初恋は選べない
名前
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―「日々樹は五奇人の一人なんだよ」
同じクラスの鬼龍くんの言葉に思わず首を傾げた。そんな私の様子を察して更に説明をしてくれた。このクラスには変わり者の五奇人が勢揃いしているらしく、その中の一人が渉くんだとか。「このクラスには変わり者が多いんだ」と彼は顔を顰めた。
◆◆◆
―「あの変態仮面がご迷惑をおかけしたようですみません…」
五奇人の説明を受けてから完全に渉くんを見る目が変わってしまった。今の私はと言うと、その奇人渉くんに連れられて演劇部に訪れている。彼が紅茶の用意をしてくると言って席を外している間に一年生の男の子が私に謝罪をしてきた。それにしても、『変態仮面』なんて…後輩からの言われようが酷い。私は渉くんの幼馴染みで…と事情を説明しておいた。
「日々樹先輩が部活に女性を連れてくるなんて初めての事だったので、恋人なのかと…」
「名前が恋人とは、なんと素晴らしい事でしょう~!」
紅茶を煎れてくれる彼からとんでもない一言が…。私と恋仲だと間違えられて喜んでいるようで私は気恥ずかしさを誤魔化す為に紅茶を飲んだ。
「名前によく似合う花を出しましょう」
「私は薔薇が似合うような女じゃないよ」
マジックで出した薔薇を私の髪に飾って「よく似合いますよ」と笑みを向けられ、相手が変態仮面だろうと美人な事には変わりないので照れるのは仕方が無いだろう。
「名前さんが居るなら姫役をやって頂いたらどうですか?」
今度の劇の配役について話し合っていた演劇部の後輩からの唐突な提案が上がった。確かに男の子が姫役をやらされるのは本意ではないかもしれない。しかし、演劇部ではない私が参加するのもいかがなものか。
―「名前のお姫様姿が見られるとは、驚きに満ちていますねぇ~」
「渉くん!私は演劇部じゃないし、姫役は遠慮させて頂くよ」
あぁ…どうしてこの人はまともに言葉が通じないのだろう。「では、姫役は名前で決まりですね」と自己完結しないでほしい。後輩達に助けを求めようにも、「先輩が引き受けてくれないと、俺がドレスを着せられるので…」と逆に助けを求められてしまった。
「仕方無いなぁ。それで、王子役は誰がやる…「名前の相手役は私に決まってるでしょう~☆」
その、さも当たり前みたいな表情が腹立たしい。題目は『眠れる森の美女』だとか。妖精役は真白くん、魔女役は氷鷹くん…という事だが、私はあまり乗り気ではない。やるなら悪役の方が面白そうだと感じる。
「そもそも、部外者が加わっても大丈夫なの?」
「演劇部は部員が少ないので問題ありません」
楽しそうに即答しないでもらいたい。渉くんの周りに居るとどうしても巻き込まれるみたいです。
私の初恋の相手がこんなに変人なんて―
to be continued…