初恋は選べない
名前
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―この前の休日に渉くんに選んでもらった下着を身に着ける度に、彼の顔が思い浮かんできて気恥しい気持ちになる。私の胸のサイズも彼に知られてしまったわけで、彼とまともに会話出来る余裕が無くなっていく。
「おはようございます。今日は名前にとっては初めてのS1の日ですねぇ~!」
彼が言うように、本日はS1の日なのだ。それも、彼の所属するfineが出演するから見逃せない。私を出迎えてくれた彼はfineの衣装を着ている。fineの衣装は指揮者イメージらしいが、王子様のような風貌に見えてしまうので何故か照れる。
「そ…そうだね。fineのパフォーマンス楽しみにしてるよ」
しかし…冒頭で語った通り、私は気持ちに余裕がない。渉くんと話している時の胸の高鳴りを誤魔化すのに精一杯だ。いつもどんな風に会話していたのか思い出せない。
「どうしたのですか?名前の方が緊張しているようですね…」
まずい。出演する彼の不安を煽るような振る舞いをしてはいけない。それは分かっていても、私は自然に対応出来ていないかもしれない。渉くんよ…私の頭を撫でるのはやめてほしい。お陰で先程よりも鼓動が速くなった。
「fineでの渉くんを見るのは初めてだから、ワクワクしてるだけだよ」
「アメージング!嬉しい事を言ってくれますねぇ~!本日は名前の為に歌います」
―この日、私は色んな意味で衝撃を受けた。いや…渉くんが歌が上手なのは何となく分かっていたけれど。fineのライブに集まった一般のお客さんの中に彼の名前の書いてあるうちわを持った人が大勢居るのを目の当たりにして、胸に張り裂けそうな痛みが込み上げてきた。どうしてだろう…素直に喜んであげられない。
『♪もしも君が泣いていたらその涙拭ってあげよう』
いつも彼の変わり者な部分しか見てこなかったせいか、ステージ上でパフォーマンスしている彼が眩しく見えて仕方がなかった。改めて、彼はアイドルなんだと思い知らされたような気がした。
『♪愛しさで包みこんだなら』
渉くんとやけに目が合う。ていうか、私に向かって手を振ってくれている。周りでは彼のファンが「こっちに手振ってくれた」と喜んでいる。…だからこそ、私は若干の優越感に満たされたのだろう。こんなに大勢の中でも、彼は私を見つけてくれた。
◆◆◆
「渉くん、お疲れ様。凄かったよ」
「アメージング!楽しんで頂けたのなら、何よりです」
「でもね、なんだか渉くんを遠く感じたなぁ…」
「何を言っているのですか。私はこんなに身近な存在でしょう~」
私の一言を振り払うかのように、彼はその腕で私を抱きしめた。遠く感じたのは、実際の距離の問題ではなく心の距離なのだけど…彼に抱きしめられているその間、私は確かに幸せに満たされていた―
to be continued…