愛のカンパネラを鳴らせ
名前
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-仕事からの帰宅途中、うちのマンションの前で倒れている人物がいた。知らん知らん。と、素通りしようとしたら、なんと足を掴まれてしまい仕方なく立ち止まる。「うぅ…お腹空いた」とか呟く声が聞こえた途端、私の脳みそがフル覚醒した。聞き覚えのある声だ。ていうか、推しの声だな。ちらりと足元に視線を落とせば灰色の髪が揺れ、泣きそうな瞳と視線が重なった。そんな馬鹿な。と信じられない思いと同時に、ハッと重大な事を思い出した。空腹時の彼はとても危険だということだ…。
「おねーさん、いい匂いがするっす。どうか、食べる物を恵んでくださいぃ…」
私の鞄の中には非常食用のカロリーメェトが入っているが、それに反応してしがみついてくる彼の名を私は知っている。あんさんぶるスターズ!!の椎名ニキだ。どうしてゲームの登場人物の彼がここにいるのかは深く考えないが、ひとまず私の家に連れて行くとしよう。ここだと人目が気になるし。それにカロリーメェトよりも腹の膨れるものが冷蔵庫にあるし。というわけで、彼を自宅に招いてみる。なんの躊躇いもなくご飯に釣られてしまう君がおねーさん少し心配だよ。ゲームやってる時はそんなに身長高い感じがしなかったけど、実際隣りに立たれると男の子だなぁ…って実感させられて顔がニヤける。
「僕、椎名ニキっす」
うん、分かってた。なんて自己紹介して答え合わせをして。自分も名乗ったんだけど、「名前姐さん」とか呼ばれて表情筋がユルユルになった。でも不審に思われたら困るから必死にポーカーフェイス。「ところでご飯はまだっすか?」とお待ちかねなので鍋を火にかけ、冷凍ご飯をレンジで温める。昨日の残り物とはいえ、カレーライスならば彼の空腹も満たされるだろう。問題は料理下手な私が作ったものだということ。一人暮らしを始めたばかりで、恥ずかしながら料理は得意ではない。そんなものを料理人である推しに食べさせてしまうのは…と、とても気が引ける。だが、ニキくんはニッコリ笑顔で「カレー美味しいっす」と言ってくれたものだから、泣ける。(泣いてないけど)そして、食べ終わった彼に「ここってESビルの近くっすか?」と訊かれ浮かれていた思考が停止して冷や汗が出てくる。
「いや〜あの〜…ESビルは近くないんだ。というか、存在しない…」
「名前姐さんの話を要約すると…ここは、僕がいた世界ではないってことっすか?」
とてもじゃないけど「君はゲームの中の登場人物なんだよ」なんて言えるわけないから、やんわりと違う世界であると説明したけど、実感も沸かないだろうし困惑しているみたいで可哀想…じゃないな。「ご飯はどうしたらいいんすかねぇ」と、食事の心配しかしてねぇな。椎名ニキほんとブレないな。と思わず感心しちゃったよ。元に戻れるまでここで生活してもらうことになるんだし、とりあえず着替えが必要だな。と、早々に判断した私は近くに住んでいる兄のところに行って服を貸してもらった。(すごく不審がられたけど、彼氏がお泊まりするんだと誤魔化した)明日は休みだからニキくんの服とか買いに行こう。
「名前姐さん。見ず知らずの男を家に泊めていいんすか?彼氏に誤解されたりとか…」
「心配ご無用だニキくん。私に彼氏はいない」
自分で言ってて悲しくなってくるな。そもそもニキくんて10代なわけだし、20代半ばの私みたいなのが独り身なんてモテないんだな。とか思われてそう。「名前姐さん綺麗なのに勿体ないっすねぇ」と懸命なフォローがむしろ心に突き刺さるよ。いたたまれなくなってきたので、話題を逸らしてお風呂に入るように勧めて今に至る。そう…ニキくんの髪の毛をタオルでわしゃわしゃ拭いている。ろくに拭きもせずにぽたぽた水滴を垂らしながら出てきたんだからこうするしかなかったんだ。なんていうか風呂上がりのニキくん髪下ろしてるし色っぽくて、いけないことをしている気分にさせられる。暑いからって上半身裸で脱衣場から出てきたし。その時に見えた引き締まった肉体をこの目に焼き付けた私は大満足です。ゲーム内であれだけ食べてるのにこんなに細いなんて羨ましい。
「同じベッドで寝るんすか?」
「いや。私はリビングのソファーベッドで寝るし」
「ベッド大きいから二人で寝れそうっすよ」と、この言葉から察するに私は女として意識されていないことが判明した。私の歳で未成年に手を出すのは犯罪臭がするから絶対しないけど。推しとひとつ屋根の下という状況なんだから少しくらい夢を見たい。いやでも、ニキくんそんな手の早い男じゃないか。燐音くんじゃあるまいし。
「姐さん。服!薄着でウロウロしちゃダメっす」
「ごめん。ニキくんがいること忘れてた」
「名前姐さんひどいっ。顔笑ってるし、全然悪いと思ってないっすよね」
……To be continued
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