愛のカンパネラを鳴らせ-第2章-
名前
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-「悪戯はしないから、お菓子をくださいぃ」
昼食にはまだ早い時間であり、お腹が空くような時間じゃない筈だけどニキくんに冒頭の台詞を投げかけられて本日のイベントに気付いた。そりゃあニキくんならお菓子貰いに来るに決まってるよね。まぁ、ハロウィンは忘れてたけどニキくんにあげようと用意していたお菓子があるから問題ない。秋の新作スイーツのマロンバームクーヘンだ。二パァと笑顔になるニキくんめちゃくちゃ可愛い。
「姐さんからも甘くて美味しそうな匂いがするっす」
悪戯はしないと言っていたのに、私に抱きついてスリスリと甘えてくるこの行動は悪戯…?腰をホールドされて胸に顔を埋められたので思わず怒ってしまった。だって食堂の掃除をしている途中だったから、当然誰かに見られてしまう恐れがある。離れてくれたのはいいけれど、「続きは夜にするっす」なんて近頃私の家に泊まっては身体の関係を求めてくるんだからよくない。ニキくんのことは大好きだけど、私はとうに成人を迎えているような年齢であり、対してニキくんはまだ10代なので背徳感というか純粋なニキくんを汚してしまうようで気が引ける。
「トリックオアトリート」
私にとっては本日二度目のこの台詞を告げた人物こそEdenのリーダー乱凪砂くんだった。私がトリップしたその日に初めて出会った相手であり、今ではそれなりに仲良くさせてもらっている。「うちの閣下があなたのことを気に入っているみたいでして」とか何とか茨くんにネチネチ言われた日にはビクビクしたものだ。さすが凪砂くんのSEC●M。凪砂くんは可愛い。私に話しかけてくれる時は支配者キャラの凪砂くんじゃなくて素の凪砂くんなので。なんか庇護欲を駆り立てられる。
「凪砂くん…これは悪戯?」
「お菓子か悪戯か…選べないなら両方だって、茨が言っていたから」
「凪砂くん。距離、近いです…っ」
壁ドンされて頭ナデナデまでが悪戯とはね…。私はべつに凪砂くんのファンではないけれど、美形にこんなことされると心臓に悪い。頭撫でられながら「名前さんは可愛いね」とか褒められ(?)てしまったし、ニキくんに合わせる顔がない。ゲームをやっていた時から思っていたことだが、凪砂くんは結構難しいことを言うし純粋に、疑問に思ったことを訊いてくる。茨くんには訊かないことを私に訊いてくる。そして本日、「良かったら、私に『好き』という気持ちがどういうものか教えてくれないかな?」と小首を傾げながら訊かれた。うん、仕草が可愛い。
「名前さんに訊いたらわかるんじゃないかと思って」
「うーん。『好き』って気持ちはねぇ…凪砂くんが愛おしいなって、大事にしたいなって思えたら、それが『好き』ってことなんじゃないかな?」
納得してくれたみたいで安心したけど、今はそういう存在はいないからしっくりこないんだとか。そりゃあ、凪砂閣下が恋してるとしたら相手の顔を見てみたいもん。「私は、名前さんのこと愛おしいなって思うんだけど…これが『好き』ってことかもしれないね」とか、事も無げに言われて表情筋が凍った。やめて畏れ多い。それに私にはニキくんがいるんだもん。凪砂くんてそういうこと淡々と言うよね。そろそろニキくんに合わせる顔がないな。とか焦り始めた頃に凪砂くんのSE●OMこと茨くんが迎えに来てくれた。
-「ニキくんお疲れ様〜。では、私は帰るね」
ニキくんに塩対応しているのには理由がある。彼が「姐さん」と呼んでいる相手は私だけだと思っていたのだけど、先程、プロデューサーことあんずちゃんを「姐さん」とか呼んでデレデレしていたところを目撃してしまった。確かにあんずちゃんは可愛いし性格も良さそうだし…。でも、なんか嫌だったから今日はひとりで帰る。「名前姐さん。なんか怒ってる?」なんて訊かれたけれどスルーしてそのままエレベーターに乗り込んだ。最近うちに入り浸っていたし、一日くらいいいだろう。
「姐さん。置いてくなんて酷いっす」
「ニキくんがあんずちゃんに浮気してたからつい…」
私がお風呂から出たら、キッチンで普通に料理しているニキくんがいた。今日は一人酒しようと思ってたのになんか調子が狂うな。「浮気なんてしてないっすよ。それに、名前姐さんだって凪砂くんと仲良くしてたし、人のこと言えないと思うっす」とニキくんはムスッとした顔をしていた。凪砂くんと二人でいるところを見られていたらしい。
「凪砂くんに『トリックオアトリート』言われてお菓子あげてただけなんですけども」
「他の男と喋るの禁止っすよ」
「他のアイドルにデレデレするの禁止。じゃなかったっけ?」
束縛心が強いニキくんに反撃とばかりにお風呂上がりの彼に「トリックオアトリート」と突撃しに行ったら「そんなのずるいっすよ」とお菓子を持っていない丸腰の彼は私の悪戯に怯えていた。しかし、私だってひどいイタズラをしようとしているわけじゃない。ベット上に座っている彼の膝の上に跨りそのままキスの主導権を握った。唇を割り、歯列をなぞって舌を絡ませる濃厚な口付けをして唇を離す。私の悪戯で顔を真っ赤に染めているニキくんは可愛い。
「ニキくん。大好きだよ」
「どしたんすか?急に告白なんて」
「今日、凪砂くんに『好き』という気持ちがどういうものか。という質問をされたから伝えたくなっただけ」
「凪砂くんまで名前姐さんのこと好きなんすかねぇ?姐さんがモテモテで僕は気が気じゃないっすよ」
……To be continued