愛のカンパネラを鳴らせ-第2章-
名前
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-今更だから言わせてもらうけれど、前の会社辞めるの大変だった。新人に指導できるような人材が貴重らしく、めちゃくちゃ引き止められたんですよね。でもまぁ、お断りさせていただいた。他でもないニキくんの頼みだし、私も早くESビルで働きたかったから。「姐さん!なるべく早めにESの食堂で働いてくださいっす。人手不足でゆっくり賄い飯食べる時間もなくてぇ…」と涙ながらに訴えられたら、今の会社なんて即辞めてやる!ってなるよ。そして無事に転職できて今に至る。しかし、早々に問題が勃発した。「うっちゅ〜!」と話しかけてきた人物は以前、近所の公園で出会った彼で。
「名前ってここの従業員だったのか!」
「今日からここで働くことになったの。よろしくねレオくん」
「うっちゅ〜!」とか内心楽しんでいたんだけど、唐突に私の肩ががしっと掴まれた。ギリギリと握る力が強い。…ニキくんだった。私が悪いよな。それはわかってるんだけどね。「姐さん!浮気っすよ」なんて耳元に唇を寄せた彼に怒られてしまったので、ニキくんの手を引いてレオくんの前から退散する。今の時間は使われていないレッスンルームに連れ込まれ、壁ドンの体勢で問い詰められる。ニキくん距離が近すぎるよ。
「他のアイドルにデレデレするの禁止っすよ!そもそも、なんで月永レオくんと仲良いんすか?」
「それはこの前、偶然知り合って…」
反論する暇も与えられず、唇を奪われた。これは全て嫉妬心からくる行動なんだろう。頬を包み込まれて何度も口付けされる。舌を絡め取るような淫らなキスをニキくんのほうからされると照れる。嬉しいけれどESビルの一室でこんな事をしているのは気が引ける。
「ニキくんだめだよ。今日もアイドルとしての仕事とかあるんじゃないの?」
「僕、我慢するっす。その代わりに、今夜は名前姐さんの家に泊まってもいいっすよね?」
「夕飯も僕が作るっすから」とか、そんなのいいに決まってるけど、この子いつの間にこんな積極的になったんだ。と姐さん心としては嬉しいような寂しいような。少し前までランジェリー選び如きで照れていたくせに。その後、部屋を出て食堂にて色々説明してくれるニキくんに密かに感動を覚えていたのだけど本人には言わない。自分が他人に指導することはあっても指導される側になるのはないことだから。でも料理あんまり得意じゃないからホール担当にしてもらえるのはありがたい。
「もうすぐお昼で忙しくなるけど、もし燐音くんに声かけられても必要最低限しか会話しちゃだめっすよ」
「燐音くん信用なさすぎ」
信用も何もあるか。と燐音くんからお金をせびられたエピソードを苦々しい表情で語ってくれるニキくんには同情する。気のいいお兄ちゃん的な面もあるくせに根本的なところはギャンブル中毒なんだな。と、燐音くんに会ってみたい気持ち半分、残り半分はちょっと説教してやろうという気持ちで初日から黙々と仕事に励んでいるとニキくん以外のクレビの面々が現れた。オーダーを訊きに行って、そして捕まった。HiMERUくんは美人さんだし、こはくちゃんは可愛いしご尊顔をじっくり拝みたいのに邪魔をされた。
「この前のおね〜さんじゃん。これって運命ってやつだよなァ♪おね〜さんも俺っちに会えて嬉しいっしょ」
肩を抱かれたまま何も言えずにいると、グイッと燐音くんから引き剥がされた。ちらりと視線を向けた先ではニキくんがプンスコ怒っていた。厨房にいた筈なのに、急いで駆けつけてくれたっぽい。泣ける。ニキくん番犬すぎる。「燐音くん!姐さんに触れるのは僕が許さないっすよ」と威嚇してくれたニキくんは無理矢理彼らのオーダーを聞きだしてから戻っていった。でもニキくんがこんな行動をとったせいでクレビのみんなから質問攻めに遭うことになってしまったんだけど。
「名前さんは今日から配属になったのですか?」
「名前ちゃんとニキって付き合ってんのか?」
「おんどれ図々しいこと訊くなや。主はん、答えんでもえぇんやで」
アイドルが一般人と付き合っているというのはあまりよく思われないことだから、否定だけはしておく。実際、私とニキくんの関係ってどう説明していいのかわからないし。付き合ってはいないけど一緒にご飯を食べる仲ではある。ということでいいのだろうか。燐音くんは中身はニキくんを困らせる程のギャンブル野郎だとわかっているけれど、アイドルだからやっぱり顔がいい。だから、ずいっと顔を近付けられると照れる。つい最近までイケメンとは縁のない生活をしていたから心臓に悪い。これからESビルで働くなら、こういうことにも慣れないといけないんだろうな。と私は密かに悟った。
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