欲しいのは君
名前
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―「なにセンパイのくせにそんな美人連れて歩いてるノ?」
とある休日、名前と一緒にスーパーに買い物に来たつむぎは彼女に頼った事を早々に後悔していた。両親が数日家を留守にするという事で、自分よりも料理の得意な名前に相談したのだが。事情を訊いた彼女はつむぎの買い物を手伝うというより「新婚さんみたい」とはしゃいでいる。食材も、自分が調理する前提となっている為、手馴れた様子でカゴに入れていく。
「俺が一人で作るにしては難しくないですか?」
オムライスを作ろうと提案すればそんな返答が返ってくる。「もっと簡単に作れるメニュー教えてくださいよ」と懇願するも名前の気が変わる筈もない。あくまで平常心を装っているが、実は心底楽しんでいる。レジを済ませて買い物袋を持ったつむぎと並んで店から出ようとしたところで思わぬ人物と鉢合わせた。冒頭の台詞は彼と同じユニットの逆先夏目のものである。
「連れて歩いてるというか、付き添ってもらってるだけですからね」
「ねぇ、おねーさん。こんなセンパイのどこがいいノ?」
この子、喧嘩売ってんのかなぁ…と眉をピクピクさせている名前の隣で、夏目に誤解されていると感じたつむぎは「夏目くんの思ってるような関係じゃないですから」と説明している。「そのわりに距離が近いみたいだけド」と、夏目の目線の先にはつむぎと腕を組んでニコニコしている名前がいる。
―「名前のせいで完全に夏目くんに誤解されましたよ」
つむぎが咎めるようにキッチンに立っている名前を一瞥した。後々「センパイのくせに」と色々言われるであろう事を想像して頭を悩ませる彼とは引き換えに、彼女は上機嫌でオムライスを作っている。しかも、自前のエプロンを着用して新婚ごっこを楽しみながら。
「私とカップルに思われたのがそんなに嫌なの?」
二つのオムライスを作り終えた彼女は正面のテーブルに居るつむぎと視線を交わした。「私は、つむぎの彼女だと思われて嬉しかったんだけどな…」と自分に笑顔を向ける彼女に、彼は言葉に詰まってしまう。俺みたいなやつの恋人だと思われるのなんて屈辱的に決まっている。と、罪悪感に苛まれているつむぎには予想外の名前の台詞に返す言葉が見つからない。
「嫌なわけじゃないです。ただ、名前と俺とじゃ、まるで月とすっぽんですし…申し訳ないと感じたんです」
「嫌じゃなかったならそれでいいの」
そう言って微笑む彼女がつむぎの前に置いたオムライスにはケチャップで大きなハートマークが描かれていた。敢えてそれには何も触れずに、名前が席についたのを確認してから食べ始める。まるでレストランで出されているもののように美味しい。「すごく美味しいですよ」と笑みを向けるつむぎに、彼女は何かを誤魔化すように笑った。
「ハートじゃなくて、萌え萌えオムライスにすればよかったな」
「なんですかソレ」
To be continued…