ピロートークはまだ早い
名前
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-「HiMERUくんが傍にいないから、眠れないのかな…」
HiMERUくん程の美形がモテない筈がないし、私は器量よしじゃないし、もしも彼が他の女性に目を向けることがあったとしたら私はHiMERUくんを繋ぎ止めておくことができるだろうか。ドラマの収録で今夜は帰れない。というのは本当?なんていうことをふと考えてしまって眠れない。次の日が仕事だというのに夜這いにくるようなHiMERUくんは、抱かせてくれる女なら誰でもいいんじゃないの?と、心の中に芽生えた疑念というものは中々消えてくれない。
「忙しいのに連絡してくれるわけないか」
スマホを確認にしても一切連絡はない。毎日顔を合わせているのに、なんなら肌も合わせているのに、少し会えないだけでこんなに不安になるものだろうか。同棲しているだけで、結婚しているわけじゃないし…というかHiMERUくんまだ10代だし結婚の話は早すぎる。あ、大事なこと思い出した。HiMERUくんが留守ならこの間没収されたHiMERU写真集を奪還できるのでは?と突然の閃き。内緒で彼の部屋に入ると、本棚の中にあった。眠れないから写真集をじっくり見てみよう。と、自室に戻ってそれを開いていたのだが、一人で盛り上がっていた刹那、静かに部屋のドアが開いた。
「名前。まだ起きていたのですか?」
「HiMERUくん!?今夜は帰らないんじゃ…」
「名前を家に一人にするのは心配なのです。それに、ただ単純に会いたくなったのですよ」
あ、やばい。写真集を奪還してきたの見つかった。勝手に部屋に入って持ってきてしまったし…と慌てていたけれど、私の心配は杞憂だったようだ。「名前はそんなにHiMERUのことを好きでいてくれたのですね」と恍惚とした顔だ。間違ってないけど、何だか恥ずかしくて顔を背ける。そうすると、ベッド上で彼に後ろから抱き竦められた。いつものHiMERUくんだ。と安心すると同時に彼の愛情を確かめたくなってしまい、疑念たっぷりの揺さぶりをかける。「HiMERUくんには私以外にいい女性(ひと)がいたりして…」と。
「な…っ!?HiMERUの浮気を疑っているのですか?」
「だってHiMERUくんがモテないわけないし。他の女性に口説かれてても不思議じゃないし」
自分から話を振っておいて、答えを待たずして想像だけでショックを受けるなんて滑稽なことだろう。HiMERUくんの年齢なら女遊びというか、色んな女性に目移りしても仕方ないだろうし。なんて、自分を納得させようとする程何故か涙が滲んできて…。気が付けばHiMERUくんの温もりに、匂いに包まれていて。唇が触れて舌が差し込まれて、息を乱すような濃厚な口付けに変わる。思わず彼のシャツを握りしめると漸く唇が離れた。なんて色っぽい表情をするんだろう。と、視線が離せなくなる。しかし、そんな彼に叱られた。
「HiMERUは名前にしか興味ないのですよ」
「初めて出逢ったあの日から、俺は名前に夢中なのですよ」と彼の言葉で当時のことを思い出した。レッスンルームのピアノを貸してもらって映画ロミオとジュリエットの《a time for us》を弾いていた時に部屋に入ってきた人物こそHiMERUくんだったのだ。演奏後に声をかけられて、イケメンに免疫がなさすぎた私は最初こそ彼にからかわれているのかと思っていた。しかしその日を境に、カフェでお茶に誘われたり「HiMERUの為にピアノを弾いてほしいのです」と頼まれたり接触がやたらと増えた。私が他の男性と会話しているのを見ていた時なんかあからさまに機嫌が悪くて可愛かったな。見た目がとても大人びて見えるHiMERUくんがまだ10代で学生だと知った時には吃驚したものだ。
「あの頃のHiMERUくんは可愛かったなぁ…」
「可愛いのは名前だけで充分なのです。HiMERUは可愛くなんてないのですよ」
今でも可愛いときはあるけれど、可愛さよりもエッチさに困っているので、あの頃の、私に手が出せなかった奥手なHiMERUくんが懐かしいというか恋しい。今のように、ふとした瞬間に私って独占欲が強いんだな。と気付かされる。連続ドラマを観ている時もそうだ。それは恋愛ものであり、ヒロインと結ばれはしないけれど、強引にヒロインに迫るセクシー系イケメンな同僚役がHiMERUくんだった。強引にキスするシーンがあり、お芝居だと分かっているのにとても悔しい気持ちになる。「HiMERUくんは私のなのに…」みたいに奥歯を噛み締めながらドラマを視聴するのは結構辛い。
「むぅ…ヒロインずるい」
「名前?もしかして嫉妬しているのですか?」
ある日の晩、帰宅したHiMERUくんに私がドラマを観ながら悋気しているというのがバレた。焼きもちなんて呆れられるのでは?と、咄嗟に部屋に逃げようとしたが無理だった。ニヤけ顔が隠せていないHiMERUくんなんて珍しい。「そりゃあ、私のHiMERUくんがよその女とキスしてるのはいい気がしないよ」と何故か怒ってるみたいな口調になってしまった。「HiMERUが名前のものだと言われると照れるのですよ」と言う彼は「名前はHiMERUのもの」というぶんには当たり前のことなので全く照れないとのこと。
「HiMERUくんのもの…なんて言われると照れる」
「名前のここも、ここも…HiMERUのものなのです」
親指の先で下唇をなぞられ、服の上から指先で胸をいやらしくなぞられた。「カラダ目当て?」と冗談めかしく呟けば彼は何か企むように唇に笑みを乗せる彼が。「愛されている実感がないのなら、HiMERUの愛情をたっぷりとその身体に刻み込ませるだけです」と、今夜もまた眠れない夜になりそうだ。
……To be continued