砂の薔薇
名前
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―例えば、中学時代あのドラマが流行ったね。だとか、幼稚園の頃やってた朝のアニメの話だとか。歳が同じならば共通する話題で盛り上がる事もあるだろうに、七種茨という男はこういった話題にノってくれたことは一度だってない。クラスメイトと談笑する自分と違い、彼はそういう時に寂しげな、遠くを見つめるような眼差しをしているのに名前は気付いていた。ふいに目が合えば、ふいっと逸らされてしまう。Edenのプロデューサーとして、彼らのことを一番理解しているのは自分だと、胸を張って言えるか。と、自問自答しては満足のいかない答えしか出ないのだ。そういえば、彼の第一印象も決していいとは言えなかった。
―「なんとお美しい!プロデューサーとして有能な方だとは伺っておりましたが…こんなにも見た目麗しいとは。後光が差して見えます!」
― 「やめてください。大袈裟すぎます」
初対面では、彼のマシンガントークと褒め殺しに困惑したものだ。しかも、こんなに褒められているのに全然嬉しくない。七種茨の褒め殺しを全く真に受けることなく、受け流すのは名前くらいなものだろう。なんせ顔がいいので、彼の褒め言葉を真に受ける女子は多い。いつも通り、「はいはい」と受け流して席に座る。髪型を変えて、一番最初に気付いてくれたのは、クラスメイトの茨で。「髪型を変えられたのですね。よくお似合いであります!」と。彼は当初のようなくどくどとした褒め殺しをしなくなった。あまりにも名前が素っ気なく受け流すものだから、そうなるのも仕方ないのかもしれない。しかし、同じ褒め言葉でも、相手が違えば彼女の態度も違っていた。「今日の名前。お姫様みたいで可愛い」と彼女の巻き髪を指にクルクルと巻き付け弄りながら凪砂が褒めてくれる。
「閣下に褒められた時と、俺が褒めた時とじゃ態度が違いすぎませんか?」
「茨の褒め殺しは心籠ってないからね。素直に喜べないよ」
場所はEden専用ルーム。茨はEveの面々から集中攻撃にあっていた。「毒蛇嫌われてるね!」と日和が。更に「茨の奴、あんずさんにも女神だとか美しいとか褒めてましたしね。名前が不信感持ってるのも仕方ないんじゃないっすか」とジュンが。敵のプロデューサーにも媚びへつらっていたのは聞いていて苦々しい気分にしかならなかった。「ていうか、私は綺麗でも可愛くもないから、褒めるとこなんかないと思うんだよね」と、彼女のネガティブ発言は茨の心に火をつけるものにしかならなかった。「名前程のレベルになると、ご自分の美しさに気付いておられないのですね!」と相変わらず褒め殺しは止まらない。ついでに言えば、休憩中なのに休憩になっていない。「ほら。水分補給して」と冷えたペットボトルを茨の火照った頬にピトッとくっつけて彼女は微笑む。距離の近さと不意打ちの笑顔に面食らった茨は頬を赤らめて名前からペットボトルを受け取った。「閣下の仰った通り、名前はお姫様みたいで綺麗ですよ」と色気のある表情で茨は告げる。真剣味を帯びたそれは、いつもの胡散臭い褒め殺しとは印象が違い、名前は返答に詰まってしまった。
「名前、照れてますね?」
「照れてない!」
……To be continued
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