新婚はじめました
名前
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―「はぁ…どうして薫くんと結婚したんだろう…」
洗面所で顔を洗っていた名前がタオルで顔を拭いた後にぽつりと呟く声が聞こえて、彼は足を止めた。高校時代からのアプローチが実り、結婚まで漕ぎつけたというのに今の台詞は不穏な響きでしかない。自分はこんなにも名前の事を大事にしているのに…と後ろから彼女を抱きしめると、びくりと反応した彼女は何かを言いたげに口をぱくぱくさせたが口を噤んだまま彼の腕を振りほどいた。
「浮気症な薫くんなんて嫌いだもん」
一方的に不機嫌を顕にした彼女は二人の寝室には戻らず、リビングのソファーの上でクッションを抱えて俯いている。事の発端は、昨日発売された週刊誌で。薫がある女性タレントと腕を組んで歩いている写真がパパラッチされていたのだ。世間には知られていないとはいえど、新婚なのに…と、その雑誌をごみ箱に放り捨てる程に彼女は傷ついていた。その後、帰宅した彼がそれを見つけ読んでみたが、真実とは異なる記事の内容に眉を顰めるのだった。その女性には自分から声をかけたわけではなく、向こうが薫のファンらしく、しつこく付き纏ってきて彼自身も困っていたのである。その事実を知らずに口をきいてくれなくなった妻の名前。「羽風先輩なんか嫌い」学生時代に名前から何度も言われた覚えがある。だが、夫婦となった今、彼女の口から聞かされる「嫌い」は心にぐさりと突き刺さる。
「俺は名前ちゃんに嫌われたら生きていけないよ」
―「疑ってるのかもしれないけど…」と、信じてもらえるのを信じて、彼は事情を明かしていく。あの女性とは何もない。こんなに可愛い奥さんが居るのに浮気なんて出来る筈がない。そんなキザったらしい甘い台詞でも、薫からすれば本音であり嘘偽りのないものだった。隣に寄り添う彼があやすように彼女の頭にぽんと手を置くと、漸く彼のほうを見据えた涙目の彼女と視線が重なった。
「嫌いなんて嘘だよ」
ヤキモチ焼いたからって酷い事言ってごめんなさい。とシュンとした様子で謝罪する名前に愛しさ溢れた彼は、横から彼女を包み込むように抱き寄せた。涙の滲んだ目元にキスをして、服の袖で涙を拭ってくれた彼にギュッと抱きついた彼女はいつもより素直な態度をみせる。
「ほんとは薫くんの事、大好きだよ」
「俺の奥さんがこんなに可愛い」
To be continued…