make love.fake love.
名前
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―「もう…っ。誰か来るかもしれないのに…っ」
「そんな潤んだ目をして…怒っているようには見えませんよ」
壁際に追い詰められ、茨と舌を絡めた深い口付けを交わす。秀越学園のとある資料室にて、彼らは逢瀬を重ねていた。授業で使うようなものが置いてある部屋の為、いつ誰が入ってきてもおかしくないとはいえ、茨はこのスリルを楽しんでいるように唇は弧を描いている。彼とは付き合っているわけではない。肉体関係だけの、他人には言えないような不純な仲である。彼に呼ばれた日の夜には身体を重ねるが…只それだけで。今のように人目を避けて逢引のようなことをするのは初めてである。誰かに見られたり知られてしまえば、互いの立場も危うくなってしまう故に気が気じゃない。それなのに、彼の愛撫を拒めない程に名前は茨に惚れていた。淫らなリップ音が静寂な空間に響いていく。キスをしながら、彼の手は服の上から胸に触れてくる。それだけで、下腹部がキュンと反応してしまう。
「…盛りの時期?」
「犬や猫じゃあるまいし…違いますよ」
「そのわりに、止めてくれないんだね」と名前が言うように、彼の手は太腿をいやらしい手つきで撫でたり、胸をなぞったりと…欲情しているとしか思えない行動をしていた。声が漏れそうになると唇を重ねられ、彼女は甘い吐息を零した。こんな場所で、いけないと分かっているのに、身体は彼を求めるだけで。「いつもは、こんなこと、しないくせに…っ」と悔しそうに呟いた。茨は何を考えているのか分からないな。などと思っていれば、予想外の台詞を告げられ、何も言えずに耳を傾けた。「先程、デートの誘いを断ってましたね。何故です?」
「デートは好きな人と行きたい」
「自分は、デートなんかしませんよ」
愛し合っているわけでも、交際しているわけでもない。大好きな彼とデートなんて夢のまた夢。頭では理解しているのに、他の男性の誘いに乗りきれない。他の男と過ごすくらいなら、茨に抱かれていたい。強くそう感じ、彼女はぎゅうっと茨に抱き着いた。温かくて心地良い。この温もりも、彼の匂いも全て安心する。「こんな最低野郎に捕まって、恋愛するタイミングを逃して…いずれ後悔しますよ」とまるで警告のような言葉に、一方的な恋心が抉られた。彼の言うことは正論だ。こんな関係すぐにでもやめるべきだと、誰しもが思うだろう。それなのに手放せないのは、この関係に、快楽に…溺れているからで。名前自身も、こんな気持ちは誰にも理解されないことは分かっていた。それでも、茨のことが愛しくて、最低野郎だなんて一度も思ったことがなくて…離れるなんて考えたくもなかった。
「名前を見てると心配になりますね。将来…悪い男に騙されますよ」
「そうならないように、茨が阻止してくれればいいんじゃない?」
「またそんな事仰って…。名前には自分以外の相応しい男がいるでしょうに、勿体ないですね」
「茨がいい。他の男に興味無い」
……To be continued