新婚はじめました
名前
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―「今年は何個チョコ貰ったの?」そう問いかける彼女の表情は苦悩を滲ませたような複雑なものだ。バレンタインデーの前日の夜、風呂上がりにソファーの上でミネラルウォーターを飲んている彼女がなんとなしに話題を持ち出した。
「2万3500個ほどかな。事務所に届いてるって、マネージャーが言ってたよ」
「すごい。去年より20個も多いじゃない」
「ごめん…。適当に言った」
数に関しては薫が適当に言ったものだったが、事務所には薫宛に沢山のチョコが届いているのは事実だった。UNDEADの薫がバレンタインに女性ファンからチョコを貰うのは毎年恒例の出来事だったが、妻となった今でも、名前は割り切れない思いで焼きもちを妬いていた。何回悋気してもきりが無いのはわかっているが、それは繊細な女心というもので。「そんなにいっぱい貰えるなら、私からのチョコなんていらないね」と告げる彼女の声は不機嫌に聞こえた。
「なんでそんなこと言うの?俺が一番欲しいのは名前ちゃんからの本命だよ」
「だから、そんな拗ねた顔しないでよ」と、ソファーの上で彼女を抱きすくめて愛しそうに首筋に唇を滑らせる薫。その甘い行為とは裏腹に、機嫌を損ねた彼女は中々笑顔を見せてくれない。どうしたものか、と視線を彷徨わせた彼はテーブル上の紙袋が目に入った。これはもしや、自分への贈り物なのかと思ったのだが、「名前ちゃん、この紙袋は?」と訊いた後に返ってきた答えは予想外の一言で。
「それは明日、流星隊と仕事する予定だから彼らに渡すチョコが入ってる」
「えー。俺以外の男に手作りチョコあげないでよ。名前ちゃんの浮気者~」
彼女を抱く腕を離そうとはせず、咎めるように彼女と視線を合わせる。「そんなこと言ったら、薫くんだって私以外の女性からチョコ貰ってるじゃない」と、なんだか嫉妬しているのが馬鹿らしくなってきた名前がへらりと笑みを浮かべた。「昔ね、薫くんにチョコ渡そうと思って待ってたのに、恥ずかしくてその場に居た朔間さんにあげちゃったことがあったの。覚えてないだろうけど…」
「ちょっと待って!そんなの初耳なんだけど。その時、名前ちゃんは朔間さんが好きなんだと思って勝手に傷ついてたんだけど…」
「ごめんごめん。いざ、薫くんの顔を見たら恥ずかしくなっちゃって渡せなかったの」
あの後、上機嫌な朔間さんに自慢されてすごく悔しかった。と語る薫はソファーの隅に彼女を追い詰めると、両手で彼女の頬を包み込む。やがて、その瑞々しく色づいた唇に自らの唇を重ねた。吐息さえ奪うような濃厚な口付けをされ、力が抜けたように胸にもたれかかってきた名前を抱きとめると、薫は降参したように柔らかく微笑んで「バレンタインはチョコじゃなくて名前ちゃんが欲しいな」と、本音をあらわにした。
「せっかくガトーショコラ作ったのに、それはいらないね」
「嘘。俺のぶんも作ってくれてたの?さすが、俺の名前ちゃん」
「薫くんて、意外とちょろいよね…」
To be continued…
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