make love.fake love.
名前
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-風邪ではない。きっと疲れが溜まっているだけだ。そう言い聞かせるのもいい加減限界にきていた。名前は近頃の自分の体調不良に悩まされていた。仕事中にも容赦なく襲いかかるその症状。こんな調子じゃ茨に会えるわけない。と思っていたら彼から呼び止められた。頬を包まれ、顔を近付けられて咄嗟に瞳を閉じた彼女はキスを期待していた。だが、額に額を重ねられただけだった。「熱は無いようですが、顔色がよくありませんね」と、茨は名前の不調に気付いていた。その後、トイレに駆け込んで一人になった彼女は昔聞いた母の台詞を思い出していた。「突然気持ち悪くなって吐いちゃうのよ。でも食欲は旺盛で…」と、名前の今の症状は食べづわりの症状と酷似していた。
-「そういえば…生理きてない」
灯りも着けずに部屋の中で座り込んだ彼女はそう呟いて、自分が妊娠しているかもしれないということを確信してしまった。まるで冷たい水を浴びせられたように、血の気が引いていき、ぎゅっと掌を握りしめた。避妊はしていたが、着けずにしてしまったこともあるし、妊娠していないとは言いきれない。そう気付くと同時にどうしようもない不安感に襲われて涙が溢れてくる。「言えないよ…こんなこと」と、もし妊娠していたら彼の前から消えるしかない。と、一人で生んで育てようと人知れず決心していた。こんなに悲しいのに、このお腹の中には茨との愛の結晶が宿っているのかも。と、愛おしくなって腹部を撫でたりした。
-「こんな最低野郎のどこがいいんでありますか」
「無理矢理襲うようなこともせずに優しくしてくれるところも好きだし、何度もキスしてくれるのも嬉しいし、たまには褒めてくれるし、私のこと大事にしてくれるし…」
いつの日か訊いたその問いへの回答は聞いていて恥ずかしくなるものであり、特に最後のものに関しては突っ込みたくなってしまったのだ。「それって、名前が都合よく解釈してるだけじゃないですか?本当に大事にしていたらこんな関係にはなっていない筈ですよ」と。しかし、この一言で茨は名前を泣かせてしまったのだ。
「そう…だよね…っ。勝手に、愛されてるって…思い込んで…っ」
自分にはこの涙を拭う資格なんてない。自分の腕の中で咽び泣く彼女の姿を見ては、そう思わされ、彼は口付けをするのをやめてしまった。
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