が離れてるけど?」と、私みたいなオバサンやめとけ。というニュアンスで言ってみたけれど、一際強く抱きしめられ「名前さんはオバサンなんかじゃないよ!」と力強い否定の言葉をもらった。
「お付き合い…しよっか」
「…っ!?それなら、こういうことをしてもいいんだと判断するよ」
触れるだけの不器用な口付け。もっと淫らなキスをしたら、純粋な彼はどうするんだろう。なんて、安易に試さなければよかった。「どうすれば名前さんは気持ちよくなる?」とか「僕は何も知らないから、教えてほしい」とか、そっち方面にやる気を出されてしまって背徳感に押し潰されそう。
「ここが気持ちいいんだね。僕が舐めたらどんな反応をするのかな」
「んん…っ。や、ァン…っひろ…く…っ」
「いやらしい名前さんも好きだよ」
「初めてのくせに生意気」
関係を持った翌日、彼の兄の天城燐音に絡まれて大変だったことは一彩くんには言わないでおこう。「弟くんと付き合ってるのっておねーさん?」と初対面で訊かれた。上から下まで値踏みするかのように見られたかと思ったら「こんな綺麗なおねーさんと付き合ってんのかよ」と笑いながら去っていった。顔は似てたなぁ。
END