ピロートークはまだ早い
名前
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-「やだ。HiMERUくんが脱がせて」
この日、HiMERUは名前の異常事態に気付いていたが、皮肉なことに己の理性と戦っていた。自分より先に帰宅した筈の彼女はリビングのソファーの上でぐったりとしていた。赤く火照った顔、触れた手は熱く、熱があるのだとすぐに分かった。外出着のまま寝かせるわけにいかない。と着替えてもらおうと促した直後の台詞が冒頭のものである。彼女の部屋に連れてきたはいいが、服を脱がせるという試練は彼の理性を揺さぶった。スカートを脱がしブラウスのボタンを外すと下着だけを纏った姿になる。色欲を煽られつつも彼の手は寝間着を掴んでいたが、ここで不測の事態が発生した。
「HiMERUくん。もしかして、我慢してるの?」
「我慢なんて…っ。って…名前?何を…っ」
「我慢なんかしていない」そう告げようとした彼の首筋には名前の腕が絡み、ぎゅうっとしがみつかれて離れてくれなくなった。しかし、着替えはまだ途中であり、この姿で密着されると病人に手を出してしまいそうになる。それだけは避けたい。と思うHiMERUの上に覆い被さってきた彼女の発言は小悪魔的だった。「うそ。我慢しちゃダメ。本当はしたいんでしょ…?」と、下着姿の名前に迫られてHiMERUは「そりゃあ、したいですが…」と本音を零してしまった。
「正直なHiMERUくんにはご褒美あげなきゃ」
「名前…いつもとキャラが違うのでは?」
彼女はこんなに大胆ではない。むしろ恥ずかしがって自分からは来てくれない。だが、今は違う。彼女の唇が重ねられる。額に、頬に、首筋に…キスの嵐が降り注ぎ、やがて唇に重なる。ねっとりと絡み付くような口付けは何度も向きを変えて繰り返された。脳が痺れるように、何も考えられなくなった。随分長い間口付けを交わしていて。ゆっくりと唇を離しながら妖艶に微笑む彼女は自身の唇をぺろりと舐めて「ごちそうさま」と、HiMERUと見つめあった。
「したいって…キスのほうですか」
キスだけで止まれたらどんなによかっただろう。「こっちも触ってあげる」と、HiMERUの男根を服の上から撫でる彼女はあろうことか肉食系だった。色っぽい名前の姿に、既にそれは反応していたのだが病人相手に何を…と気が咎めた。だが、その間にも名前の手は容赦なくそこを刺激していた。外気に晒されたそれは痛いほどに勃ち上がっていた。やがてそれを彼女の口で咥えられ、口腔内で愛撫されて理性というものが砂のようにサラサラと崩れていくのを感じた。顔を上下に動かされ、口での奉仕をされる。舌先で亀頭を舐めながら竿を扱かれ、HiMERUは眉間に皺を寄せてその快感に耐えていた。止めさせようと思っていたが、あまりの気持ちよさに思考が鈍った。
「名前…っ。はァ…っ。やめ…っ」
「HiMERUくん可愛い」
ピチャピチャと卑猥な音だけが部屋に響き、いけないことをしているような気分にさせられた。放出された白濁は彼女の口内で受け止められて。これだけのことを自分からしてきたくせに…と、HiMERUは頭を抱えたくなった。それもこれも…あの後眠りにつき、再び目覚めた彼女は何も覚えていなかったからだ。証拠もないし、きっと信じてくれないだろう。熱が下がったと言って笑う彼女に悪戯心の芽生えたHiMERUが告げる。「熱がある時の名前は肉食系だったのですよ」と。
「肉食系…?どういうこと?」
「HiMERUにあんなことまでしておいて、忘れているなんてあんまりです」
「あんなこととは…?」
さて、こんなことがあった数日後…HiMERUはすこぶる不機嫌だった。というのも…名前が風早巽と一緒にいる場面を目撃してしまったからだ。仕事に向かう途中であり、時間がなくて彼女に問いただすことが出来なかった。そんな彼の様子に気付いたのは天城燐音だった。「メルメルって名前ちゃんのこと好きだよなァ」と「よその男に口説かれてるんじゃね?」とHiMERUの視線の先を辿った彼は呟く。不穏な憶測が彼の胸を抉った。相手が誰であろうと名前に男を近付けたくないのだ。しかもそれが風早巽とあれば尚更だ。
「名前。あの男とはどういう関係なのですか?」
「ん?HiMERUくん私の浮気を疑ってる?あの男って誰?」
「風早巽」
「違うよ。巽くんは突風に飛ばされた私の帽子をキャッチしてくれたことがあって、それで顔見知りになっただけ」
「ハァ…っ。ヒメルく…っ。待って…っ」
「待ちませんよ。名前は他の男なんて知らなくていいのです」
HiMERUは案外独占欲が強かった。そんな些細なことで片付けられそうな事案に、一つどうしても気になることがあった。「巽くん」と親しげに呼んでいるということは…と、深読みしてしまったのだ。さて…家の中ならまだしも、そこはESビルの一室だった。名前が連れ込まれた場所はトレーニングルームで、鍵をかけて誰にも邪魔されないこの場所で壁を背に追い詰められていた。吐息さえ奪うような熱い口付けに、胸をまさぐるいやらしい手つきに…飼い馴らされた身体が熱くなった。
「私の身体は、HiMERUくんしか知らないよ」
「淫靡な名前は、こんな風に…HiMERUにいじめられて感じてしまうのでしょう?」
服の乱れも直しきれずに部屋を飛び出すと、燐音とぶつかり「溺愛にも程があるよなァ。メルメルはあぁ見えて愛が重たいんだな」と全てを理解した口振りで言われて名前は焦った。交際していること自体、隠していたからだ。「こんな見えるとこに痕残すなんてよっぽどだよなァ」とマーキングされているであろう首筋のそこを燐音にちょん、とつつかれた。
……To be continued