make love.fake love.
名前
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-そう。こんなもの…デートではない。きっと名前の望むデートはしてあげられない。そんなこと分かっている。それならば、他の男と実現させてしまえばいい。そう思っている筈なのに。茨のその行動は、彼の策略とは伴ってはいなかった。
「今日の放課後、一緒にお茶でもいかがです?」
「え。それって…ミーティング、だよね」
一瞬、彼女の顔に期待の色が見えた。ミーティングだと思っているならそれでもいい。制服姿で、放課後デート…茨自身、他意はなかった。先程、名前に気のありそうな男子からのデートの誘いを断っている声が聞こえてきたのだ。この行為はまるで罪滅ぼしでしかない。それでも、彼女は嬉しそうに口元を緩ませていた。放課後、西陽が照らすいつもと変わらぬ通学路で肩を並べて歩く。少しくらい恋人らしいことをしてみようか。なんて、茨が彼女の手を握った。彼女は拒むというより戸惑っていた。完全個室のカフェのテーブルにて向き合うと、名前は目を合わせてくれなかった。
「今日の茨…なんだかおかしいよ」
まるでデート。しかも「ミーティングじゃありませんよ」なんて、プリンをひと匙「あーん」と食べさせられて、彼女はキャパオーバーしていた。いつもの茨じゃない。それなら、と…切り分けたシフォンケーキを彼の口元に運んでいく。しかし、クリームの乗ったそれを、彼が口にすることはなかった。「恋人ごっこはおしまいであります」と、珈琲を口にして不敵に微笑む彼はやっぱりいつもの茨だった。もっともっと、甘い時間を過ごしてみたかった。けれど、名前はこれだけで満足だった。今日のこれは所詮、恋人ごっこ、デートの真似事…なのかもしれない。決して付き合っているわけじゃない。彼氏彼女の関係じゃなくてもいい。自分も、それでもいいと望んでいたじゃないか。それなのに、このひと時が嬉しくて仕方なかった。
「さて、この後はどうします?」
「この余韻を噛み締めたいから、まっすぐ帰る」
肩透かしを食らった気分だった。名前が自分のことを好きだなんて、単なる傲(おご)りかもしれないとすら思えてきた。極めて冷静に振舞っていた彼女だが、茨のそのシュンとした表情を決して見逃していなかった。茨の隣に移動し横から抱きついて「しょぼくれた子犬みたいで可愛い」とにやにやしていた。まぁ、彼女にその気がないなら無理強いはしないでおこうと思っていたのだが、名前は期待を裏切らないなぁ…と笑いたくなった。
「幸せを噛み締めたいのは本当だけど、茨くんに抱いてもらえるのが一番幸せだもん」
「名前ってほんとチョロいですよね」
「あ〜!またばかにしてる。性格悪いなぁ…」
……To be continued