欲しいのは君
名前
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―つむぎとの進展は無いにしても、平和だった名前の日常を脅かす存在がアイドル科に居る事が発覚してから彼女は焦燥が治まらない。男子校のようなアイドル科に一人だけ女子生徒が居るなんて、逆ハー狙いの狡猾な女に違いない。と、会った事もない転校生にメラメラと対抗意識を燃やしている。
「つむぎがその女に誑かされたらどうしよう…」
「それは考えすぎなんじゃない?そんなに有名じゃないユニットの人なんでしょ?」
深刻そうに相談してくる名前に対してクラスメイトの佳乃は苦笑しながら宥めるように説得している。実際、佳乃はアンデッドのファンなので、名前に共感出来るくらい転校生の存在は疎ましいと感じている。
「名前の好きな人ってどんな人なの?」
「んー。なんか、ほっとけないっていうか私が世話焼きたくなるようなタイプなんだよね」
そんな彼の童貞を狙っているとは明かさないものの、名前がつむぎを好いている訳はこんな理由だった。「ダメンズ好きなのか」と佳乃は心配になった。しかし名前は笑顔でつむぎとのエピソードを語っている。その様子に何も言及出来ず、彼女はチャイムの音と共に自分の席に戻っていった。
―「つむぎの浮気者ーっ!」
アイドル科の門の向こうから歩いてくるつむぎを見つけて「一緒に帰ろう」と声をかけるつもりが、彼の隣にはあの憎き転校生が居る。それを目にした名前は感情に任せてこんな台詞を残してその場を走り去ってしまった。それに気付き、全速力で名前の後を追いかけるつむぎは彼女の姿を見つけ名を呼ぶ。走りを緩め後ろに迫るつむぎをチラチラと気にしつつも、決して足を止めてくれない。思い切って、彼女の腕を掴んで引き止めると酷く傷ついたような表情を滲ませた名前と視線が重なった。
「何か誤解してますよね」
転校生にはユニットのレッスンを見てもらっていて、偶然そこまで一緒だっただけなんですよ。と弁明するも名前は納得しないまま「私よりもあの娘のほうが可愛いもんね」と不貞腐れてムッとしたままつむぎの隣を歩いている。彼女自身、本当はこんな可愛げの無い事言いたくないと感じているが、なんせ腹の虫が収まらないのだ。
「俺は、名前のほうが可愛いと思いますよ」
だって、それって焼きもちでしょう?と愉快そうに顔を綻ばせたつむぎは仏頂面の彼女の頬を指先でチョンとつつく。少しずつ憤りが薄れてきた名前は照れたようにくすりと笑いながら彼を見据えた。夕焼けに照らされた彼の表情は慈しみを帯びた優しいものだった。
「ごめんね、つむぎ。勝手に傷ついて不機嫌になったりしてさ」
こんな私じゃ呆れられても仕方ないね。と自宅に入って行こうとする名前にどうしたらいいのか分からず、気が付けばその手で後ろから彼女を抱きしめていた。突然の抱擁に言葉も出ない名前の耳元で、つむぎは自らの本心を少しずつ伝えていく。
「呆れてなんていません。それに、俺なんかに焼きもち妬いてくれて嬉しかったんですよ」
名前のそういうところ、すごく可愛いです。と告げられ腕を離されても尚、現実味が湧いてこない。つむぎに手を振ってから帰宅し、自室のベッドに倒れるように寝転がった。先程のつむぎの台詞を思い返すと怒っていたのが嘘のように高揚感が胸を満たしていく。
「可愛いって言われたくらいで単純だなぁ…」
To be continued…