愛のカンパネラを鳴らせ-第2章-
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-アイドルとこんな堂々とデートしちゃって大丈夫?」
念願叶ってニキくんとのデート当日なわけだが、私はかなり失念していると思う。人気アイドルならもっと人目を忍ぶべきで、外でデートするのは控えるべきだろうに。ニキくんも乗り気だったし変装用に黒縁メガネかけてるし「僕はアイドルとしてはまだ無名なんで大丈夫っすよ」と言うのでお言葉に甘えて私の車でドライブデートに出発。助手席のメガネ男子なニキくんすごくいい。ラジオからは懐かしいラブソングが流れ、暖かな陽が窓から射し込んでいい雰囲気。信号待ちでコーヒーを飲みながら視線をニキくんに向けるとスニ●カーズを食べながらニコッと笑う彼と目が合った。
「ご飯前なんだから食べすぎないように」
「運転してる名前姐さんかっこいいっす!」
ニキくんは免許持ってないらしく私に羨望の眼差しを向けてくるけれど、運転トラブルとか心配なので当分は助手席に乗っていて欲しい。それにしても…無邪気な青年の顔をしていたくせに、長い信号待ちの時に不意打ちでキスしてくるんだもんなぁ。歳下のくせに生意気だぞ。なんて言える余裕もなく車を走らせているが、それっきりニキくんが無言なので気まずい。
「ニキくん随分積極的になったね」
海沿いの食事処の駐車場に車を停め、呟くように告げた言葉は彼の耳に届いたのか。逃げるように飛び出していったニキくんの後を、火照った頬に手を当てながら追いかける。海風が頬を撫で磯の香りが鼻先を掠める中で、景色を眺めている彼に後ろから抱きついた。広い背中に確かな男性らしさを感じる。「ニキくんめ生意気だぞ」と冗談めかしくぎゅうっと抱きつく腕に力を込める。こういう何気ないひと時が幸せすぎる。
「だって…姐さん最近他のアイドルと仲良くしすぎだし、僕のことどうでもよくなってるんじゃ…」
「私に非があるのは認める。だが私はニキくん一筋なので安心してくれ」
うんうん。トリップ経験者としては色んなアイドルと仲良くなれて楽しい日常を送っているつもりだったけど、推しであるニキくんに不満を溜めさせてしまったとは迂闊だった。しかし現在…ニキくんも私も、ぷりぷりのエビフライと大きなカキフライを堪能中なので、先程の恋人ムードどこ行った?状態なのですが。デートっぽいからこういうのもありだと思う。
「ふぅ…食べすぎた」
「姐さん普段少食っすからね」
店を出てから違うところに車を停めた。海岸沿いの石畳の上を歩きながらニキくんに手を伸ばそうとすると、彼の方から手を繋いでくれて思わず足を止めた。やっぱり今日のニキくんはグイグイくるな。「どうかしたんすか?」と問われて「いつものニキくんじゃない」と消え入りそうな声で告げると、私の腕をグイッと引っ張った彼に迫られ、後頭部を支えられ、もう片方の手が背中に回された。ドライブ中の触れるだけのキスと違って、今度は舌を差し込まれて吸われて、濃厚なそれに、堪らず彼のシャツを握りしめる指に力が篭った。
「名前姐さんはもっと僕に愛されてる自覚を持ってほしいっす」
「んぅ…っ。わかった、からぁ…っ」
キスしながら胸を触ってくるから抵抗しているのだけど、力が入らなくて口から熱い吐息が零れる。ニキくんがこんなにエッチなことをしてくるようになってしまったのは私に原因があるのだろうか。唇が離されると、色欲を孕んだ瞳で見つめられて彼の胸に縋り付いた。
-「姐さん…こはくちゃんとデートしたって本当っすか?」
「デート…じゃないよ。たぶん」
こはくくんおすすめの和スイーツカフェに誘われてついて行っただけなのだけど、あれはデートなのだろうか。こはくくんと私はだいぶ歳が離れているから全然意識していなかったのだが。こはくくん本人が嬉々として話していた…と。スイーツも美味しかったしこはくちゃんは可愛かったし…なんて言ったらニキくんが不機嫌になることは分かっているから絶対言わない。
「こはくちゃんが姐さんに憧れてるっぽくてぇ…」
「姉みたいな感じに思ってくれただけじゃないかな?」
末っ子にまで焼きもち妬くのか。それもこれも、私達の曖昧な関係のせいなのだろうな。ここらでハッキリさせてもいいだろうか…と、ベット上でニキくんに馬乗りになってじっと彼と視線を合わせる。「今更だけど、ニキくん私の彼氏になる気ある?」と、ついに訊いてしまった。今まで触れてこなかったこの話題に。どうしても誑かしてる感が否めなくて踏み込めなかったから。
「勿論っすよ。絶対名前姐さんを幸せにしてみせるっす」
「なんかプロポーズみたいになってるよ」
アイドルなんだから恋人は作るべきじゃない。なんて…アイドル辞めたがってたくらいだからそういうプロ意識はないんだろうな。ともあれ、無事に恋人になれたし一件落着…ってことにしておこう。
「ニキくん…お盛んすぎじゃないですかね」
「ダメなんすか?」
「お預け…にしたいところだけど。わざと当ててるよね?君」
抱きつかれてスリスリと胸に顔を埋められ、ヤりたい盛りの男の子の欲望を見せられて言葉に詰まった。寮住まいのくせに私の家に入り浸っては関係を持ちたがるニキくんを拒むべきだろうか。このしょぼん顔に弱くてついつい許してしまうんだよな。太腿にそれを押し当てられて、ついつい「おいで」と手を伸ばしてしまうと、ニキくんが嬉しそうに飛び込んできた。
……To be continued