七種茨短編
冬企画
名前
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
―めっきり寒くなった冬のある日、同棲している凪砂が名前の為にプレゼントを買ってきてくれたのである。肌触りの良いブランケットのような素材のそれは、部屋着として着るものだった。「早く着てみて」とわくわくした表情の凪砂に促され、それを着用してみれば、彼の手によってフードを被せられた。満足げに微笑む彼とは対照的に、今の自分の格好がどうなっているのか知りたかった彼女は洗面所にある鏡の前に急いだ。目にすると同時に、こんな可愛いもの自分には似合わないのでは?と思わされた。モコモコとしたパーカーのフードにはうさぎの耳が付いていた。「こんなの私には似合わないんじゃない?」と言う途中で言葉が途切れた。その原因は、部屋に戻ると唐突に抱きしめられたせいで。
「名前可愛い。よく似合ってる」
「ありがとう。凪砂くん」
「私の恋人がこんなに可愛い」とデレデレの様子の凪砂は、名前を腕に抱きながら頭を撫でてくれる。なんて幸せなんだろうと笑顔が浮かぶ彼女は、この後凪砂に翻弄される事になるとは知る由もなく。入浴後に先程の部屋着に着替えてベッド上でウトウトして眠りに落ちようとしている時だった。部屋に入ってきた彼に抱きつかれ、そのまま組み敷かれた。困惑して瞳を揺らす彼女は問いかける。「夜這いでもしにきたの?」と。純粋な眼差しを見るからに、そんな目的ではないのだろう。案の定「夜這い?」と分かっていない様子だ。まるでペットとじゃれ合うかのようにモコモコとした彼女のパジャマを触り、フードを外した彼は彼女の頬を包み込んで唇を重ねた。寝ようと思っていたのに、完全に凪砂のペースに呑まれてしまった彼女は眠気も吹っ飛び、その濃厚な口付けに応えるしかなかった。服を脱がされるわけでもなく、ただすりすりと甘えてくる彼の頭を名前が優しく撫でた。
「凪砂くんは、こんなに甘えん坊だったかな?」
「私が甘えるのは名前にだけ。それに、あったかくて離したくないんだ」
湯たんぽ代わりにして眠りにつこうと思っていたのだろうが、彼女は既にその気にさせられてしまった為、自ら服を脱ぎ捨ててしまう。部屋には暖房が付いているので寒くない。「名前…脱いじゃっていいの?」と逆に凪砂が心配してくれたが、「凪砂くんは、私とイイコトしたくない?」と問われ絆された彼も服を脱いだ。互いに、下着姿のまま抱き合う。重なったところから直に体温が伝わってきて心地良い。だが、まだ隔てるものがあると彼女が誘う。「凪砂くんが外して」と。彼の手でホックが外されて肌が外気に晒され、彼女は身を震わせた。しかし、すかさず凪砂が温めてくれる。こんなに幸せでいいのだろうか。と感じる時もある。敏感な場所を彼の指が掠め、ぴくりと反応を示した名前に、凪砂は何度も唇を重ね、滑らかな肌に触れた。温かい凪砂の腕に抱かれたまま、彼女は朝まで寒さを感じることはなかった。
END