欲しいのは君
名前
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―「つーむーぎっ」
朝の通学路にて、後ろから走ってきた少女が「おはよう」と挨拶をしながら青葉つむぎの左腕をがしっとホールドした。それに驚いた彼は抗議の声を上げつつ隣に居る彼女を一瞥する。名前と初めて出会ったのは中学三年生の頃だ。引っ越してきたつむぎに偶然家が近所だった彼女が話しかけてきたのである。「仲良くしてくださいね」と挨拶を交わした翌日から、何故か彼女はつむぎに必要以上に構うようになっていた。突然引っ越してきた俺に親切にしてくれて、いい娘だなぁ…と感じていたが、スキンシップが過剰すぎて最近ではどう反応したらいいか困るというのが彼の本音だった。
「名前。歩きづらいから、離してくださいよ」
「つむぎってば、照れちゃって可愛いねぇ」
まるで悪戯っ子のように笑った彼女は渋々といった様子で彼の腕を離して隣を歩いた。当時から、つむぎは自己卑下が激しく更に鈍感だ。つむぎがアイドル育成校の夢ノ咲学院に入ってからというもの、名前は悋気にも似た靄々とした感情を鬱積させていた。自分の知らないところでファンから言い寄られているのではないかと被害妄想が沸き起こってしまうのだ。
「付き合ってもいない男とこんなにベタベタして、どういうつもりですか」
若い子の考えてる事よく分からない!といつも思っているつむぎだが、同学年の名前が考えている事も理解出来ずにいた。異性にモテるであろう彼女が何故、俺なんかと懇意にしてくれるのだろうか。名前の心情を知る由もないつむぎにとっては不思議で堪らなかった。
「つむぎってほんと鈍感…」
普通科の門の前でつむぎと別れた彼女は誰に聞かれるわけでもなく小さな不満を独りごちた。夢ノ咲の普通科に通っているけれど、アイドル科に居るつむぎとは登下校時以外は一切関われない。こればかりはどうしようもない事だが、名前は歯痒い思いを持て余していた。
To be continued…
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